愛されベータ

マロン

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「で?月に一度バースセンターへ定期検査に行くの?」

「うん。月末の最終土曜日に行くことになったよ。学校も休みだし。」

「じゃあその日は僕と会えないじゃん!送迎するよ!」

「えっ!何言ってるの?汐李は土曜日も忙しいじゃん!僕に時間使ってる場合じゃないでしょ?」

 そう、汐李は中学入学と同時に小鳥遊グループの会社の一つで経営を半分任されるようになった。

 まだ社長の父親とその第一秘書がとなりにいてフォローがあるとはいえ、並み居る百戦錬磨の大人たちと渡り合うのは大変だろう。

 だがそれを乗り越えて何千人といる社員たちを従える経営者に育っていくのは大企業の御曹司として生まれたからには当然のことなのだいう。

 そして将来的に跡を継ぎ家格に釣り合う優秀なアルファを養子に迎え跡取りを産むことも決められている。

 そこに本人の意思はないけれど、上流階級の世界では当たり前のことみたい。

 だから学校が休みの日は会社経営や人脈作りに奔走し、次々と舞い込むアルファとのお見合いをしている。

 汐李本人はお見合いに全く興味が無く、いつも行くだけ行って義理だけ果たして帰ってくる。

 汐李はものすごく綺麗なうえに可愛くて、優秀でそして何よりも優しくて完璧だからお見合い相手のアルファからはいつも是非交際を!って言われるんだけどいつも断っちゃうんだ。

 そしてそのことに僕はこっそりとホッとしてしまっていることに最近気付いてしまった。

 前までそれは幼馴染みが離れていくのが寂しいからだと思っていたけど、それも少し違うとわかりかけている。

 僕はこの気持ちは絶対に表には出さないと決めている。汐李のそばにいるために。
 
 学校が終わり小鳥遊家へ帰ると奥さまに呼ばれた。

 一人で部屋を訪ねると部屋には小鳥遊夫妻がいた。

 汐李がお見合いに全く興味を示さない状況に困ってしまっているので僕からもう少しお見合いに積極的になるように説得して欲しいって言われた。

 アルファとオメガの番である小鳥遊夫妻は良い相手と番うことこそアルファとオメガの幸せと信じている。

 そしておそらく僕の気持ちに気付いている。隠しているつもりだったのに夫妻には丸わかりだったようだ。

 だからこれは僕への牽制だ。

 小鳥遊夫妻の言うことは絶対だから逆らうことは許されない。

 そして上位オメガの汐李には素敵な上位アルファと番って幸せになって欲しいと夫妻から言われてしまうとその通りだな…と思ってしまうのだ。

「わかりました。折を見てそれとなく促してみます。」とどうにか答えて部屋を出た。
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