愛されベータ

マロン

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「朔!おはよう!昨日のバースセンターは何だったの?大丈夫なの?心配で迎えに来ちゃった!」

 朝仕事に行くお母さんと一緒に家を出たらマンションの真ん前に黒い高級車が止まってて中から汐李が顔を出して聞いて来た。

 毎日の通学は汐李と一緒に車に乗せてもらっているんだよね。

 中学に上がる時に家族で話し合って僕は電車で通学しようと決めたことがあった。
 だって僕は小鳥遊家の家政婦の息子だからね。

 小鳥遊家の御曹司の汐李とは立場が違いすぎるから、そこは弁えるべきなんじゃないかって。

 そうしたら汐李がものすごく怒ったんだ。

 僕の腕を掴んで壁と挟んで、いわゆる壁ドンてやつをして
「朔は僕から離れたいの?許さないよ、朔は僕の側にずっといるんだ。わかるよね?」
 と仄暗い表情で見つめてきた。

 汐李は色が白くて髪も瞳も金色に近い茶色をしてものすごく可愛いくて綺麗な顔だからまさかこんな表情するとは…とびっくりして思わずぶるりと震えながらコクコクと頷いたんだ。

 さすが上位クラスのオメガだよ。ベータにはさからえないや。

 汐李は満足げに頷いて僕をギュッと抱きしめた。
「朔は僕のそばにずっといるんだよ。ずっとね。」とにっこりした。

 汐李がなんで僕とそんなに一緒にいたがるのかその時はよくわからないままだったけど、両性ベータと判明した今汐李は僕の匂いが好きなんだなってことも判明した。よくよく思い出してみると汐李はいつも僕の首に鼻先をくっつけたがった。

 そう思った時胸の奥がツキッとした気がしたんだけどよくわからなくて気にするのをやめたんだ。

 そんな気持ちを押し込めて車に僕も乗り込んで学校へ向かった。

 僕は車中でバースセンターで聞いた話をした。
「両性ベータなんて初めて聞いたよ。どうりで朔から良い匂いがするんだなー。」
 と僕の首に顔を押しつけてスンスンと匂いを嗅んだ。

 汐李が僕の首の匂いを嗅ぐ時いつもくすぐったくてヒャッて声が出てしまう。
「その声よそで出したらダメだからね!」
 って言うけどさ、こんなことするの汐李だけだからね!

「僕がいつもそばにいるんだから何かあっても朔のことは僕が守るよ!」

 世間ではオメガってか弱いイメージがあるけど汐李は上位オメガと言ってフェロモンを自在に扱えてすごく強いんだ。

 中位クラスのアルファならなんともないし上位アルファとも対等に渡り合えるらしい。

 上位オメガの汐李はフェロモンを出したり止めたり量を増やしたり減らしたり自在に扱えてアルファからのフェロモンを浴びても動じないようにできるんだって。

 普通のオメガは突然発情しそうになっても抑えられるように最低限のフェロモンコントロールしかできないらしい。

 虐げられてきた昔と違って、今は性能が良くなった抑制剤と発情のコントロール法が確立されてオメガは差別されることもほとんどなく普通に日常を送っている。

 上位オメガでもフェロモンコントロールはかなり厳しい訓練が必要らしくて訓練を始めたばかりの頃の汐李はものすごく辛そうだった。

 そんなことを思い出しながら僕を守るって言ってくれる汐李にドキドキして同時に汐李は上位オメガだからそのうち誰もが憧れる上位アルファと番になって可愛い子どもたちを産んで素敵な家庭を築くんだろうな…と少し寂しい気持ちにもなった。
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