愛されベータ

マロン

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「朔ー今日も可愛いねー、本当に食べちゃいたいくらい!こんな可愛い子とこれから離れないといけないなんて!」

 僕はもうすぐ3歳になる。

 普通の家庭らしく幼稚園に入園するのだ。

 どこの家庭も大体はこの年齢の子どもたちは幼稚園なり保育園なりに通う子が多いだろう。
 ただし僕が通う幼稚園がちょっと普通ではなかった…。
 
 遡ることひと月前のこと。

 母と僕は小鳥遊様のお屋敷に来ていた。
 母が小鳥遊様のお屋敷で使用人として働くことになり、その為の打ち合わせに来たのだ。

 小鳥遊様の奥さまは僕の母と歳が近く子どもは僕と同じ歳らしい。

 小鳥遊様夫妻はアルファ男性とオメガ女性の夫婦で子どもはオメガの男の子なんだって。

「朔くん、よく来てくれたわね!この子うちの子なの。名前は汐李《しおい》よろしくね!」

汐李くんは僕より一回り小さくてフワフワな茶色の髪に真っ白な肌で僕はまるで天使みたいだなーって思ったんだ。

「汐李くんよろしくね?」って言って手を差し出したらほっぺを真っ赤にして「しおいって呼んで」と僕の手をギュッて握ってくれたんだ。

それから汐李は僕の手を握ったまま離さず、ずっと僕にピッタリとくっついたまま。

「あらあら汐李は随分朔くんのことが気に入ったのね。」

 小鳥遊夫人はニコニコと僕たちを見ていたんだ。

「朔はベータなので汐李様に影響はないと思いますが…」
 僕の母がおずおずと言うと

「大丈夫よ。心配はしていませんよ。人見知りする汐李がこんなにすぐ懐くんですもの。」
 そう言った後小鳥遊夫人は僕を見つめてから言った。

「朔くんはお母さんと雰囲気がよく似ているわね。ところで朔くんの通う幼稚園は決まっているのかしら?」

「はい、地元の公立幼稚園に入園が決まっています。」

 すると汐李が突然僕に抱きついて
「さくといっしょのよーちえんいく!いっしょじゃなきゃよーちえんいかない!」
 って泣き出した。

 突然のことに僕も母もびっくりしてオロオロしてしまった。

 夫人は驚きながらも少し考えてからこう言った。
「汐李と同じ幼稚園へ通って一緒にこちらへ帰って来たら良いわよ。そうしたらあなたもうちの仕事を気兼ねなくしてもらえるもの。ね?どうかしら?」

 でも小鳥遊家のご子息が通う幼稚園は大学までのセレブの通う私立一貫校でとても一般家庭の我が家が通える幼稚園じゃないんだ。

 母はびっくりして「いえいえ無理です!そんな立派な幼稚園とても通わせられません!」
 と固辞したんだけど夫人はにこにこしながら言った。

「大丈夫よ。朔くんを汐李と一緒に幼稚園へ通ってもらうのはあなたに我が家の使用人としてしっかり働いてもらうための報酬の一つよ。アルファやオメガの子たちとも小さいうちから慣れておくことは悪いことではないし。」

 そんなわけで僕は公立の幼稚園ではなく、小鳥遊家のご子息である汐李とともにセレブ幼稚園へ通うことになった。
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