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4th

INTRO―ムシコワイ―

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洞窟に入って5分。
既に帰りたくなっていた。

「いやーもうほんと無理っ」
「うるさい奴だ。男だろ」
「勇者様、虫とか苦手ですか?」
「シナは大丈夫なの?」
「まあ、一応魔物ですからね」
「いや、それはそうなんだけどさ、洞窟に出る魔物、百歩譲っても気持ち悪くないか」

最初はよかった。
毛虫みたいな小さい魔物がよく出て、それも少し鳥肌がたったけど、ゴツゴツした体で虫っぽさはさほどなかったし。
それがどうだ。
ちょっと先に進んでみたら、その体に足そんなにいるか?っていうムカデみたいなやつ。
成分を疑うとにかくヌメヌメヌルヌルしたスライムみたいなやつ。
目がなく口がやたらデカい深海にいる「へんないきもの」で特集されそうなのそのまんまなやつ。

出てくるやつがどうも気持ちのいいものではない。
それにムカデみたいなのやゴ〇ブリみたいなやつが比較的多めに出やがる。
どうみてもどう考えても気持ち悪い。どう考えても足いっぱいとか信じられない。マジありえないんですけどー。

「オオカデもフォグを使うのか。おい、あいつをやっつけろ。おい!」
オオカデ、大きいムカデだから?まんまじゃん。魔物じゃなくてやっぱムカデじゃん。気持ち悪いじゃん。
「あああああ!何をしている。あいつが吐く液にかかったら、半年はかゆみが収まらないぞ!」
「毒とかじゃなくてかゆみなの!?」
なんなのそれ!?もうそういうところも気持ち悪い。俺苦手。ここ苦手だわー。
「ちょっと、俺がどこにいるか指示するから、ノアがちょっと」
「フォグが見えるのはお前だけだ。勇者のくせに怖がるな」
「いやそれとこれとは絶対別。勇者だからムカデ平気とかそんなのない。別問題だから」
「…お前は口ばっかり動いて全く働かないやつだな」
「だってこんな気持ち悪いのいるとか聞いてないもん」
「ほら小石だ。詰めて撃てばいいだろ」「……ああ!」
そうだ。近づかなくても撃てばいいんだ。ああ、俺の武器便利!俺最高!

「あ、ノアちゃん、階段があるね」
「ああ、階段があるな」
「なになに?階段がどうかしたの?」
「…ほら、そこにまたムカデみたいな茶色の虫が」「きゃあああああああ!」
「勇者様、『きゃあ』って」
シナが笑う。
「石!石ないか!石じゃなくてもなんでもいいからなんかないか!?」
ここは気持ち悪い生物が多すぎる。

「……。
シナ、とりあえず先へ進もう。誰かが手を加えて道を作っているのなら進めばいずれ出会えるはずだ」
「そうだね。勇者様行きますよ」
「なんかさ、虫とかよける魔法ないの?あるいは気持ち悪い生物を見つけない魔法」
「ないですね」
シナが苦笑する。
「さっさと歩けまぬけ!」
「ぎゃああああっ」

虫に怯えている最中不意にノアに思いっきり尻を蹴られ、洞窟内に俺の悲鳴が響いた。

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