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3.5-マボロシ×マボロシ-
Alice?-NS-
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-ええええええええええええええええ
白い霧に包まれた森の中。
遠くで聞こえた間抜けなその声が、森全体に響き渡ったのがわかった。
「ノアちゃん、今の」
「ああ。同じ洞窟内にいるのだから、実際はすぐそばにいるんだろう。
…それにしても、見事だ」
「うん。こんなに完全に幻に引きずり込まれちゃうなんて。
魔法だけじゃここまでいかないから、やっぱり町長さんかなあ」
「遠くにいても声であいつの間抜けさがよくわかる」
「そっち!?」
ふいに風が吹く。
風の先に、何か気配があった。
「シナ」
「うん、何かいる」
剣を構える。
白い霧の中に、黒い影。
近づくにつれて、徐々に黒が濃くなり、やがて色が見え始める。
「…ノアちゃん」
シナが呟くように言った。
その姿は、記憶の中にある姿形そのままだった。
「…-父上」
「ノアちゃん、全部『幻』だからね」
「…わかってる」
「久しぶりだな、ノア」
…―声まで似せるか。
長髪を後ろで束ね、銀色に輝く鎧に、太く真っすぐな剣。
ずっと見てきた姿。
最後に見た姿。
「お父さん」
笑う。
「ノアちゃんっ」
「一緒に行こう。素晴らしい場所があるんだ。
もう戦わなくてすむ。私が連れていってやろう」
「ゲートをくぐらずに行ける世界?」
「そうだ。今すぐにでも…
イケル」
瞬間、剣と剣がぶつかった。
互いに至近距離でにらみ合う。
「戦わなくていい世界に行く前に、あなたと戦う必要があるみたいね」
「よく防いだ。それでこそわが娘」
ああ。お父さんだ。目の前のすべてが、お父さんそのものだ。
「ノアちゃんっ!」
「やあ、誰かと思えば、『アラテーア・シナ』じゃないか。元気にしていたかい?」
「……ケイルさんの真似するのはやめてっ」
「何を言っている、私がケイルだ」
「…違うっ」
両手を前に突き出し、シナが氷の刃を降らす。
剣と剣をはじき返し氷の刃を避けるように距離を取る。
「見ないうちに魔法も随分上達したな。唱えなくてもイメージで魔法を放てるとは。
私はどうも魔法が苦手でね。まだ唱えて言葉に力を乗せないと、最大限の魔法を放てないんだよ」
笑う。見たことのある、あの笑顔。
「君も一緒に来るといい。なあに、痛いのは一瞬だけだ」「……っ」
「『混沌 散弾 長雨』」
途端に空が一瞬暗くなると、黒い先端の尖ったつららのようなものが降ってくる。
「バリアッ!」
-バキンッ
大きな音を立てて、黒いつららがシナの張ったバリアに当たると、すぐにバリアに大きなヒビが入る。
「逃げろシナッ」
「バリアッ!バリアッ!バリアッ!バリアッ!」
壊れては張りなおし、壊れては張りなおしを繰り返しながら逃げる。
「きゃあっ」
盛り上がった木の根っこに躓いて転ぶ。途端にバリアも割れる。
「やめろ!」
剣に手を置く。「雷電」
雷が走る。そのまま一気斬りかかる。
剣がぶつかり、パリパリと電流が走っているのが見える。
「『地雷 支配 疾走』」
瞬間、ドドンと大きな音がなり、木の根が動き出し突き出してくる。
剣を振り、突き出す木々の根を斬りながら避ける。
「『疾走 雷電』」
剣を地面に突き刺す。
大量の電流が地面を伝わり、木々の根を焦がし跡形もなく消していく。
「成長したな、ノア。私はうれしい」
また、剣と剣がぶつかる。何度も何度も。
やはり父上のほうが力が強い。押されながら何度も剣をぶつけ合う。
----
どうしよう。援護しなきゃ。
根っこが邪魔してうまく走れない。ケイルさんはノアちゃんに集中しているように見えるけど、私のこともちゃんと把握している。わかる。
ここからむやみに魔法を放ってもはじかれてしまう。
ーヒーク
体を浮かす。ケイルさんの後ろに回るのが一番だ。
ただ走っているだけじゃすんなり背後には回れない。
「ヒーク」
さらに飛行魔法を上乗せする。高く飛ぶ。なるべく目線に入る位置からは離れないといけない。
きっと背後に回っても、ケイルさんなら…、と考えてしまうけど
今はとにかく動くしかない。やれることを全部やるしかー……あれ?
高く飛び、ノアちゃんたちの周りをある程度見渡せる位置に来たときだった。
ケイルさんとノアちゃんの戦うそのそばに、何か動くものが見えた
生き物の気配はなかったはず。
ましてやここは幻覚。動物が住んでいるわけがない。だけど、あれは。
「ウサギ?」
白い霧に包まれた森の中。
遠くで聞こえた間抜けなその声が、森全体に響き渡ったのがわかった。
「ノアちゃん、今の」
「ああ。同じ洞窟内にいるのだから、実際はすぐそばにいるんだろう。
…それにしても、見事だ」
「うん。こんなに完全に幻に引きずり込まれちゃうなんて。
魔法だけじゃここまでいかないから、やっぱり町長さんかなあ」
「遠くにいても声であいつの間抜けさがよくわかる」
「そっち!?」
ふいに風が吹く。
風の先に、何か気配があった。
「シナ」
「うん、何かいる」
剣を構える。
白い霧の中に、黒い影。
近づくにつれて、徐々に黒が濃くなり、やがて色が見え始める。
「…ノアちゃん」
シナが呟くように言った。
その姿は、記憶の中にある姿形そのままだった。
「…-父上」
「ノアちゃん、全部『幻』だからね」
「…わかってる」
「久しぶりだな、ノア」
…―声まで似せるか。
長髪を後ろで束ね、銀色に輝く鎧に、太く真っすぐな剣。
ずっと見てきた姿。
最後に見た姿。
「お父さん」
笑う。
「ノアちゃんっ」
「一緒に行こう。素晴らしい場所があるんだ。
もう戦わなくてすむ。私が連れていってやろう」
「ゲートをくぐらずに行ける世界?」
「そうだ。今すぐにでも…
イケル」
瞬間、剣と剣がぶつかった。
互いに至近距離でにらみ合う。
「戦わなくていい世界に行く前に、あなたと戦う必要があるみたいね」
「よく防いだ。それでこそわが娘」
ああ。お父さんだ。目の前のすべてが、お父さんそのものだ。
「ノアちゃんっ!」
「やあ、誰かと思えば、『アラテーア・シナ』じゃないか。元気にしていたかい?」
「……ケイルさんの真似するのはやめてっ」
「何を言っている、私がケイルだ」
「…違うっ」
両手を前に突き出し、シナが氷の刃を降らす。
剣と剣をはじき返し氷の刃を避けるように距離を取る。
「見ないうちに魔法も随分上達したな。唱えなくてもイメージで魔法を放てるとは。
私はどうも魔法が苦手でね。まだ唱えて言葉に力を乗せないと、最大限の魔法を放てないんだよ」
笑う。見たことのある、あの笑顔。
「君も一緒に来るといい。なあに、痛いのは一瞬だけだ」「……っ」
「『混沌 散弾 長雨』」
途端に空が一瞬暗くなると、黒い先端の尖ったつららのようなものが降ってくる。
「バリアッ!」
-バキンッ
大きな音を立てて、黒いつららがシナの張ったバリアに当たると、すぐにバリアに大きなヒビが入る。
「逃げろシナッ」
「バリアッ!バリアッ!バリアッ!バリアッ!」
壊れては張りなおし、壊れては張りなおしを繰り返しながら逃げる。
「きゃあっ」
盛り上がった木の根っこに躓いて転ぶ。途端にバリアも割れる。
「やめろ!」
剣に手を置く。「雷電」
雷が走る。そのまま一気斬りかかる。
剣がぶつかり、パリパリと電流が走っているのが見える。
「『地雷 支配 疾走』」
瞬間、ドドンと大きな音がなり、木の根が動き出し突き出してくる。
剣を振り、突き出す木々の根を斬りながら避ける。
「『疾走 雷電』」
剣を地面に突き刺す。
大量の電流が地面を伝わり、木々の根を焦がし跡形もなく消していく。
「成長したな、ノア。私はうれしい」
また、剣と剣がぶつかる。何度も何度も。
やはり父上のほうが力が強い。押されながら何度も剣をぶつけ合う。
----
どうしよう。援護しなきゃ。
根っこが邪魔してうまく走れない。ケイルさんはノアちゃんに集中しているように見えるけど、私のこともちゃんと把握している。わかる。
ここからむやみに魔法を放ってもはじかれてしまう。
ーヒーク
体を浮かす。ケイルさんの後ろに回るのが一番だ。
ただ走っているだけじゃすんなり背後には回れない。
「ヒーク」
さらに飛行魔法を上乗せする。高く飛ぶ。なるべく目線に入る位置からは離れないといけない。
きっと背後に回っても、ケイルさんなら…、と考えてしまうけど
今はとにかく動くしかない。やれることを全部やるしかー……あれ?
高く飛び、ノアちゃんたちの周りをある程度見渡せる位置に来たときだった。
ケイルさんとノアちゃんの戦うそのそばに、何か動くものが見えた
生き物の気配はなかったはず。
ましてやここは幻覚。動物が住んでいるわけがない。だけど、あれは。
「ウサギ?」
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