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3rd
マボロシ
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森にいた。深い森だ。
足元は枯れ葉や枝が蓄積しているせいなのか、ところどころフカフカしている。あちこちに木の根が張り巡らされて歩きづらい。
木々の隙間から差し込む光り。真っ白だ。
確かに森にいるのだ。
いや、洞窟にいた。いたんだ。
だけど…なんでだ?
ー…怪しい洞窟があると言われ、洞窟を目指した。
「お腹空いた!!」
「お前は黙って案内できないのか」
「あーちゃんも腹減った言うてるもん!ね!ね!ね!」
セトが迫ってくる。
無理矢理案内係させられて機嫌が悪いらしい。
ただ…「ああ、腹減ったな」
「ほらああっ!!」
「いちいち大声を出すな。子供か」
「うふふ。ねぇノアちゃん、私もおなか空いちゃった。少し休んでから行かない?何気に長旅だったし」
シナが言った。
「ほぉらあああぁ!なーシナっちもおなか空いたやんなあ……オウフッ…!!」
案の定迫りすぎてまたシナに顔面パンチくらってるし…。
「勇者様のおなかもお空きに?」
「うん」
「あら大変!待っていてください。今すぐそこらの家から片っ端に食料を」
「あーだめだめだめ。大丈夫だから。泥棒はだめだって」
「勇者様が空腹だというのに!?勇者様以外の人間なんて食料がなくなったってどうでも」
「いやよくないからっ」
シェリーナすぐ暴走すんな…。
「あああああ様!あああああ様!」
「……」
「あああああ様!ああ、会えてよかった…………あああああ様?」
「…………あ俺か」
あーちゃんと呼ばれるのにうっかり慣れてしまって、相変わらずこの世界用の名前に全くなじんでいない。なじむつもりもないんだけど。
振り返ればおじさんが一人。
「あ、町長さん!」
シナが言った。みんなを避難所から帰宅させている時に会ったらしい。
「いやあ、この度は助けていただきありがとうございました。ぜひうちに来てください。
このまちを代表してお礼させてもらえませんか」
「ぼくたちは今非常におなかがすいています」
セトがずいっと前に出て真顔で言う。
「セト…」
「あっはっはっは。それは大変だ。うちへ来てください。ごちそうを用意しましょう」
避難解除したものの、ほとんどがまだ避難所に留まる中で、町長だけがすぐやってきてごちそうしてくれた。
ー「あーちゃん、覚えてるか?あのおっちゃんち」
覚えてる。
さすが町長。家はものすごく大きかった。中に入ったらアロマのいい香りがして、なぜかもう奥さんがいて料理を作ってくれていて。座った途端に次々にごちそうが。
「おいしかったよなぁ」
おかげで腹一杯になった。満足。
ー「そこ違う。違うからあーちゃん」
ん?
そういえば一人だと思ったけど。さっきから聞こえているこの声。
ー「なぁにぼーっとしてんの。あーちゃん。
いやそりゃ俺も驚いたけどやなぁ。
シナっちとかシナっちとかシナっち、どこ行ったんかなぁ」
「…いやシナばっかり!!」
はっとしてやっと夢から覚めた気がする。
目の前には白い中に眩しい金髪にうっとうしい性格、セトだ。セトがいる。
「あれ、ここどこ?」
「俺もそれ聞きたい。洞窟にいたのにな」
「そうだ。洞窟…ってなんで森?」
いつの間にか森にいて、シナはもちろん、ノアもシェリーナもいない。今まで一緒にいたはずなのに。
洞窟の中は肌寒くて、薄く霧がかかっていた。
そうだ、シェリーナが暗いのはいやだって、洞窟の入口で待ってるって言ってたんだっけ。
じゃあ、ノアとシナは?
「洞窟にいたのに、中入ったらすぐ森や。おかしいやろこれ」
「ああ。これなに?夢みてんの?」
寝た覚えはないんだけど。
「たぶん、あれやな」「あれって?」
「幻覚。それもめっちゃ強力なやつ」
「は?」
洞窟をみつけて中に入ったのだ。
でも今確かに森にいる。白い空の森。
…これが、幻覚?
足元は枯れ葉や枝が蓄積しているせいなのか、ところどころフカフカしている。あちこちに木の根が張り巡らされて歩きづらい。
木々の隙間から差し込む光り。真っ白だ。
確かに森にいるのだ。
いや、洞窟にいた。いたんだ。
だけど…なんでだ?
ー…怪しい洞窟があると言われ、洞窟を目指した。
「お腹空いた!!」
「お前は黙って案内できないのか」
「あーちゃんも腹減った言うてるもん!ね!ね!ね!」
セトが迫ってくる。
無理矢理案内係させられて機嫌が悪いらしい。
ただ…「ああ、腹減ったな」
「ほらああっ!!」
「いちいち大声を出すな。子供か」
「うふふ。ねぇノアちゃん、私もおなか空いちゃった。少し休んでから行かない?何気に長旅だったし」
シナが言った。
「ほぉらあああぁ!なーシナっちもおなか空いたやんなあ……オウフッ…!!」
案の定迫りすぎてまたシナに顔面パンチくらってるし…。
「勇者様のおなかもお空きに?」
「うん」
「あら大変!待っていてください。今すぐそこらの家から片っ端に食料を」
「あーだめだめだめ。大丈夫だから。泥棒はだめだって」
「勇者様が空腹だというのに!?勇者様以外の人間なんて食料がなくなったってどうでも」
「いやよくないからっ」
シェリーナすぐ暴走すんな…。
「あああああ様!あああああ様!」
「……」
「あああああ様!ああ、会えてよかった…………あああああ様?」
「…………あ俺か」
あーちゃんと呼ばれるのにうっかり慣れてしまって、相変わらずこの世界用の名前に全くなじんでいない。なじむつもりもないんだけど。
振り返ればおじさんが一人。
「あ、町長さん!」
シナが言った。みんなを避難所から帰宅させている時に会ったらしい。
「いやあ、この度は助けていただきありがとうございました。ぜひうちに来てください。
このまちを代表してお礼させてもらえませんか」
「ぼくたちは今非常におなかがすいています」
セトがずいっと前に出て真顔で言う。
「セト…」
「あっはっはっは。それは大変だ。うちへ来てください。ごちそうを用意しましょう」
避難解除したものの、ほとんどがまだ避難所に留まる中で、町長だけがすぐやってきてごちそうしてくれた。
ー「あーちゃん、覚えてるか?あのおっちゃんち」
覚えてる。
さすが町長。家はものすごく大きかった。中に入ったらアロマのいい香りがして、なぜかもう奥さんがいて料理を作ってくれていて。座った途端に次々にごちそうが。
「おいしかったよなぁ」
おかげで腹一杯になった。満足。
ー「そこ違う。違うからあーちゃん」
ん?
そういえば一人だと思ったけど。さっきから聞こえているこの声。
ー「なぁにぼーっとしてんの。あーちゃん。
いやそりゃ俺も驚いたけどやなぁ。
シナっちとかシナっちとかシナっち、どこ行ったんかなぁ」
「…いやシナばっかり!!」
はっとしてやっと夢から覚めた気がする。
目の前には白い中に眩しい金髪にうっとうしい性格、セトだ。セトがいる。
「あれ、ここどこ?」
「俺もそれ聞きたい。洞窟にいたのにな」
「そうだ。洞窟…ってなんで森?」
いつの間にか森にいて、シナはもちろん、ノアもシェリーナもいない。今まで一緒にいたはずなのに。
洞窟の中は肌寒くて、薄く霧がかかっていた。
そうだ、シェリーナが暗いのはいやだって、洞窟の入口で待ってるって言ってたんだっけ。
じゃあ、ノアとシナは?
「洞窟にいたのに、中入ったらすぐ森や。おかしいやろこれ」
「ああ。これなに?夢みてんの?」
寝た覚えはないんだけど。
「たぶん、あれやな」「あれって?」
「幻覚。それもめっちゃ強力なやつ」
「は?」
洞窟をみつけて中に入ったのだ。
でも今確かに森にいる。白い空の森。
…これが、幻覚?
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