固定観念(いま)をぶち壊せ!

椎奈風音

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日常をぶち壊せ!

第五話

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「期待なんか、してな……っ」 
 耳をガリッと噛まれて、声が裏返る。 
「ふ~ん。本当にそうなのかな?」 
 やんわりと身体の中心を弄られ、息が上がってくる。 
 男の巧みな愛撫は、逆らう気力を奪っていく。 
 ベルトを外され、直に触られても抵抗らしき抵抗が出来なかった。

(なんで……) 
 自分で自分の身体が信じられない。 
 こんな人目のある所で痴漢されても感じるなんて、俺はどこかおかしいのだろうか……。
「ねぇ、咲君。本当にやめていいの?」 
 悪魔のような囁きが、快感に霞んだ頭に響く。 
(やめる?)

 ……そんなの嫌だ。

(俺は今、何を……?) 
 戸惑いの表情を見せた俺に、男がニヤリと笑った。 
「ほら、やっぱり君も期待してる」 
「……違う!」
 咄嗟に否定すると、俺を嘲笑うかのように、男の指が最も敏感な先端の割れ目を弄りだす。 
 先走りの蜜が男の指を濡らしていく。
「違わない。君は公共の場所で、恥ずかしい所を弄られて感じちゃう淫乱なんだよ」
「……っ」 
 何も言い返せなかった。 
 男の低い声に――、耳に熱くかかる吐息に、益々身体は敏感になっていく。

「……嘘をついた悪い子にはお仕置きだ。覚悟はいい?」 
 明らかに俺の方が被害者なはずなのに、男の雰囲気に呑まれ、自分が悪いように思えてくる。 
「いゃぁ……っ」 
 男の指に誰にも触られたことのない尻の割れ目をなぞられ、身体が反射的に反応する。 
 男は丹念にそこを撫でていたが、ふいに指先を奥に挿れてきた。 
「っ!?」 
 先走りの蜜で濡れていたそこは、男の指を抵抗なく受け入れる。
(……嘘) 
 男同士のセックスでどこを使うのかは知っていたが、男を受け入れるように出来ていないそこは痛みを伴うはずだ。 
 なのに、指とはいえ簡単に受け入れてしまうなんて……。 

「ほら、言った通りだろう?」 
 クスクスと笑われて、羞恥で顔が上げられない。 
 男の言葉を認めたくはないが、身体を探るように動く指に合わせて、中が蠢くのを止められない。 
 いつの間にか指の数を増やされ、バラバラに体内を弄られて、息があがってくる。
「……やぁっ」 
 男の指がある一点に触れた瞬間、身体が痙攣したようにビクッと震えた。 
(な、何?) 
 今まで感じたことのない強烈な刺激に、戸惑いを覚える。 
 男がその場所を弄る度に、訳が分からないほどの快感を感じて、前の物が物欲しそうに揺れた。 
(……こんなことって……) 
 自分と同じ男に、こんな恥ずかしいことをされて……、しかもあんな所に指を挿れられて感じるなんて、俺は本当に淫乱なのか?

「初めてで中だけでイッちゃったら、君は本当に淫乱だね」 
「……っ!」 
 耳元で喋る男の息遣いさえも、今の俺にはかなりの刺激だ。 
 男の言いなりになんてなりたくない。 
 だけど、理性さえも溶かすような圧倒的な快感には逆らえない。

「さぁ、こっち側に堕ちておいで」 
「んっ!!」 
(……駄目だ。堕ちる!!) 
 次の瞬間、俺は男の手の中に欲望を吐き出していた。 
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