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日常をぶち壊せ!
第四話
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(眠てぇ……)
俺は電車の中で、欠伸をかみ殺した。
瞼がくっつきそうだが、いくら俺でもこんなすし詰め状態の満員電車の中では眠れそうにない。
昨日、早々に逃亡を図った俺だが、二人はかなりしつこかった。
鍵をかけていたから、部屋の中にまで踏み込まれることはなかったが、部屋の前で兄貴と渚が代わる代わる尋問に来て、それは夜中まで続いた。
(いい加減にしてくれよ)
俺が一体、何をしたっていうんだ。
誰にだって、言いたくないことの一つや二つあるはずだ。
だが、俺が逃げたことで若干キレ気味の兄貴と弟にそれを言う勇気はない。
結局朝まで部屋に籠城した俺は、兄貴達がいなくなったのを見計らって家を出た。
当然のことながら、時間はギリギリだ。
駅まで全速力で走り、いつもの電車に乗り込んだ俺は、人の多さに余計疲れた。
これから40分もこの状態なんて地獄としか思えない。
「えっ!?」
尻に何か硬いものを押し付けられた気がして、眠気が一気に吹き飛んだ。
(え?……まさか?)
いくらなんでも、二日連続で痴漢なんてありえない。
身体に感じる硬さから、恐らく後ろの人の鞄か何かが当たっているのだろう。
自意識過剰な自分の反応が恥ずかしくなり、下を向いた。
そうすると、今度は股の間に鞄が擦り付けられる。
初めは無視していたが、鞄を擦り付けられている場所が段々むず痒くなってきて、なんかちょっとおかしいことに気付いた。
(もしかして、わざと?)
鞄が尻に当たるくらいならまだしも、狙ったように股の間を擦るなんて普通じゃ考えられない。
流石に身の危険を感じ、鞄を手で押し退けようとすると、背後から手を掴まれた。
「……悪い子だね、咲君。こんな物にも感じるなんて」
「……っ!」
耳元で囁かれた声に聞き覚えがあると気付いた瞬間、悲鳴を上げそうになった。
「アンタは!」
間違いなく、昨日の痴漢の男だ。
腕を押さえつけられていて、男の顔は見えないが、この声の感じは間違いない。
なんでこの男は、わざわざ自分みたいな冴えない男を選ぶのか。
一回なら気紛れだろうが、二回目は何か理由があるはずだ。
しかも、俺の名前まで知ってるなんて、一体どこで会ったんだ?
「なんで、俺の名前知ってるんだ?」
「それは君が有名だからだよ」
「はぁ?」
顔も見えない男に有名と言われても、微妙な感じだ。
「そんなことより、咲君。もしかして、癖になった?昨日と同じ時間、同じ車両に乗るなんて」
男に耳元で笑われて、カッと血が上る。
乗り遅れないことに必死で気付かなかったが、確かにここは昨日と同じ車両だ。
でも男が言うように期待していたわけじゃない。
本当にそうなら、俺はただの変態だ。
俺は電車の中で、欠伸をかみ殺した。
瞼がくっつきそうだが、いくら俺でもこんなすし詰め状態の満員電車の中では眠れそうにない。
昨日、早々に逃亡を図った俺だが、二人はかなりしつこかった。
鍵をかけていたから、部屋の中にまで踏み込まれることはなかったが、部屋の前で兄貴と渚が代わる代わる尋問に来て、それは夜中まで続いた。
(いい加減にしてくれよ)
俺が一体、何をしたっていうんだ。
誰にだって、言いたくないことの一つや二つあるはずだ。
だが、俺が逃げたことで若干キレ気味の兄貴と弟にそれを言う勇気はない。
結局朝まで部屋に籠城した俺は、兄貴達がいなくなったのを見計らって家を出た。
当然のことながら、時間はギリギリだ。
駅まで全速力で走り、いつもの電車に乗り込んだ俺は、人の多さに余計疲れた。
これから40分もこの状態なんて地獄としか思えない。
「えっ!?」
尻に何か硬いものを押し付けられた気がして、眠気が一気に吹き飛んだ。
(え?……まさか?)
いくらなんでも、二日連続で痴漢なんてありえない。
身体に感じる硬さから、恐らく後ろの人の鞄か何かが当たっているのだろう。
自意識過剰な自分の反応が恥ずかしくなり、下を向いた。
そうすると、今度は股の間に鞄が擦り付けられる。
初めは無視していたが、鞄を擦り付けられている場所が段々むず痒くなってきて、なんかちょっとおかしいことに気付いた。
(もしかして、わざと?)
鞄が尻に当たるくらいならまだしも、狙ったように股の間を擦るなんて普通じゃ考えられない。
流石に身の危険を感じ、鞄を手で押し退けようとすると、背後から手を掴まれた。
「……悪い子だね、咲君。こんな物にも感じるなんて」
「……っ!」
耳元で囁かれた声に聞き覚えがあると気付いた瞬間、悲鳴を上げそうになった。
「アンタは!」
間違いなく、昨日の痴漢の男だ。
腕を押さえつけられていて、男の顔は見えないが、この声の感じは間違いない。
なんでこの男は、わざわざ自分みたいな冴えない男を選ぶのか。
一回なら気紛れだろうが、二回目は何か理由があるはずだ。
しかも、俺の名前まで知ってるなんて、一体どこで会ったんだ?
「なんで、俺の名前知ってるんだ?」
「それは君が有名だからだよ」
「はぁ?」
顔も見えない男に有名と言われても、微妙な感じだ。
「そんなことより、咲君。もしかして、癖になった?昨日と同じ時間、同じ車両に乗るなんて」
男に耳元で笑われて、カッと血が上る。
乗り遅れないことに必死で気付かなかったが、確かにここは昨日と同じ車両だ。
でも男が言うように期待していたわけじゃない。
本当にそうなら、俺はただの変態だ。
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