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日常をぶち壊せ!
第三話
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(柊のヤツ、妙に勘がいいからな)
何か気付かれたかもしれない。
探りを入れようにも、上手くはぐらかされてしまう。
(……本当に喰えないヤツだよ)
結局、何を掴まれたのかわからないまま授業が終わり家に帰ると、待ち構えていたように、リビングのドアが凄い勢いで開いた。
「兄貴!?」
よく見ると、兄貴の後ろに弟の姿もある。
生徒会長である兄貴はいつも生徒会の仕事で遅いし、弟も部活をしていてこの時間に家にいることはまずない。
「咲、今日はどうしたんだ!?」
「はぁ?」
その言葉、そのまま兄貴達に返したいよ。
アンタ達こそ、こんな時間にどうしたんだよ!?
「兄貴達こそ、なんでこんな時間にいるの?」
既に私服に着替えている二人を見て、自然に眉が寄る。
ホームルームが終わって寄り道もせずに帰ってきた俺より早いなんて、授業をサボって帰ってきたとしか思えない。
「咲、お前が心配だったから早く帰ってきたんじゃないか」
「はぁ?」
兄貴に勢いよく肩を掴まれて、痛みに顔をしかめる。
正直、言われている意味がよくわからない。
「だって、咲ちゃん。今日、遅刻したんでしょ?咲ちゃんに限ってサボリとかまずないし、何かあったんじゃないかって、本当に心配したんだよ?」
大きな瞳でジッと俺を見つめる弟は可愛いが、内容はいただけない。
何故、校舎の違う中等部にいる弟がそんなこと知っているんだろう……。
「なんで渚がそんなこと知ってるんだ?」
高等部だけでも、一学年10クラスはある。
その中の一人が遅刻したとしても、普通はわからないはずだ。
「そんなの咲ちゃんが有名だからに決まってるじゃない。二時間目の授業が始まる頃には、僕の耳に入ってきたよ」
(早っ!!)
俺が学校に着いたのが、一時間目が終わった後だ。
わずか10分の休憩の間に、隣の中等部まで話が行くなんて、よほど暇人が多いとしか思えない。
それに有名なのは俺じゃなくて、アンタ達二人だ!
「――で、お前は一体何をして遅刻したんだ?」
兄貴の声がいつもよりワンオクターブ低くなる。
すぅっと細められた目が、探るように俺を見る。
何もかも見透かされそうな視線に、背中に嫌な汗をかく。
こんな目をしている時の兄貴は油断ならない。
めちゃめちゃ過保護な兄貴に、痴漢されて遅刻したなんて言ったら、何されるかわからないよ……。
「……満員電車でちょっと気分が悪くなっちゃって」
「……ふ~ん」
長瀬にした言い訳と同じことを口にするが、信じてもらえたかどうかは怪しい。
兄貴は眉を顰めているし、渚は大きな瞳でジッと俺を見つめている。
出会って1ヶ月しか経っていない長瀬と違い、生まれた時から一緒にいる二人を騙すのは難しい。
「……咲、この俺に嘘をつくなんていい度胸だな」
「……っ!?」
兄貴に凄まれて、息を呑む。
(一体、どこでバレたんだ?)
自分でも、どこでそんなミスを冒したのかわからない。
「だって咲ちゃん、嘘つく時、目が泳ぐもん。バレバレだよ」
焦っている俺に、渚が種明かしをしてくれた。
(俺にそんな癖があったなんてっ!)
今更、後悔しても遅い。
目の前には、完全に目の据わった兄貴と可愛らしい顔に黒い笑みを浮かべている弟がいる。
(とにかく逃げよ!)
逃げるが勝ちだと思った俺は、二階の自分の部屋にダッシュで逃走した。
何か気付かれたかもしれない。
探りを入れようにも、上手くはぐらかされてしまう。
(……本当に喰えないヤツだよ)
結局、何を掴まれたのかわからないまま授業が終わり家に帰ると、待ち構えていたように、リビングのドアが凄い勢いで開いた。
「兄貴!?」
よく見ると、兄貴の後ろに弟の姿もある。
生徒会長である兄貴はいつも生徒会の仕事で遅いし、弟も部活をしていてこの時間に家にいることはまずない。
「咲、今日はどうしたんだ!?」
「はぁ?」
その言葉、そのまま兄貴達に返したいよ。
アンタ達こそ、こんな時間にどうしたんだよ!?
「兄貴達こそ、なんでこんな時間にいるの?」
既に私服に着替えている二人を見て、自然に眉が寄る。
ホームルームが終わって寄り道もせずに帰ってきた俺より早いなんて、授業をサボって帰ってきたとしか思えない。
「咲、お前が心配だったから早く帰ってきたんじゃないか」
「はぁ?」
兄貴に勢いよく肩を掴まれて、痛みに顔をしかめる。
正直、言われている意味がよくわからない。
「だって、咲ちゃん。今日、遅刻したんでしょ?咲ちゃんに限ってサボリとかまずないし、何かあったんじゃないかって、本当に心配したんだよ?」
大きな瞳でジッと俺を見つめる弟は可愛いが、内容はいただけない。
何故、校舎の違う中等部にいる弟がそんなこと知っているんだろう……。
「なんで渚がそんなこと知ってるんだ?」
高等部だけでも、一学年10クラスはある。
その中の一人が遅刻したとしても、普通はわからないはずだ。
「そんなの咲ちゃんが有名だからに決まってるじゃない。二時間目の授業が始まる頃には、僕の耳に入ってきたよ」
(早っ!!)
俺が学校に着いたのが、一時間目が終わった後だ。
わずか10分の休憩の間に、隣の中等部まで話が行くなんて、よほど暇人が多いとしか思えない。
それに有名なのは俺じゃなくて、アンタ達二人だ!
「――で、お前は一体何をして遅刻したんだ?」
兄貴の声がいつもよりワンオクターブ低くなる。
すぅっと細められた目が、探るように俺を見る。
何もかも見透かされそうな視線に、背中に嫌な汗をかく。
こんな目をしている時の兄貴は油断ならない。
めちゃめちゃ過保護な兄貴に、痴漢されて遅刻したなんて言ったら、何されるかわからないよ……。
「……満員電車でちょっと気分が悪くなっちゃって」
「……ふ~ん」
長瀬にした言い訳と同じことを口にするが、信じてもらえたかどうかは怪しい。
兄貴は眉を顰めているし、渚は大きな瞳でジッと俺を見つめている。
出会って1ヶ月しか経っていない長瀬と違い、生まれた時から一緒にいる二人を騙すのは難しい。
「……咲、この俺に嘘をつくなんていい度胸だな」
「……っ!?」
兄貴に凄まれて、息を呑む。
(一体、どこでバレたんだ?)
自分でも、どこでそんなミスを冒したのかわからない。
「だって咲ちゃん、嘘つく時、目が泳ぐもん。バレバレだよ」
焦っている俺に、渚が種明かしをしてくれた。
(俺にそんな癖があったなんてっ!)
今更、後悔しても遅い。
目の前には、完全に目の据わった兄貴と可愛らしい顔に黒い笑みを浮かべている弟がいる。
(とにかく逃げよ!)
逃げるが勝ちだと思った俺は、二階の自分の部屋にダッシュで逃走した。
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