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転校
第一話
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「う~ん。もしかして迷ったかも……?」
自分のことを方向音痴だと思ったことはないが、周りを見渡しても誰もいないこの状況は、どう考えても迷ったとしか言えないだろう。
校門をくぐった所までは良かったが、途中で曲がったのが悪かったのか……。
俺が転校した桜花学園は、中等部から大学部まである県内でも有数の進学校だ。
高等部までは完全な男子校で、大学部から共学になる。
希望があれば寮に入ることも出来るせいか、敷地はかなり広大だ。
(でも、校内で迷うってどうよ?)
入り組んだライブハウスでも迷ったことがなかった俺は、軽くショックを受けた。
(こんなとこ、誰も来ないよな……)
見渡す限り建物らしき物はないし、人の気配すらしない。
しかも進めば進むほど、行きたい場所から離れている気がする。
やたら広過ぎる学校というのも考えものだ。
……俺、このまま遭難しないかな、という馬鹿な考えまで浮かんでくる。
いっそ、現実逃避をしたい気分だ。
「こんな所で何やってんだ?お前」
背後から訝しげな声が聞こえ、始めは幻聴かと思った。
こんな一見、森の中かと疑うほど、木が密集している場所に用があるヤツなんているわけない。
「おい、聞こえてないのか?」
再び声を掛けられ空耳じゃなかったことに気付き、心の中でガッツポーズをする。
(良かった!!)
これでなんとか、校舎に辿り着ける。
嬉しさのあまり、勢いよく振り向いた俺は、そのまま固まった。
(なんでコイツがこんな所にいるんだ!?)
目の前にいたのは、こんな場所にいるはずのない相手だった。
「キョウ!?」
「は?」
髪の色は違うが、その顔はどう見てもモデルのキョウだ。
キョウは若い世代に圧倒的な人気を誇るカリスマモデルだ。
八頭身の均整の取れた身体に、金髪に近い色素の薄い髪。
甘い顔立ちは女の子が一度は夢見る王子様みたいだ。
目の前の男は不思議そうな顔をしているが、こんな綺麗な顔二つはないだろう。
多少印象が違う気がするが、プライベートと仕事中で雰囲気が違うのはよくあることだ。
まさか転校初日で、芸能人に会うとは思わなかったけど。
「俺達のこと知らないなんて、お前、転校生か?」
「そうだけど」
確かに俺は転校生だが、変な言い方をするヤツだ。
『俺達』って、まるでもう一人キョウがいるような言い方だ。
「成る程ね。俺はキョウじゃない。アイツは俺の双子の弟だ」
「……は!?」
俺は、ぽかーんと口を開けてしまった。
(双子!?)
そんなに双子って、ゴロゴロ転がっているものか?
自分のことを棚に上げて、そんなことを思ってしまう。
この顔が、世の中に二つ。
こんな綺麗な顔が二つもあるなんて、遺伝子って恐ろしい。
確かに俺も双子だけど、二卵性だし、全く似た所がない。
多分母さんの腹の中で、優勢遺伝子が全て直樹の方にいったんだと思う。
「俺は、結城戒。お前は?」
「櫻井夏樹だ」
「で、夏樹はなんでこんな所にいるんだ?」
「……迷ったんだ」
ナチュラルに下の名前で呼び捨てにされたことより、思わずって感じで吹き出されたことの方が気に触る。
ムッとしたことがわかったのか、結城が謝って来る。
「ゴメン、ゴメン。方向音痴な所が弟とそっくりだったから」
「弟って、キョウのこと?」
テレビや雑誌とかに出てる時はあんなに完璧に見えるのに、意外なことを聞いて怒りが吹き飛んだ。
「あ~、違う。アイツじゃなくて、一番下の弟」
「え?結城って、何人兄弟なんだ?」
「五人兄弟。俺は上から2番目」
「……マジか」
今まで周りにそんなに兄弟がいるヤツなんて見たことがなかったから、純粋に驚いてしまう。
「だから俺のことは、下の名前で呼んでくれ。兄貴も弟達もこの学校にいるから、ややこしいし」
「うん。わかった。で、なんで戒はここにいたんだ?」
こんな人気のない森の中に好き好んで来るヤツなんていないと思う。
「ここ、校舎に行くのに近道なんだ。ただ初めてのヤツは必ず迷うけど」
「……やっぱり」
入り組み過ぎてて、マジで遭難するかと思った。
「転校生ってことは、職員室に行くのか?」
「うん」
「じゃあ、俺が連れっててやるよ」
「ありがとう」
ここで本当に戒に出会えて良かった。
もし、また同じことが会ったら、恥ずかしがらずに聞こう。
背に腹は変えられない。
今日一番の教訓だ。
自分のことを方向音痴だと思ったことはないが、周りを見渡しても誰もいないこの状況は、どう考えても迷ったとしか言えないだろう。
校門をくぐった所までは良かったが、途中で曲がったのが悪かったのか……。
俺が転校した桜花学園は、中等部から大学部まである県内でも有数の進学校だ。
高等部までは完全な男子校で、大学部から共学になる。
希望があれば寮に入ることも出来るせいか、敷地はかなり広大だ。
(でも、校内で迷うってどうよ?)
入り組んだライブハウスでも迷ったことがなかった俺は、軽くショックを受けた。
(こんなとこ、誰も来ないよな……)
見渡す限り建物らしき物はないし、人の気配すらしない。
しかも進めば進むほど、行きたい場所から離れている気がする。
やたら広過ぎる学校というのも考えものだ。
……俺、このまま遭難しないかな、という馬鹿な考えまで浮かんでくる。
いっそ、現実逃避をしたい気分だ。
「こんな所で何やってんだ?お前」
背後から訝しげな声が聞こえ、始めは幻聴かと思った。
こんな一見、森の中かと疑うほど、木が密集している場所に用があるヤツなんているわけない。
「おい、聞こえてないのか?」
再び声を掛けられ空耳じゃなかったことに気付き、心の中でガッツポーズをする。
(良かった!!)
これでなんとか、校舎に辿り着ける。
嬉しさのあまり、勢いよく振り向いた俺は、そのまま固まった。
(なんでコイツがこんな所にいるんだ!?)
目の前にいたのは、こんな場所にいるはずのない相手だった。
「キョウ!?」
「は?」
髪の色は違うが、その顔はどう見てもモデルのキョウだ。
キョウは若い世代に圧倒的な人気を誇るカリスマモデルだ。
八頭身の均整の取れた身体に、金髪に近い色素の薄い髪。
甘い顔立ちは女の子が一度は夢見る王子様みたいだ。
目の前の男は不思議そうな顔をしているが、こんな綺麗な顔二つはないだろう。
多少印象が違う気がするが、プライベートと仕事中で雰囲気が違うのはよくあることだ。
まさか転校初日で、芸能人に会うとは思わなかったけど。
「俺達のこと知らないなんて、お前、転校生か?」
「そうだけど」
確かに俺は転校生だが、変な言い方をするヤツだ。
『俺達』って、まるでもう一人キョウがいるような言い方だ。
「成る程ね。俺はキョウじゃない。アイツは俺の双子の弟だ」
「……は!?」
俺は、ぽかーんと口を開けてしまった。
(双子!?)
そんなに双子って、ゴロゴロ転がっているものか?
自分のことを棚に上げて、そんなことを思ってしまう。
この顔が、世の中に二つ。
こんな綺麗な顔が二つもあるなんて、遺伝子って恐ろしい。
確かに俺も双子だけど、二卵性だし、全く似た所がない。
多分母さんの腹の中で、優勢遺伝子が全て直樹の方にいったんだと思う。
「俺は、結城戒。お前は?」
「櫻井夏樹だ」
「で、夏樹はなんでこんな所にいるんだ?」
「……迷ったんだ」
ナチュラルに下の名前で呼び捨てにされたことより、思わずって感じで吹き出されたことの方が気に触る。
ムッとしたことがわかったのか、結城が謝って来る。
「ゴメン、ゴメン。方向音痴な所が弟とそっくりだったから」
「弟って、キョウのこと?」
テレビや雑誌とかに出てる時はあんなに完璧に見えるのに、意外なことを聞いて怒りが吹き飛んだ。
「あ~、違う。アイツじゃなくて、一番下の弟」
「え?結城って、何人兄弟なんだ?」
「五人兄弟。俺は上から2番目」
「……マジか」
今まで周りにそんなに兄弟がいるヤツなんて見たことがなかったから、純粋に驚いてしまう。
「だから俺のことは、下の名前で呼んでくれ。兄貴も弟達もこの学校にいるから、ややこしいし」
「うん。わかった。で、なんで戒はここにいたんだ?」
こんな人気のない森の中に好き好んで来るヤツなんていないと思う。
「ここ、校舎に行くのに近道なんだ。ただ初めてのヤツは必ず迷うけど」
「……やっぱり」
入り組み過ぎてて、マジで遭難するかと思った。
「転校生ってことは、職員室に行くのか?」
「うん」
「じゃあ、俺が連れっててやるよ」
「ありがとう」
ここで本当に戒に出会えて良かった。
もし、また同じことが会ったら、恥ずかしがらずに聞こう。
背に腹は変えられない。
今日一番の教訓だ。
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