3 / 3
転校
鷹side
しおりを挟む
「……ふ~ん?」
生徒会室の窓から外を眺めていた俺は、面白いものを見つけて目を細めた。
今時オタクでさえしないような格好をした奴が、校舎を見上げてキョロキョロしている。
背はそこそこあるようだが、黒縁眼鏡と鬱陶しい前髪に隠されて顔は全く見えない。
(アイツ、何者だ?)
この学園の生徒の顔は全て頭に入っているが、あの男は見たことがない。
あんな変わった奴、一度見たら忘れない筈だが……?
「何か面白いものでもありましたか?」
「……まぁな」
声がした方を振り向くと、女と見紛うほどの繊細な美貌の男と目が合う。
生徒会副会長である慎とは幼馴染で腐れ縁だ。
誰に対しても敬語で話す慎は一見温厚そうに見えるが、中身はなかなか強かだ。
「珍しいですね。貴方が何かに興味を持つなんて……」
「そうか?」
ニヤリと笑いながら惚けると、慎がついていけないとばかりに肩を竦めた。
「貴方がハルカ以外に執着するなんて……」
まるで天変地異の前触れですねと言われ、俺は心外だとばかりに顔を顰める。
ハルカとその辺の男を同列にあげるなんて、どういう神経をしてるんだ?
ハルカは俺の率いる『スパイラル』と敵対している族の副総長だ。
いつも闇に紛れそうな黒い服を着ていて、艶やかな金髪との対比が妙に艶めかしい。
その姿に欲情した者はかなりいるだろうが、彼は色々な意味で不可侵の女神だった。
……まず、ハルカに勝てる者がいない。
族同士の抗争では負け知らずで、ほとんど一撃で相手を倒す。
長身でしなやかなに伸びた手足から繰り出される蹴りは強烈だが、動きが優雅なせいか舞を舞っているみたいに見える。
そして、ハルカは俺が唯一負けた相手だった。
護身術として、色々な格闘技を習ってきた俺でさえ、全く歯が立たない強さを持つ男――。
今まで年の割に冷めていて、何者にも執着しなかった俺が、初めて心を動かされた存在だった。
だが、それから半年後、ハルカは忽然と姿を消した。
そして消えたのは、ハルカだけじゃない。
元々ハルカがいたチームは、チームと言っていいのかわからないくらい少人数で形成されていた。
二年前に突然現れて、圧倒的な強さで次々と有力なチームを潰していった。
総長は小柄な男で、いつも目深にフードを被っているせいで、顔を見たヤツはいない。
周りの幹部が総長を守るように戦っていたから、総長がどれほどの強さかはわからないが、あれだけの精鋭を纏めるのだから弱いはずがない。
うちのチームの参謀は情報収集に長けた人物だが、彼の力を持ってしても、彼らが何人で形成されているかも、何処の誰かもわからなかった。
唯一分かったのが、副総長の名前が『ハルカ』ということだけだ。
チーム名さえもわからない彼らのことを、いつしか最悪の悪夢という意味で『ナイトメア』と呼ぶようになった。
『ナイトメア』は、族同士の抗争で一度も負けることなく、突然いなくなった。
(もう一度、ハルカに会いたい)
自分でも何故こんなにもハルカに執着するかわからない。
あの感情のない美しい漆黒の瞳に映りたい。
そして、あの美しい男を自分だけのものにしたい。
一度溢れ出した感情は、自分でも止めることは出来ない。
会えない日が続く度に、純粋だった思いは次第に暗く歪んでいく気がする。
……次に会えたら、どんな手段を使っても絶対に逃さない。
生徒会室の窓から外を眺めていた俺は、面白いものを見つけて目を細めた。
今時オタクでさえしないような格好をした奴が、校舎を見上げてキョロキョロしている。
背はそこそこあるようだが、黒縁眼鏡と鬱陶しい前髪に隠されて顔は全く見えない。
(アイツ、何者だ?)
この学園の生徒の顔は全て頭に入っているが、あの男は見たことがない。
あんな変わった奴、一度見たら忘れない筈だが……?
「何か面白いものでもありましたか?」
「……まぁな」
声がした方を振り向くと、女と見紛うほどの繊細な美貌の男と目が合う。
生徒会副会長である慎とは幼馴染で腐れ縁だ。
誰に対しても敬語で話す慎は一見温厚そうに見えるが、中身はなかなか強かだ。
「珍しいですね。貴方が何かに興味を持つなんて……」
「そうか?」
ニヤリと笑いながら惚けると、慎がついていけないとばかりに肩を竦めた。
「貴方がハルカ以外に執着するなんて……」
まるで天変地異の前触れですねと言われ、俺は心外だとばかりに顔を顰める。
ハルカとその辺の男を同列にあげるなんて、どういう神経をしてるんだ?
ハルカは俺の率いる『スパイラル』と敵対している族の副総長だ。
いつも闇に紛れそうな黒い服を着ていて、艶やかな金髪との対比が妙に艶めかしい。
その姿に欲情した者はかなりいるだろうが、彼は色々な意味で不可侵の女神だった。
……まず、ハルカに勝てる者がいない。
族同士の抗争では負け知らずで、ほとんど一撃で相手を倒す。
長身でしなやかなに伸びた手足から繰り出される蹴りは強烈だが、動きが優雅なせいか舞を舞っているみたいに見える。
そして、ハルカは俺が唯一負けた相手だった。
護身術として、色々な格闘技を習ってきた俺でさえ、全く歯が立たない強さを持つ男――。
今まで年の割に冷めていて、何者にも執着しなかった俺が、初めて心を動かされた存在だった。
だが、それから半年後、ハルカは忽然と姿を消した。
そして消えたのは、ハルカだけじゃない。
元々ハルカがいたチームは、チームと言っていいのかわからないくらい少人数で形成されていた。
二年前に突然現れて、圧倒的な強さで次々と有力なチームを潰していった。
総長は小柄な男で、いつも目深にフードを被っているせいで、顔を見たヤツはいない。
周りの幹部が総長を守るように戦っていたから、総長がどれほどの強さかはわからないが、あれだけの精鋭を纏めるのだから弱いはずがない。
うちのチームの参謀は情報収集に長けた人物だが、彼の力を持ってしても、彼らが何人で形成されているかも、何処の誰かもわからなかった。
唯一分かったのが、副総長の名前が『ハルカ』ということだけだ。
チーム名さえもわからない彼らのことを、いつしか最悪の悪夢という意味で『ナイトメア』と呼ぶようになった。
『ナイトメア』は、族同士の抗争で一度も負けることなく、突然いなくなった。
(もう一度、ハルカに会いたい)
自分でも何故こんなにもハルカに執着するかわからない。
あの感情のない美しい漆黒の瞳に映りたい。
そして、あの美しい男を自分だけのものにしたい。
一度溢れ出した感情は、自分でも止めることは出来ない。
会えない日が続く度に、純粋だった思いは次第に暗く歪んでいく気がする。
……次に会えたら、どんな手段を使っても絶対に逃さない。
0
お気に入りに追加
52
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説


久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる