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椎奈風音

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衝撃

第五話

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「なぁ、緋月。手伝わなくていいのか?」
 撮影が始まると同時に、俺と藤堂は部屋の隅に置いてある椅子に腰掛けた。
「撮影に入ると、素人の俺じゃ手伝うことないし」

 翔梧は撮影に入ると、自分にも他人にも厳しい。
 最高の物を作るために妥協は一切しない。
 だから、それについていける技術と信念がない者は、ハッキリ言って足手まといだ。

「……そうか。でも緋月がいてくれて良かったよ。じゃないと、俺一人で暇を持て余すことになってたし」
 藤堂がさりげなくフォローしてくれているのを感じて、気持ちがあたたかくなる。
「……ありがとう」
 小さく礼を言うと、藤堂がとろけそうな笑みを浮かべた。
「……っ!」

(そんなの、男に見せる顔じゃないだろ!?)
 思わず赤面してしまった俺は、慌てて顔を伏せた。 
「え、えっと……。藤堂って、前の撮影の時も見てたの?」
 焦っている自分を知られたくなくて、無理矢理話題を変える。
「ああ。貴明がいたからね」
「?」
 主役のモデルが従兄弟といっても、そう頻繁に見学に来るものだろうか?
 自分で訊いておきながら、俺は内心首を傾げた。

 「俺も緋月と一緒だよ。このスタジオ身内が経営してるから、しょっちゅう手伝わされるんだ」
 「そっか」
 ひとえに撮影といっても、カメラマンとモデルだけが仕事をしているわけではない。
 裏方を含めて、沢山の人が一つの作品を作るために動いている。
 人手が足りなくて、身内を使うことはよくあることなのだろう。
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