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椎奈風音

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衝撃

第四話

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「そんなに驚くことないだろ?君だって、似たようなものなのに」
「は?」
(誰と誰が似たようなものだって!?)
 俺の間の抜けた顔が面白かったのか、タカは声を上げて笑いだした。

「……あの」
 理由もわからずに、笑われるのは気分が悪い。
 俺の声が不機嫌になったのに気付いたのか、タカが慌てて笑いを引っ込めた。
「ごめんね。君があまりに自分のことに無自覚だからさ。皆気付いてるみたいなのに」
「はぁ?」
 さっぱり何を言われているのかわからないが、周りを見ると皆が一様に頷いている。

「無駄だよ。奏は自分に無頓着過ぎるから」
「そんなの、お前にだけは言われたくない!!」
 俺は肩を竦める翔梧に、反射的に反論した。
 自分に無頓着なのは、俺よりも翔梧の方だ。
 そうじゃなければ、あれほど周りの人間の視線を無視出来ないと思う。

「まぁ、その辺はお互い様ということで」
 翔梧との言い合いは、俺達にしてみればコミュニケーションみたいなものだが、端から見ると喧嘩しているように見えるらしい。
 慌てて仲裁に入られて、俺達はとりあえず口をつぐんだ。


「あとは俺の従兄弟の皐月」
「ついでみたいに言わないでくれよ」
 苦笑を浮かべる藤堂を見て、俺はまた大声を上げてしまった。

「藤堂と従兄弟!?」
 今日は本当に驚くことばかりだ。

「翔梧はこのこと知ってた?」
「……いや」
 短く答えられて、密かに安心する。
 自分だけ知らないのは、なんか虚しい。

「え?皐月と知り合いなんだ?」
 今度はタカが驚きの声を上げた。
「はい。俺達、同じクラスなんで」
「なんで、お前はそういうことを先に言わないんだ」
「特に訊かれなかったし」
「そういう問題じゃないだろ?」
 諭すようなタカの台詞に、藤堂はしれっとした顔で答えている。

(藤堂って、身内にはこうなんだ)
 今までフェミニストなイメージが強かったが、気を許している相手には結構ハッキリ言うみたいだ。
 言い争っているはずなのに、どこか漫才みたいな二人を見て、俺は笑いを噛み殺すのが大変だった。 
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