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衝撃
第一話
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大通りから少し外れた所に、目的のスタジオはあった。
スタジオと言っても、俺にはただの古びた雑居ビルにしか見えない。
翔梧と中に入ると、ロビーは意外に綺麗にされていた。
「翔梧、何階?」
「……5階」
エレベーターの前に立ち止まった翔梧に階数を聞いて、ボタンを押した。
(コイツ相変わらず、愛想がないな)
もっとにこやかにすれば、周りの反応も違うと思うのに。
俺は翔梧が笑う所を想像して途中で止めた。
翔梧がヘラヘラ笑うのも怖いし、かと言って今朝みたいな裏のある笑い方は問題外だ。
(翔梧が藤堂みたいに笑ったら、絶対に女の子が放っておかないだろうな)
昨日の自分のクラスに転校してきた少年のことを思い浮かべる。
(今日は何してるんだろ?)
こっちに来たばかりで、友達もそんなにいないだろうし。
「……あ、着いた」
チンという軽い音がして、扉が開いた。
「緋月?」
声のした方を振り向いた瞬間、意外な人物を見つけ、俺は目を見開いた。
「え!?藤堂?」
驚きのあまり、声が裏返った。
(なんで、ここにいるんだ?)
スタジオは普通、一般人は入れないと思う。
自分のことは棚に上げてそんなことを思っていると、俺の不思議そうな視線に気付いたのか、藤堂が説明してくれる。
「ここのスタジオは、俺の親戚がやってるんだ」
「え?そうなんだ」
そういえば昨日、近くに親戚が住んでいるって言っていた気がする。
「そういう緋月こそ、なんでここに?」
不思議そうに訊かれて、なんて答えたらいいか迷う。
翔梧にくっついてきて、CMの撮影を見に来たなんて、そんないかにもミーハーな理由は、言いたくない。
「……えっと」
「コイツは俺の付き添い。カメラの助手」
思わず言い淀むと、翔梧がフォローしてくれる。
「……翔梧」
一応、ありがとうと言いたい所だが、この展開だとマジで翔梧の手伝いをしなければいけない気がする。
助けられたというより嵌められた気がするのは、俺の気のせいだろうか?
スタジオと言っても、俺にはただの古びた雑居ビルにしか見えない。
翔梧と中に入ると、ロビーは意外に綺麗にされていた。
「翔梧、何階?」
「……5階」
エレベーターの前に立ち止まった翔梧に階数を聞いて、ボタンを押した。
(コイツ相変わらず、愛想がないな)
もっとにこやかにすれば、周りの反応も違うと思うのに。
俺は翔梧が笑う所を想像して途中で止めた。
翔梧がヘラヘラ笑うのも怖いし、かと言って今朝みたいな裏のある笑い方は問題外だ。
(翔梧が藤堂みたいに笑ったら、絶対に女の子が放っておかないだろうな)
昨日の自分のクラスに転校してきた少年のことを思い浮かべる。
(今日は何してるんだろ?)
こっちに来たばかりで、友達もそんなにいないだろうし。
「……あ、着いた」
チンという軽い音がして、扉が開いた。
「緋月?」
声のした方を振り向いた瞬間、意外な人物を見つけ、俺は目を見開いた。
「え!?藤堂?」
驚きのあまり、声が裏返った。
(なんで、ここにいるんだ?)
スタジオは普通、一般人は入れないと思う。
自分のことは棚に上げてそんなことを思っていると、俺の不思議そうな視線に気付いたのか、藤堂が説明してくれる。
「ここのスタジオは、俺の親戚がやってるんだ」
「え?そうなんだ」
そういえば昨日、近くに親戚が住んでいるって言っていた気がする。
「そういう緋月こそ、なんでここに?」
不思議そうに訊かれて、なんて答えたらいいか迷う。
翔梧にくっついてきて、CMの撮影を見に来たなんて、そんないかにもミーハーな理由は、言いたくない。
「……えっと」
「コイツは俺の付き添い。カメラの助手」
思わず言い淀むと、翔梧がフォローしてくれる。
「……翔梧」
一応、ありがとうと言いたい所だが、この展開だとマジで翔梧の手伝いをしなければいけない気がする。
助けられたというより嵌められた気がするのは、俺の気のせいだろうか?
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