Voice

椎奈風音

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第一話

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(今日は楽しかったな)
 夕食を食べて、翔梧と藤堂は自分の家に帰っていった。
 俺は自分の部屋のベッドに腰をかけて、目を閉じた。

(藤堂……)
 何故か今日会ったばかりの藤堂の顔が浮かんだ。
 始めはあんなに苦手だったのに、今はどうしてこんなにも気になるんだろう。

 俺は目を開けて、ベッドサイドの棚を見る。
 そこには、水をイメージして作られたという青色の瓶がある。
 それを手に取って、部屋にスプレーした。
 次の瞬間、爽やかな香りと桜の花びらが舞い散るような和の香りがした。


『貴方のなりたい貴方になれる。……Voice』

 頭の中で彼の声を思い出す。

(どうして……!)
 俺は『彼』に惹かれていたはずだ。
 なのに藤堂のことも気になる。
 自分で自分がわからない。

(いくら考えても、わからないものはわからないよな)
 そのうち時間が解決してくれるかもしれないし……。
 俺は諦めて、ベッドに寝転がった。
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