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旋律
第六話
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「ありがとう」
俺の口から、素直な礼の言葉が出た。
藤堂のたった一言で、今まで俺を縛っていた強固な鎖から開放されたみたいだ。
(本当は簡単なことだったんだ)
俺自身にそれを乗り越える勇気がなかっただけで……。
「なんか、緋月が素直だと気持ち悪いな」
藤堂がイタズラっぽい笑みを浮かべる。
「失礼な!!」
からかわれていると知りつつも、俺は声を荒げた。
「冗談だって。機嫌を直せよ」
完全に藤堂のペースに振り回されている。
俺は溜め息を吐きながら、藤堂を見た。
イタズラ好きで、人をからかってばかりだけど、肝心な時は助けてくれる。
俺が浮上するためのきっかけをくれる。
藤堂が俺の中でどんどん特別な存在になっていくのを止められない。
「そういえば、藤堂って一人暮らしだよね。ご飯とかどうするの?」
俺はふと疑問に思ったことを訊いてみる。
「俺、料理出来ないからなぁ。しばらくはコンビニのお世話になると思う」
藤堂は当面はそれでなんとかなるだろう、と肩を竦めた。
(やっぱり、男の一人暮らしだったら、そうなってくるよね)
俺でも、多分そうなるだろうし……。
「……あのさ、良かったらうちに来ない?」
「え?」
藤堂が驚いたように俺を見た。
「うち、翔梧も夕飯食べに来るし、その辺りは気にしなくていいよ。一人で食べるのって寂しいだろ?」
そう言った瞬間、藤堂がクスッと笑った。
「俺、なんか変なこと言った?」
急に笑い出した藤堂に、俺は不安になる。
「いや。緋月はいいヤツだなって思っただけ」
そして、藤堂は眩いほどの笑顔を俺に向けた。
「……っ!」
(びっくりした。あんな笑顔見たことないよ)
俺は真っ赤になって、下を向いた。
俺の口から、素直な礼の言葉が出た。
藤堂のたった一言で、今まで俺を縛っていた強固な鎖から開放されたみたいだ。
(本当は簡単なことだったんだ)
俺自身にそれを乗り越える勇気がなかっただけで……。
「なんか、緋月が素直だと気持ち悪いな」
藤堂がイタズラっぽい笑みを浮かべる。
「失礼な!!」
からかわれていると知りつつも、俺は声を荒げた。
「冗談だって。機嫌を直せよ」
完全に藤堂のペースに振り回されている。
俺は溜め息を吐きながら、藤堂を見た。
イタズラ好きで、人をからかってばかりだけど、肝心な時は助けてくれる。
俺が浮上するためのきっかけをくれる。
藤堂が俺の中でどんどん特別な存在になっていくのを止められない。
「そういえば、藤堂って一人暮らしだよね。ご飯とかどうするの?」
俺はふと疑問に思ったことを訊いてみる。
「俺、料理出来ないからなぁ。しばらくはコンビニのお世話になると思う」
藤堂は当面はそれでなんとかなるだろう、と肩を竦めた。
(やっぱり、男の一人暮らしだったら、そうなってくるよね)
俺でも、多分そうなるだろうし……。
「……あのさ、良かったらうちに来ない?」
「え?」
藤堂が驚いたように俺を見た。
「うち、翔梧も夕飯食べに来るし、その辺りは気にしなくていいよ。一人で食べるのって寂しいだろ?」
そう言った瞬間、藤堂がクスッと笑った。
「俺、なんか変なこと言った?」
急に笑い出した藤堂に、俺は不安になる。
「いや。緋月はいいヤツだなって思っただけ」
そして、藤堂は眩いほどの笑顔を俺に向けた。
「……っ!」
(びっくりした。あんな笑顔見たことないよ)
俺は真っ赤になって、下を向いた。
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