Voice

椎奈風音

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旋律

第三話

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「そういえば、藤堂って『ヴォイス』が好きなの?」
 たまたま帰り道が同じだったため、一緒に帰りながら、さっき気になったことを訊いてみる。
「ああ。初めて聞いた時はマジで鳥肌がたったよ」
「そんなもん?」
 確かに綺麗な音色だとは思うけど、それ以上の感情は湧かない。

「正直、凄いと思ったよ。なんか切なくて泣きたくなる感じ。一度あの『音』を聞いてしまったら、他の物じゃ代わりにならないよ」
 その感覚ならなんとなくわかる。
 俺にとってそれはあのCMの声だ。
 たった一言で、俺を捕らえて離さない……。
 代わりなんか考えられないくらい強烈に惹かれている。

 (会いたい……)

 あの声の主に。
 ……でも。

「藤堂は会いたいと思う?『ヴォイス』を作った人に」
 同じようにCMという実体のない物に惚れ込んでる藤堂に、訊いてみる。
「そうだな。会ってみたい。俺は『ソウ』が作る音に惚れてるから、きっと本人に会ったらもっと惚れてしまうと思う」
「顔も性格もわからないのに?」
「確かにそうだけど、『ソウ』が作った作品は『ソウ』の一部だろ?だから本人に会ったら、絶対俺は惹かれると思うよ」

 自分と藤堂は似ている。
 俺も顔も性格もわからない声の主に会ったら、好きになってしまうかもしれない……。


「あ、ここ俺の家」
 住宅街の中にある高層マンションの前で藤堂は立ち止まった。
(えっ?ここ?)
 そこは俺の家の真向かいのマンションだった。
「ここに引っ越して来たのか?」
「ああ。最上階に住んでる」

(マジかよ!)
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