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旋律
第一話
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「はぁ……。今日も無事終わった」
放課後、音楽室の掃除をしながら、俺はため息を吐いた。
通常二人一組での掃除当番なのだが、もう一人のクラスメートは用事があるらしく、さっさと帰ってしまった。
根が真面目な俺は、サボることもできず、一人黙々と掃除をしていた。
「やっと終わった!」
掃除が終わり疲れた俺は、ピアノの椅子にドサッと腰掛けた。
(今日はホント疲れたなぁ)
授業中は授業中で隣に座っている藤堂に気を使うし、休み時間になると珍しい転校生と話そうとクラスメート達が席を取り囲んでくるし……。
気の休まる時間がないというのは、まさにこういうことを言うのだろう。
あまり人込みが得意ではない俺は、少し精神的に参っていた。
「ピアノか……」
目の前の鍵盤を軽く叩いてみると、高く澄んだ音が音楽室に響いた。
(意外に音がズレてないな)
音楽科に置いてある調律されたピアノほど完璧な音ではないが、普通に弾くくらいならこれで十分だろう。
(何か弾こうかな)
俺の家は音楽一家で、小さい頃から色々な楽器を習わされてきた。
その中でもピアノの音色が好きで、昔から落ち込んだ時は、よくピアノを弾いていた。
あの繊細な音色に心が癒された気がするのだ。
(久々に、あの曲にしようかな)
頭の中に浮かんだ旋律をゆっくりと音にしていく。
澄んだ音が、音楽室に響き渡る。
少し切なげなメロディーが佳境に近付いた頃、音楽室のドアが勢いよく開いた。
ピアノに集中していた俺は、突然の進入者にビクッとして演奏を止めた。
放課後、音楽室の掃除をしながら、俺はため息を吐いた。
通常二人一組での掃除当番なのだが、もう一人のクラスメートは用事があるらしく、さっさと帰ってしまった。
根が真面目な俺は、サボることもできず、一人黙々と掃除をしていた。
「やっと終わった!」
掃除が終わり疲れた俺は、ピアノの椅子にドサッと腰掛けた。
(今日はホント疲れたなぁ)
授業中は授業中で隣に座っている藤堂に気を使うし、休み時間になると珍しい転校生と話そうとクラスメート達が席を取り囲んでくるし……。
気の休まる時間がないというのは、まさにこういうことを言うのだろう。
あまり人込みが得意ではない俺は、少し精神的に参っていた。
「ピアノか……」
目の前の鍵盤を軽く叩いてみると、高く澄んだ音が音楽室に響いた。
(意外に音がズレてないな)
音楽科に置いてある調律されたピアノほど完璧な音ではないが、普通に弾くくらいならこれで十分だろう。
(何か弾こうかな)
俺の家は音楽一家で、小さい頃から色々な楽器を習わされてきた。
その中でもピアノの音色が好きで、昔から落ち込んだ時は、よくピアノを弾いていた。
あの繊細な音色に心が癒された気がするのだ。
(久々に、あの曲にしようかな)
頭の中に浮かんだ旋律をゆっくりと音にしていく。
澄んだ音が、音楽室に響き渡る。
少し切なげなメロディーが佳境に近付いた頃、音楽室のドアが勢いよく開いた。
ピアノに集中していた俺は、突然の進入者にビクッとして演奏を止めた。
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