秘密の関係

結城家の兄弟達

第一話

　――ある晴れた日の朝。
　僕は洗面所の鏡の前で格闘していた。

（ネクタイが上手く結べないよ～）
　今日は僕の高校の入学式。中学までは学ランだったから、ネクタイの結び方がわからない。
　一人、四苦八苦していると――。

「おはよう、塔哉とうや。どうしたの？」
　鏡に中性的な美貌が映る。
「暁あきらちゃん！」
　暁ちゃんは、僕のすぐ上の兄ちゃんで、一つしか年が変わらないせいか、兄ちゃん達の中で一番仲がいい。
　暁ちゃんは、ミス日本に選ばれたことのある母さんに一番よく似ていて、男だとわかっていてもドキッとする美貌の持ち主だ。

「ネクタイが上手く結べなくて……」
　よく考えたら、高校生にもなって、ネクタイが結べないなんて、恥かしいことだよね？
　僕はそのことに気付き、赤くなって下を向く。
「塔哉は中学まで学ランだったからね。結べなくて当たり前だよ」
　暁ちゃんが、僕の気持ちに気付いてさりげなくフォローしてくれる。
（暁ちゃん……）
　僕は一つしか違わないのに、大人な反応を見せる暁ちゃんを尊敬してる。

「塔哉、ちょっと上を向いて」
「うん」
　僕が少し上を向くと、暁ちゃんがネクタイを結んでくれる。
　その時――、近い位置にある、暁ちゃんの伏せられた目線が色っぽくて、妙にドキドキしてしまう。
（どうしたんだろう？…僕）
　暁ちゃんの美貌なんて、見慣れてるはずなのに……。

「塔哉？」
　ネクタイを結び終わった暁ちゃんは、自分を見つめたまま赤面している僕に不思議そうな視線をおくってくる。
「ええっと……」
　暁ちゃんと視線を合わせられず、思わず僕は下を向いた。
　まだ心臓がドキドキしてる。

　一体、どうしたの？僕。