10 / 11
ジュエル・キス
第十話
しおりを挟む
「確かここだったよな」
飲み会の場所は大学の近くの居酒屋で、安いのと夜遅くまで開いているので、いつも満席に近い。
スマホで時間を確認すると、集合の5分前だった。
(アイツ、もう来てるのかな)
坂月が幹事みたいだったから、アイツの名前で予約を取っているはずだ。
店員の女の子に坂月の名前を言ったら、奥の座敷に通された。
「若槻、こっちだ」
席は9割方埋まっていて、俺に気付いた坂月が手招きをする。
男女比は半々くらいで、今日はただの飲み会じゃなくて、合コンだったのかもしれない。
(もっとよく聞いとけば良かったな)
俺はあまり合コンという場が好きじゃない。
みんながそうじゃないことはわかっているが、女の子からグイグイ来られるとついつい引いてしまうし、そういう子はちょっと苦手だ。
今更、後悔しても遅い。
「なぁ、坂月。今日って合コンなのか?」
「あれ?言ってなかったっけ?」
行ってねぇよ!!とツッコんでやりたい。
でもよく考えたら、飲み会に人数なんて関係ない。
そこで気付かなかった俺もかなり馬鹿だ。
目の前には際どい服装の女の子達がいる。
もう、本当に帰りたい。
でも、家には兄貴がいるし、早く帰るのも嫌だ。
どっちを選んでも、微妙だ。
あれこれ思い悩んでいるうちに、合コンがスタートした。
簡単な自己紹介が終わると、みんな好き好きに飲んだり食べたり、目当ての人と話をしたりしている。
「若槻君だっけ?どこの学部なの?」
「経営学部だ」
目の前のばっちりメイクとネイルをした派手な感じの女の子が話し掛けてくる。
特別人見知りをするわけじゃないが、ちょっと苦手なタイプということもあり、ぶっきらぼうに答えてしまう。
「リナは芸術学部なの。校舎離れてるから、全然交流がないね~」
「そうだな」
リナは色々話し掛けてくるが、俺はほぼ相槌を打つだけだ。
(マジでよく喋るよ、この子)
ほとんど会話になってない俺にここまで話し掛けてくるなんて、鬱陶しいを通り越して凄いコミニュケーションスキルだと感心してしまう。
「お前、もう少し愛想良くしろよ。ゴメンね、リナちゃん。リナちゃんが可愛いから、コイツ緊張しちゃって」
「え~。そんなことないよ」
坂月のフォローしてるんだか、ナンパしてるんだかよくわからない台詞に、彼女も満更ではなさそうだ。
このまま坂月が彼女の相手をしてくれることを祈りつつ、会費分の元を取るために、目の前の焼き鳥に齧り付く。
ビールと焼き鳥の組み合わせ最高、とおっさん臭いことを思っていると、襖が開いて若い男が入ってきた。
「ゴメン、遅くなっちゃった」
「え……」
遅れて来た男と目が合った瞬間、思わず固まってしまった。
呆然としている俺に、男は面白そうに目を細める。
(この人、兄貴のセフレだ)
なんでこんな所で会うんだろう。
もしかして、同じ大学なのか?
「きゃ~!!水津先輩だ」
「ラッキー。今日の合コン、マジで当たり」
一気に女の子達が、あの男の周りを取り囲む。
取り敢えず女の子達の興味があの男に移ったのは良かったが、他の男達は一気に女の子達を掻っ攫われて不満そうだ。
「なぁ、あの人誰?」
隣で微妙な顔をしている坂月に訊いてみる。
「はぁ!?お前、マジで言ってんの?」
「そう言われても、知らないものは知らない」
「経済学部の、一個上の先輩。椎奈先輩と同じくらい学内で有名だぞ」
確かに滅多に見ないくらいの美形だし、男にも女にもモテそうな人だ。
でも学部が違うせいか、今まで見たことがない。
「お前って本当にヤバいくらい鈍いな」
「お前には言われたくない」
あの人のことは気になるが、今まで全く接点がなかった人だ。
今後も関わることはないだろう。
そう思った俺は、目の前のビールと料理に集中することにした。
飲み会の場所は大学の近くの居酒屋で、安いのと夜遅くまで開いているので、いつも満席に近い。
スマホで時間を確認すると、集合の5分前だった。
(アイツ、もう来てるのかな)
坂月が幹事みたいだったから、アイツの名前で予約を取っているはずだ。
店員の女の子に坂月の名前を言ったら、奥の座敷に通された。
「若槻、こっちだ」
席は9割方埋まっていて、俺に気付いた坂月が手招きをする。
男女比は半々くらいで、今日はただの飲み会じゃなくて、合コンだったのかもしれない。
(もっとよく聞いとけば良かったな)
俺はあまり合コンという場が好きじゃない。
みんながそうじゃないことはわかっているが、女の子からグイグイ来られるとついつい引いてしまうし、そういう子はちょっと苦手だ。
今更、後悔しても遅い。
「なぁ、坂月。今日って合コンなのか?」
「あれ?言ってなかったっけ?」
行ってねぇよ!!とツッコんでやりたい。
でもよく考えたら、飲み会に人数なんて関係ない。
そこで気付かなかった俺もかなり馬鹿だ。
目の前には際どい服装の女の子達がいる。
もう、本当に帰りたい。
でも、家には兄貴がいるし、早く帰るのも嫌だ。
どっちを選んでも、微妙だ。
あれこれ思い悩んでいるうちに、合コンがスタートした。
簡単な自己紹介が終わると、みんな好き好きに飲んだり食べたり、目当ての人と話をしたりしている。
「若槻君だっけ?どこの学部なの?」
「経営学部だ」
目の前のばっちりメイクとネイルをした派手な感じの女の子が話し掛けてくる。
特別人見知りをするわけじゃないが、ちょっと苦手なタイプということもあり、ぶっきらぼうに答えてしまう。
「リナは芸術学部なの。校舎離れてるから、全然交流がないね~」
「そうだな」
リナは色々話し掛けてくるが、俺はほぼ相槌を打つだけだ。
(マジでよく喋るよ、この子)
ほとんど会話になってない俺にここまで話し掛けてくるなんて、鬱陶しいを通り越して凄いコミニュケーションスキルだと感心してしまう。
「お前、もう少し愛想良くしろよ。ゴメンね、リナちゃん。リナちゃんが可愛いから、コイツ緊張しちゃって」
「え~。そんなことないよ」
坂月のフォローしてるんだか、ナンパしてるんだかよくわからない台詞に、彼女も満更ではなさそうだ。
このまま坂月が彼女の相手をしてくれることを祈りつつ、会費分の元を取るために、目の前の焼き鳥に齧り付く。
ビールと焼き鳥の組み合わせ最高、とおっさん臭いことを思っていると、襖が開いて若い男が入ってきた。
「ゴメン、遅くなっちゃった」
「え……」
遅れて来た男と目が合った瞬間、思わず固まってしまった。
呆然としている俺に、男は面白そうに目を細める。
(この人、兄貴のセフレだ)
なんでこんな所で会うんだろう。
もしかして、同じ大学なのか?
「きゃ~!!水津先輩だ」
「ラッキー。今日の合コン、マジで当たり」
一気に女の子達が、あの男の周りを取り囲む。
取り敢えず女の子達の興味があの男に移ったのは良かったが、他の男達は一気に女の子達を掻っ攫われて不満そうだ。
「なぁ、あの人誰?」
隣で微妙な顔をしている坂月に訊いてみる。
「はぁ!?お前、マジで言ってんの?」
「そう言われても、知らないものは知らない」
「経済学部の、一個上の先輩。椎奈先輩と同じくらい学内で有名だぞ」
確かに滅多に見ないくらいの美形だし、男にも女にもモテそうな人だ。
でも学部が違うせいか、今まで見たことがない。
「お前って本当にヤバいくらい鈍いな」
「お前には言われたくない」
あの人のことは気になるが、今まで全く接点がなかった人だ。
今後も関わることはないだろう。
そう思った俺は、目の前のビールと料理に集中することにした。
0
お気に入りに追加
132
あなたにおすすめの小説
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい
椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。
その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。
婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!!
婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。
攻めズ
ノーマルなクール王子
ドMぶりっ子
ドS従者
×
Sムーブに悩むツッコミぼっち受け
作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる