ジュエル・キス

椎奈風音

文字の大きさ
上 下
2 / 11
ジュエル・キス

第二話

しおりを挟む
 ……結局、あれから一睡も出来なかった。

 隣は夜明けまで盛り上がっていて、俺より5つも上なくせにどんだけ体力があるんだよと言ってやりたい。
 今日は朝からバイトだ。
 ぼんやりした頭じゃ、仕事にならない。
 とりあえず、シャワーでも浴びて頭をすっきりさせたい。
 そう思ってドアを開けた瞬間、俺は固まった。

「僕、もう帰るね」
「ああ」

 隣の部屋から出てきたのは、兄貴と……男!?
 思わず不躾なほど、マジマジと見てしまい、相手の男と目が合った。
 年は俺と変わらないくらいか、少し上に見える。 
 透き通るほど白い肌と、完璧な美貌。
 相手が男だとわかっていても、つい目がいってしまうほどの美形だ。
 だが、いくら綺麗だと言っても、男は男。
 兄貴のヤツ、節操ないとは思っていたけど、男までオッケーなのか。

「あれ?もしかして、タカの弟?」
 無視することも出来ず、俺は無言で頷いた。
「へ~え。似てないね」
 俺はこの言葉を言われるのが一番嫌いだ。
 ガキの頃から、美形の兄貴と散々比べられてきたからだ。

 ……確かに俺と兄貴は似ていない。
 身長はそこそこ変わらないが、同じ親から生まれたと思えないほど、兄貴の美貌は際立っている。
 俺も一人で立っていればそれなりに見えるが、兄貴の傍にいれば引き立て役にしかならない。
 現に俺の歴代の彼女達は始めは俺に興味を示すが、兄貴に会うと手のひらを返したように見向きもしなくなる。

 兄貴は当然ことながらかなりモテるが、今まで恋人をつくったことがない。
 ただ気まぐれに周りに集まったヤツを摘み食いするだけだ。
 なんで、あんな下半身ケダモノの男がいいんだ?
 ……やっぱり、世の中顔なのか?

 「タカとは雰囲気が違うけど、君もいいね。今度僕とヤッてみる?」
 「はぁ!?」

 何を言ってるんだ?この人は。

 からかわれているのか、マジで言っているのかよくわからないが、こんな美形が兄貴を差し置いて、俺に声をかける筈がない。
 タチの悪い冗談だと思いながらも、下から潤んだ目で見上げられると、ぐらりと理性が揺らぐ。

「どうする?」
 どうするって、どうしようもないだろ?
 元々男子校出身で、周りに男同士のカップルが多かったせいか、同性の恋愛に偏見はないが、一夜限りのセックスの相手に男を選ぼうとは思わない。
 それに相手は兄貴と寝た男だ。
 比べられるのは、目に見えている。

「からかうのはその辺にしておけよ」
 やっぱり、からかわれていただけか……。
 兄貴の台詞に、妙に納得してしまった自分が負けたようで嫌だ。

「ふ~ん。そんな顔したタカなんて、初めて見たね。そんなに大事なら鍵をかけて、誰にも見られない所にしまっておけば?」
「お前に言われるまでもない」
「あっそ」
 気心の知れた関係だからかもしれないが、二人の会話はかなりドライだ。
 人を寝不足にするほど、熱烈に愛し合っていた二人だとは思えない。

 所詮身体だけの関係って、こんなものなのだろうか?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

営業活動

むちむちボディ
BL
取引先の社長と秘密の関係になる話です。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

上司と俺のSM関係

雫@夜更新予定!今日はなし
BL
タイトルの通りです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...