兄ちゃん達の独り言

クリスマスパーティ

第六話

「……なんか、頭痛い」
　身体はだるいし、頭はモヤがかかっているかのようにぼんやりしている。
　起き上がろうとしても、なかなか起き上がれない。
「……っ！？」
　とりあえず、寝返りでも打とうと思い身体を動かすと、春兄ちゃんの顔が目の前にあってビックリした。
「ちょっと、春兄ちゃん！」
　熟睡しているのか、春兄ちゃんは目覚める気配がない。
　身体に春兄ちゃんの長い腕が絡まっていて自力で起き上がるのは不可能だ。

「……おはよう。塔哉」
「あ、暁ちゃん！」
　救いの女神だと思っていた暁ちゃんを見た瞬間、僕は自分の考えが間違っていたことに気付いた。
「……あの、暁ちゃん？」
「なぁに？塔哉」
　何って言われても、そんな冷ややかな笑みを浮かべられると腰が引けるんですけど……。
「暁ちゃん、怒ってる？」
「ん？別に塔哉には怒ってないよ。……塔哉にはね」
「……そう」
　なんか背筋がゾクリときたのは、気のせいだろうか？

「あ、塔哉おはよう」
「昨日は大変だったな……」
　緊迫した空気の中、リビングに現れた双子の兄ちゃん達は、相変わらず空気を読めていなかった。
「ん？暁どうした？」
「……なんか、むかつく光景だったから、どうしてやろうかと」
「……！？」
　暁ちゃんの視線を辿って、ようやく状況を理解した兄ちゃん達が、慌てて暁ちゃんを止めにかかる。
 
「いや、これは不可抗力だろ！」
「……不可抗力だろうがなんだろうが、むかつくものはむかつく」
「お前、多少は押さえろよ。朝から傷害事件なんてごめんだからな」
「……捕まるようなヘマはしない」
「そういう問題か！」
　こんな騒ぎの中、爆睡している春兄ちゃんを見て、何も知らないのは本当に幸せだと思った。