鬼畜な関係

バランス

第二話

　廊下を占領するなと言ってやりたい。
　本当に常識のないヤツらだ。

「夕希、アイツらに関わらない方がいいよ」
　暁がコソッと耳打ちしてくる。
　言われなくても、こんな面倒くさそうなヤツらと関わりたいとは思わない。

「そうだね。暁、行こうか」
　暁を促して、踵を返す。
　食堂のラーメンが食べたかったが、今日は諦めるしかない。

「夕希！」
　売店でパンでも買おうかなと思っていた俺を呼び止める声がした。
（うわ～）
　聞き慣れたその声から逃れたくて、足早にその場を離れようとした瞬間、ぐいっと肩を掴まれた。

「何、逃げてんの？」
　背後から穏やかだが、確実に怒っているのがわかる声がして、俺の背筋が凍りついた。
（こんなことなら、もっと早く逃げておけば良かった！！）
　振り返ると、にっこりと笑みを浮かべている兄貴がいた。
　だが目が全く笑っていない。

（うわ～。めっちゃキレてるよ、兄貴）
　今まで学校で兄貴に会うことは全然なかった。
　だから正直、油断してた。
　クラスさえ違えば、そんなに関わることがないんだと……。

「夕希、これからご飯なの？一緒に行こうぜ」
　兄貴がそう言った瞬間、周りの空気が凍った。
　はっきり言って、こんな大名行列を引き連れて昼ご飯なんか食べたくない。
　周りからの刺すような視線を感じて、俺は頭を抱えた。
　断ったらキレてる兄貴に何をされるかわからないし、頷いても後ろの親衛隊に何をされるかわからない。

（勘弁してよ……）
　俺は泣きたい気分で、その場に立ち竦んだ。