鬼畜な関係

悪魔の片鱗

第二話

「何言ってんの。暁はいいヤツだよ」
「危ないのはアイツ自身じゃなくて……、いや、アイツも危ないっていえば危ないけど。そうじゃなくて……。あ～、こういうのは言葉じゃわからないよな」
　兄貴が自分の髪を掻きむしる。
　混乱している兄貴には悪いけど、益々意味がわからなくなってきたんだけど……？

「まぁ、実践した方がわかりやすいよな」
「え？」
　元々近かった兄貴の顔が、更に近づく。
　次第に兄貴の顔がぼやけてきて、唇と唇が重なる。
「えっ？…ちょっと…！」
　反射的に兄貴を押し退けようとするが、かなりの力で押さえつけられていてそれも出来ない。

「……んっ……」
　微かに開いた唇に、兄貴の舌が入ってきて、舌と舌が絡まる。
　舌が触れるざらりとした感触に、背筋がゾクゾクしてくる。
（一体、なんなんだ？）
　自分の身体の変化に頭がついていかない。

　……っていうか、なんで俺、兄貴にキスされてるの？
　
　唇と唇が離れ、無意識に止めていた息を吐き出した。

「ごちそうさま」
　兄貴が自分の唇を嘗めながら、ニヤリと笑う。
「いきなり、何するんだよ！！」
「何って……。キスだけど」
　悪びれもせずに兄貴が言う。
（そんなこと、わかってるっての！！）
「まぁ、忠告かな。桜花は男子校だから、男でも恋愛対象なんだよね。お前、顔が綺麗だから、襲われないように気を付けろよ」
「は？」
　何を言われているのかわからず、一瞬思考が停止した。

　男が恋愛の対象……？
　そんなの、ありえないだろ！！

「それに結城だって、お前のことを狙ってるかもしれないぞ」
　俺が衝撃の事実に唖然としていると、兄貴が更に追い討ちをかけてきた。
「はぁ？ありえないだろ」
　俺はそれをあっさり否定した。
　暁にそんなそぶりはなかったし、それを言うなら俺の方がよっぽど危ない。
　暁を見て、赤面したりするし……。

　それにいくら男子校っていっても、誰もがゲイってわけじゃないと思う。
　兄貴の考えすぎだって！！
　自分の中で判断をつけた俺は、この話題を頭の中から消し去った。