鬼畜な関係

運命の出会い

第二話

「君、外部入学者だよね。外から来た子は誰でも迷うから気にしないでね」
　俺が少し不機嫌になったのがわかったのか、彼がさり気なくフォローしてくれる。
「ありがとう」
　自然に感謝の言葉が出る。
（本当にいい人だな）
　朝から憂鬱だった気分が浮上していく。

「俺は、佐倉夕希さくらゆき。君の名前を聞いてもいいかな？」
「結城暁ゆうきあきらだよ。よろしく」
　そう言って笑った暁の笑顔に、心臓がドクンと音をたてた。

（……？）
　確かに暁は綺麗だけど、ドキドキするのは明らかにおかしいだろ！！

「入学式が始まるまで、あんまり時間がないからそろそろ行こうか」
　暁が腕時計を見ながら俺を促す。
「ああ」
　俺は大人しく暁の後をついていく。

「夕希、ちょっとヤバイよ！走ろっか」
　校舎が見えてきたくらいで、暁が俺の方を振り向いて、手を掴んだ。
　ただでさえ赤かった俺の顔が、更に赤くなる。
（一体、どうしたんだ？……俺）
　自分の気持ちがわからないまま、暁に腕を引っ張られ、体育館まで走った。


　入学式も無事に終わり、教室へ向かう途中、後ろから声を掛けられ立ち止まった。
「夕希！待って！！」
　振り向くと、走って来たのか息を切らした暁がいた。
「大丈夫？」
　声を掛けると、暁は笑って頷いた。
「どうしたの？」
「教室まで一緒に行こうかなと思って。夕希、何組だった？」
　そのためだけにわざわざ追いかけてくれたと思うと嬉しくなる。

「俺は5組だよ」
「え！？俺と一緒だね。凄い偶然！」
　暁は嬉しそうに笑った。
「これから、よろしく」
「こちらこそ、よろしくね」

　この出会いが俺の運命を大きく変えることになるなんて、この時は考えもしなかった――。