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夢見る視界
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今日はとても清々しい1日だった。
俺はしがないIT会社に勤めている、いたって普通なサラリーマンだ。会社は小さいが自分でしたかった案件を任せてくれるし、上司もマネジメントが上手いから、安心して業務が出来る。さらには、俺が所属しているチームは皆が活気が良くて、休憩時間に軽く談話したり、質問もしやすい空間だ。さらには周りの士気が高い。それならおれも頑張ろうってなるから仕事のやりがいを感じる。後、自慢じゃないが人からの評判も良く、先輩には食事に誘われたり、同期から遊ぶ約束もしたりする。つまり、今の会社では俺は充実しているってことだ。
だが、充実しているのは会社だけじゃない。最近はプライベートでも充実している。運試しに宝くじを買えば2等を当てたり、困ってるおばあさんを助けるとお礼に普通だと手を出しづらい高級メロンをいただいた。他には川で溺れている少女を頑張って助けて町で人気者になったりと、良いことばかりがやってくる。
これも全部夢のお陰だ。ここで何を言ってるのか分からない方が多いだろう。ここで少し説明すると、俺が見る夢は全て正夢になってしまうということだ。これはつい最近から起きたことで、昔にこんなことはなかった。確かに俺のばあちゃんから夢は警告だとよく言われてたが、まさか予知夢みたいな形で本当になっていくなんて思わなかった。だから、俺は夢で見たことをそのまま実行して、夢の通りの良いことを味わえるようになった。
昨日は迷子の犬を偶然見つけて、飼い主に連絡して犬と再開させたな。お礼にお金をもらえたのが嬉しかったな。今日はどんな夢なんだろうか。俺は今日見る夢のことを楽しみにしながら布団に入って目を瞑り、ゆっくりと眠りに入った。
ピピピピピ!
けたたましく目覚ましがなっている。俺はまだ頭の回転が鈍い状態で目覚まし時計を上からバシッと叩いた。それを契機に布団から出る。俺はゆっくりと扉を出て、洗面台がある方へと向かう。洗面台に到着すると、蛇口から水を強く出し、手で水を掬って顔を洗う。ここでふと考える。今日は夢を見なかったことに。
今日の夢はなかった。正確には真っ暗なままだった。大抵は真っ暗な状態から徐々に夢へと入っていくものだったのだが、今日はゆめに入らずにそのまま朝を迎えてしまった。寝る時間はいつもと変わらないし、睡眠時間も7時間は取れるようにしてあった。それで夢を見ない何故だろうか。
俺はトースターで焼いてイチゴジャムを塗った食パンを頬張りながら考える。
もうボーナスタイムは終了してしまったのか?
それとも、たまたま見なかっただけなのか?
朝食を終えた後、手早くスーツに着替えてから会社へと向かった。その道中は夢についての疑問で頭がいっぱいになっていた。
昼前ごろのオフィスの中で俺はパソコンを前にして作業をしていた。ただ、夢のことが頭から離れず、作業に集中することは難しかった。
「センダ君、今日は上の空みたいだけど、大丈夫かね?」
突然、声をかけられてビクッと驚いてしまった。声をかけてきたのは部長だった。俺は部長の顔を見る。気遣っているのが分かりやすい顔をしている。そう、部長はよく周りの社員のことを見ており、何かあれば自ら話を聞きに行くような人だった。だから、俺は頼りやすいため、安心して業務に着手することが出来ている。
「いえ、大丈夫です。お気になさらずに。」
「そうかい? それならいいんだが…。 そうだ、今日は先方のところに行くんだろ? たしか13時頃だったかな? 今は12時前だから、そろそろ準備しないとマズイのではないかい?」
俺は慌てて腕時計を見る。確かにそろそろ針が12時を示そうとしていた。先方の場所は30分程度かかるため、昼食をとってから行くなら急いだ方がいい。
「あぁ、そうでした! 教えていただいてありがとうございます! すぐに準備して行ってきます!」
「気を付けてな。今の君だと事故に遭いそうでかなわんよ。」
「はは、大丈夫ですよ。自分、運は良い方なんで。では、行ってきます!」
「行ってらっしゃい」という言葉が社内で響く。こういうところがこの会社の良いところだと思う。
部長に心配をかけたが、それでも夢のことが頭から離れない。確かにずっと続くものではないなとは思っていた。本来だと夢を見ない日が有っても当たり前のことだ。だけど、何故か気になってしまう。恩恵を受けられないから名残惜しいのかもしれない。だから、無意識にまだ続いてほしいと思っていて、頭から離れないのだろう。
なら、もう夢のことは忘れよう。さすがにこれで仕事にも支障が出てしまっているのは嫌だ。ただ普通に戻っただけじゃないか。ならそれでいいだろう。
なんとか夢のことを吹っ切ろうとしたが、ふと気づいてしまった。実はその夢は仕事のことにも関係があり、過去に先方にシステムの機能を追加することで、さらにお金をもらおうと交渉してみると成功したという夢を見て、実際にやってみると夢の通りに事が進んだことがある。しかも、その夢から今までの夢を辿っていくと、どうも夢で見ている景色から考えると昼ぐらいの時間帯の話が多い。そういえば、このぐらいの
「危ない!」
え?
上から声が聞こえたな。
俺は上を見
ドーン!
ガラガラガラガラ!
キャ~!
おい、救急車を呼べ!
誰か下敷きになってたぞ!?
カシャ、カシャ
ピーポーピーポー
ニュースの時間です。
昨日の昼頃に、東京都○○市で、鉄骨が頭上から降ってきて、男性一名が死亡しました。
男性の名前はセンダ ………………………………………
俺はしがないIT会社に勤めている、いたって普通なサラリーマンだ。会社は小さいが自分でしたかった案件を任せてくれるし、上司もマネジメントが上手いから、安心して業務が出来る。さらには、俺が所属しているチームは皆が活気が良くて、休憩時間に軽く談話したり、質問もしやすい空間だ。さらには周りの士気が高い。それならおれも頑張ろうってなるから仕事のやりがいを感じる。後、自慢じゃないが人からの評判も良く、先輩には食事に誘われたり、同期から遊ぶ約束もしたりする。つまり、今の会社では俺は充実しているってことだ。
だが、充実しているのは会社だけじゃない。最近はプライベートでも充実している。運試しに宝くじを買えば2等を当てたり、困ってるおばあさんを助けるとお礼に普通だと手を出しづらい高級メロンをいただいた。他には川で溺れている少女を頑張って助けて町で人気者になったりと、良いことばかりがやってくる。
これも全部夢のお陰だ。ここで何を言ってるのか分からない方が多いだろう。ここで少し説明すると、俺が見る夢は全て正夢になってしまうということだ。これはつい最近から起きたことで、昔にこんなことはなかった。確かに俺のばあちゃんから夢は警告だとよく言われてたが、まさか予知夢みたいな形で本当になっていくなんて思わなかった。だから、俺は夢で見たことをそのまま実行して、夢の通りの良いことを味わえるようになった。
昨日は迷子の犬を偶然見つけて、飼い主に連絡して犬と再開させたな。お礼にお金をもらえたのが嬉しかったな。今日はどんな夢なんだろうか。俺は今日見る夢のことを楽しみにしながら布団に入って目を瞑り、ゆっくりと眠りに入った。
ピピピピピ!
けたたましく目覚ましがなっている。俺はまだ頭の回転が鈍い状態で目覚まし時計を上からバシッと叩いた。それを契機に布団から出る。俺はゆっくりと扉を出て、洗面台がある方へと向かう。洗面台に到着すると、蛇口から水を強く出し、手で水を掬って顔を洗う。ここでふと考える。今日は夢を見なかったことに。
今日の夢はなかった。正確には真っ暗なままだった。大抵は真っ暗な状態から徐々に夢へと入っていくものだったのだが、今日はゆめに入らずにそのまま朝を迎えてしまった。寝る時間はいつもと変わらないし、睡眠時間も7時間は取れるようにしてあった。それで夢を見ない何故だろうか。
俺はトースターで焼いてイチゴジャムを塗った食パンを頬張りながら考える。
もうボーナスタイムは終了してしまったのか?
それとも、たまたま見なかっただけなのか?
朝食を終えた後、手早くスーツに着替えてから会社へと向かった。その道中は夢についての疑問で頭がいっぱいになっていた。
昼前ごろのオフィスの中で俺はパソコンを前にして作業をしていた。ただ、夢のことが頭から離れず、作業に集中することは難しかった。
「センダ君、今日は上の空みたいだけど、大丈夫かね?」
突然、声をかけられてビクッと驚いてしまった。声をかけてきたのは部長だった。俺は部長の顔を見る。気遣っているのが分かりやすい顔をしている。そう、部長はよく周りの社員のことを見ており、何かあれば自ら話を聞きに行くような人だった。だから、俺は頼りやすいため、安心して業務に着手することが出来ている。
「いえ、大丈夫です。お気になさらずに。」
「そうかい? それならいいんだが…。 そうだ、今日は先方のところに行くんだろ? たしか13時頃だったかな? 今は12時前だから、そろそろ準備しないとマズイのではないかい?」
俺は慌てて腕時計を見る。確かにそろそろ針が12時を示そうとしていた。先方の場所は30分程度かかるため、昼食をとってから行くなら急いだ方がいい。
「あぁ、そうでした! 教えていただいてありがとうございます! すぐに準備して行ってきます!」
「気を付けてな。今の君だと事故に遭いそうでかなわんよ。」
「はは、大丈夫ですよ。自分、運は良い方なんで。では、行ってきます!」
「行ってらっしゃい」という言葉が社内で響く。こういうところがこの会社の良いところだと思う。
部長に心配をかけたが、それでも夢のことが頭から離れない。確かにずっと続くものではないなとは思っていた。本来だと夢を見ない日が有っても当たり前のことだ。だけど、何故か気になってしまう。恩恵を受けられないから名残惜しいのかもしれない。だから、無意識にまだ続いてほしいと思っていて、頭から離れないのだろう。
なら、もう夢のことは忘れよう。さすがにこれで仕事にも支障が出てしまっているのは嫌だ。ただ普通に戻っただけじゃないか。ならそれでいいだろう。
なんとか夢のことを吹っ切ろうとしたが、ふと気づいてしまった。実はその夢は仕事のことにも関係があり、過去に先方にシステムの機能を追加することで、さらにお金をもらおうと交渉してみると成功したという夢を見て、実際にやってみると夢の通りに事が進んだことがある。しかも、その夢から今までの夢を辿っていくと、どうも夢で見ている景色から考えると昼ぐらいの時間帯の話が多い。そういえば、このぐらいの
「危ない!」
え?
上から声が聞こえたな。
俺は上を見
ドーン!
ガラガラガラガラ!
キャ~!
おい、救急車を呼べ!
誰か下敷きになってたぞ!?
カシャ、カシャ
ピーポーピーポー
ニュースの時間です。
昨日の昼頃に、東京都○○市で、鉄骨が頭上から降ってきて、男性一名が死亡しました。
男性の名前はセンダ ………………………………………
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