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とある研究員の軌跡
とある新米研究員が誰かのために決意を固めるまで(1)
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イベントでよくある長机が一つと背もたれがある椅子が二つだけしかない、こじんまりしていて若干の閉塞感がある部屋に二人っきり。
私の前にいる真鍋さんは椅子に座りながら伸びをした。
「う~~ん、と……。とりあえずレポートはこんなものですかね。反応としては少ないですからどういう生物かの解明には繋がりませんが、10号のことがある程度ですけど分かるぐらいにはなりましたね」
私も真鍋さんと同じく伸びをしてから小さく頷く。
「真鍋さん、お疲れ様です。資料室から始まって、結構疲れちゃいましたね」
そう、初めの方は反応が似ている動物がいるかどうかを調べるために資料室に行ってはいたけど、情報がある程度集まってからは話す機会が多くなるので、途中から面談室に移動していた。そこからは飲み物を取りに行ったり、催してしまったりした以外はずっと椅子に座りっぱなしだったので、体が凝り固まってしまっていた。
真鍋さんは改めてレポートに目を通している。私はしばらく気を抜いて真鍋さんを眺めていると、真鍋さんは唐突に口を開いた。
「反応としては他の野生生物に近くて、言語は喋れないと……。他には真っ先に人を襲わないことから、通常状態であれば人を食らう、殺害するという行為は取らない。また、威嚇を行うことから状況判断が出来る知能は持ち合わせている可能性があると……。これらを見た限りだと、8号と違って生物を殺すことを目的とはしていないみたいですね。それだけでもリーダーが提案した実験は良い収穫だと思いますよ。今までは人間を直接合わせること事体がここの研究所内でタブーになってきていましたからね。そういう実験は危ないですけど大切です」
私は突然に褒められて嬉しくなった。初めての私がリーダーとして提案したものが何かを成し遂げたと考えると、私だってリーダーとして何か出来るんだと幾ばくかの自信が湧いてきた。
そういえば、真鍋さんの口から出た言葉で一つ気になることがあったな。
私は自分の気持ちを切り替えて、その気になることについて真鍋さんに聞いてみた。
「そのタブーというのは【ハンター】の脱走事件のことですよね? 会うのは確かに危ないですけど、一方的に襲われないということがあれば、まだ交流出来る余地は有りそうですよね」
「え? もしかしてリーダー、10号と仲良くなろうとしていませんか?」
真鍋さんの顔がさっきまで明るかったのに、急に明るさが消えた。私はいきなりのことで驚いたが、試しに真鍋さんに聞いてみた。
「あの、仲良くなろうとするのに何か問題はありますか?」
真鍋さんの顔が少し歪んだのを感じた。おそらくあまり好ましいことではないのだろう。そんなことを考えている間に真鍋さんはフゥっと一息吐いた。
「あのですね、確かに今までで未確認生物と仲良くなろうとしている人はいましたよ。でも人型で知能を持つ相手は危険です。頭の中では何を考えているか分からないですし。他の研究の記録で見ていたのなら申し訳ないんですけど、4号にさっきの似たような例があるんですよ」
真鍋さんの話し方には気合を感じた。これは本気だと言うことが伝わる。
「4号は妖精の姿をしてて私達に友好的ですけど、そんな生物でも時折人の命を奪うような【イタズラ】という名の殺人も何の躊躇いも一切なくやってしまうんですよ。……まあ、4号を一つの例として挙げましたが、他にも人型のはいますし、直接会っての研究、実験、はたまた未確認生物との協力については時々悪い事例として書かれていることがあるんです。この時点で迂闊に収容室に飛び込むもんじゃないことは証明されてるようなもんなんですよ」
「4号の話は聞いたことがあります。飛ばす鱗粉の効能を変えられるらしいですね。たまたま目に止まった記録だと、通常の鱗粉を採取する予定だったけども、4号から出た鱗粉が強酸性に変わっていて、皮膚への直接的な付着を防ぐために用意した防護服が鱗粉の酸性が強すぎて溶けてしまったとか。基は薬に使える物質が鱗粉にはあるけども、血の巡りを変えて酸性へと変質させるんでしたね。私たちが普段見る生物では似たような芸当が出来るのなんて聞いたことがありませんが」
「そうなんですよ! 元から体内にある袋上のもので生成していたり、元から毒性がある分泌液を捻出しているということなら、スカンクにもありますし、カエルだってあります! でも、元々の物質が別のものに変質しているんですよ! こんなの普通気づくわけなんてないじゃないですか! まるで隠し持っていたかのようにやってきますからね。だから知能を持つ相手と接触を計るのは危険なんです。どうなるか分かりませんから」
真鍋さんのあまりの勢いに呆気を取られて途中から何も言えずにただ話しを聞くことしかできなかった。
私の前にいる真鍋さんは椅子に座りながら伸びをした。
「う~~ん、と……。とりあえずレポートはこんなものですかね。反応としては少ないですからどういう生物かの解明には繋がりませんが、10号のことがある程度ですけど分かるぐらいにはなりましたね」
私も真鍋さんと同じく伸びをしてから小さく頷く。
「真鍋さん、お疲れ様です。資料室から始まって、結構疲れちゃいましたね」
そう、初めの方は反応が似ている動物がいるかどうかを調べるために資料室に行ってはいたけど、情報がある程度集まってからは話す機会が多くなるので、途中から面談室に移動していた。そこからは飲み物を取りに行ったり、催してしまったりした以外はずっと椅子に座りっぱなしだったので、体が凝り固まってしまっていた。
真鍋さんは改めてレポートに目を通している。私はしばらく気を抜いて真鍋さんを眺めていると、真鍋さんは唐突に口を開いた。
「反応としては他の野生生物に近くて、言語は喋れないと……。他には真っ先に人を襲わないことから、通常状態であれば人を食らう、殺害するという行為は取らない。また、威嚇を行うことから状況判断が出来る知能は持ち合わせている可能性があると……。これらを見た限りだと、8号と違って生物を殺すことを目的とはしていないみたいですね。それだけでもリーダーが提案した実験は良い収穫だと思いますよ。今までは人間を直接合わせること事体がここの研究所内でタブーになってきていましたからね。そういう実験は危ないですけど大切です」
私は突然に褒められて嬉しくなった。初めての私がリーダーとして提案したものが何かを成し遂げたと考えると、私だってリーダーとして何か出来るんだと幾ばくかの自信が湧いてきた。
そういえば、真鍋さんの口から出た言葉で一つ気になることがあったな。
私は自分の気持ちを切り替えて、その気になることについて真鍋さんに聞いてみた。
「そのタブーというのは【ハンター】の脱走事件のことですよね? 会うのは確かに危ないですけど、一方的に襲われないということがあれば、まだ交流出来る余地は有りそうですよね」
「え? もしかしてリーダー、10号と仲良くなろうとしていませんか?」
真鍋さんの顔がさっきまで明るかったのに、急に明るさが消えた。私はいきなりのことで驚いたが、試しに真鍋さんに聞いてみた。
「あの、仲良くなろうとするのに何か問題はありますか?」
真鍋さんの顔が少し歪んだのを感じた。おそらくあまり好ましいことではないのだろう。そんなことを考えている間に真鍋さんはフゥっと一息吐いた。
「あのですね、確かに今までで未確認生物と仲良くなろうとしている人はいましたよ。でも人型で知能を持つ相手は危険です。頭の中では何を考えているか分からないですし。他の研究の記録で見ていたのなら申し訳ないんですけど、4号にさっきの似たような例があるんですよ」
真鍋さんの話し方には気合を感じた。これは本気だと言うことが伝わる。
「4号は妖精の姿をしてて私達に友好的ですけど、そんな生物でも時折人の命を奪うような【イタズラ】という名の殺人も何の躊躇いも一切なくやってしまうんですよ。……まあ、4号を一つの例として挙げましたが、他にも人型のはいますし、直接会っての研究、実験、はたまた未確認生物との協力については時々悪い事例として書かれていることがあるんです。この時点で迂闊に収容室に飛び込むもんじゃないことは証明されてるようなもんなんですよ」
「4号の話は聞いたことがあります。飛ばす鱗粉の効能を変えられるらしいですね。たまたま目に止まった記録だと、通常の鱗粉を採取する予定だったけども、4号から出た鱗粉が強酸性に変わっていて、皮膚への直接的な付着を防ぐために用意した防護服が鱗粉の酸性が強すぎて溶けてしまったとか。基は薬に使える物質が鱗粉にはあるけども、血の巡りを変えて酸性へと変質させるんでしたね。私たちが普段見る生物では似たような芸当が出来るのなんて聞いたことがありませんが」
「そうなんですよ! 元から体内にある袋上のもので生成していたり、元から毒性がある分泌液を捻出しているということなら、スカンクにもありますし、カエルだってあります! でも、元々の物質が別のものに変質しているんですよ! こんなの普通気づくわけなんてないじゃないですか! まるで隠し持っていたかのようにやってきますからね。だから知能を持つ相手と接触を計るのは危険なんです。どうなるか分かりませんから」
真鍋さんのあまりの勢いに呆気を取られて途中から何も言えずにただ話しを聞くことしかできなかった。
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