上 下
10 / 61
精霊王救出編

私の娘 (父の視点)

しおりを挟む
私の娘って凄いかもしれない…いや、凄いなんて言葉では言い表せない。娘は天才?


「……私の娘はやっぱり天才かもしれない」

「ふふふ、そうねえ。あんなに堂々としてあなたに力を貸してほしいって言うなんて、本当に成長したわ。」


何気なく口をついた言葉だったが妻のヘザーから言葉が返ってきた。

どうしてこんなことを考えているかって?それは、娘の意識が戻って久しぶりの食事だから楽しみにしてたのに、そこに娘がとんでもない爆弾を落としてきたからだ。楽しかったけどね?
だって考えてみてくれ、今まで賢くも甘え上手なところもある可愛い娘。少しお転婆おてんばな面もあって息子のオリバーと隠れて剣を振り回すようなところもあるが、そんなところも愛しい娘…

なのに、なのに…!娘の右手の小指に知らない指輪が!!

……いや、ごほん。それもたしかに気になっていたが、それも関係しているが!
それよりももっと予想外の話だったんだよ……


少し先程の話を思い出してみようか。



私は、リアを魔法の適性検査のために王都に連れていく時、確かに思っていた、思っていたさ!リアに魔法を解禁したら魔法も天才的な才能で驚かしてくるって!
でもさ、、実際はもっととんでもない才能を持っていたみたいだった。考えてみてくれ。精霊を見て、声を聞けるだけでなく意思疎通できて、すでに契約もしている。それに、そもそもリアは水属性を持っていないから水の上位精霊である氷の精霊と契約できるはずはない。
しかし、氷の精霊と契約していた。驚くなという方がおかしいと思わないか?凄いとは思っているが、そんなおとぎ話のような才能を持っているとはさすがに予想できないだろう??

まず前提としても驚くところだが、この国、いや世界を探しても精霊を見て、個体を識別し、適正ではない属性の精霊と契約をしている人なんていないだろう。聞いたことも無い。
しかし、過去には文献やおとぎ話の中で記され語り継がれているが、精霊使いと言われる自分の属性を問わず精霊と契約し、共に世界を救ったという歴史がある。自分の持つ属性以外とは契約できないとされる中での話なので、もしできていたとしても信じられないだろう。

でもこの文献のことを知っていたからこそ娘のことも理解することができた。リアは精霊使いなのだろうと…
しかし、娘は、個体を識別し、意思疎通もとれると言っていた。

私たち人族は、精霊の本当の姿を見ることも声をきくことも出来ないはずだ。これは、精霊が自分たち人族より超越した存在であると言われているからである。
精霊は世界の生命エネルギーから生まれたと考えられており、エネルギーから生まれているからか、生物と言うよりもそれぞれ強大な力を持った思念体とされる。そのため、精霊に死という概念はなく、世界を構成する要素のひとつとして考えている。

しかし、人族の中でも一部の人は精霊と言われるものの姿を光として認識することが出来た。
つまり私たち貴族の事である。見えるようになる条件はまだ解明されていないが遺伝性があるらしく、初めはごく少数だったはずが見える人間が王となり、国が発展して行ったことで現在では貴族の大体は見えているのではないかと思われる。そして、この見えるということは、貴族の素質とされる程に重要視されている。

それもそのはず、いくら属性の適性を持っていたとしても精霊を見ることが出来なければ契約できないからである。そして、見れる側の人族は自分の持つ属性と合う色の光を放つ精霊と契約する。例えば、火属性は赤色い光、水属性は水色の光、風属性は緑色の光、土属性は茶色の光、光属性は黄色の光、闇属性は紫色の光というふうに、属性によって光の色が違うから、合わせて契約することになる。
そして、この六属性のうち、水属性との親和性が高ければ氷属性の精霊と契約できるというように親和性によって派生してくる属性もあるため自分の属性の親和性を上げようとするものも多い。

考えてみたけどやはりそうだ…!精霊の個体を識別し、意思疎通をとるだけでなく、親和性をあげることなく自分の属性以外の精霊と契約したという娘の凄さ!やっぱり私の娘は天才なんだ!


しかし、精霊が見えなくても、精霊と契約しなくても力を使える方法があった。そこが今回の原因だろう。契約しなくても力を使える方法は精霊を封印して力を一方的に絞り出していく方法なのだから…
この方法が知られ始めたのは最近のことでまだ貴族にしか広まっていないだろう。突然封印石が出回るようになったからな。だから精霊を封印して力を使うことの危険性についてはまだ考えられていない。しかし、リアの話によると精霊の封印によって世界が崩壊する危険があると言うことが判明した。

リアの言葉からすると、現在精霊王が封印されているということによって王が保っていた世界の均衡が崩れ始めているということだろう。そして、精霊王が居ないままだと10年後には世界が崩壊する。と…
だから、世界を救うためには精霊王を救出する必要があるから力が欲しいと、探すのを手伝って欲しいとリアは私に頼んできたんだ!

リアは天才だけではなく、みんなを救いたいという優しい心も兼ね揃えていたのだ。


もしもこの話をしたのがリアではなかったら信じていなかった。しかし、私の娘は可愛いし天才だし、嘘をつくわけないし、頼み事をされたら断れるわけが無い。

私は、可愛い娘のため、家族のため、領民のために頑張ることにしよう。


とりあえず娘から話を聞いた私は、話を一緒に聞いていた妻のヘザーと、息子のオリバーに他では話してはいけないということを約束させ、話を終了とした。

私はまず何から手をつけるべきなんだろうね?



しおりを挟む
1 / 3

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

猫扱いされても生きていたい。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:57

御伽噺に導かれ異世界へ

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:87

ハコブネ ~天才達が転生した舟~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:4

処理中です...