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精霊王救出編

夢の世界 Part2

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目が覚めると見覚えのない景色が広がっていた。

お分かりの人もいるかもしれないが、私の目の前に広がっているのはよくある天蓋付きのベッドである。
このよくあると言うのは転生モノの小説のよくあることであって、私がいたはずの現実世界としてはあり得ないモノである。
もちろん私は天蓋付きのベッドで寝起きしたことはない。

そして、前の世界で死んだ覚えもない。

そういえば夢の中であったあの綺麗な女性。えっとハルモニア?だったかな。その人が氷の世界で何かしてほしいとか言ってたけど、よく聞こえなかった。
多分氷の世界を救ってほしいっていう内容な気もするけど。それは小説の読みすぎだろうし…
もしかしたら、また会えるかもしれないし今は置いておこう。
今も夢の続きみたいだし??


部屋の中を見回してみる。
ベッドの近くにドレッサーがあり、他には扉が3つ…

やっぱり私のよく知る部屋ではない。
これは、まだ夢の中に違いない!ということで夢第二弾!開始だー!


えっと、今はどんな夢にいるんだろう…?
ちょっと鏡見ようかな?

とりあえず自分の姿から確認が定番よね!


近くにあるドレッサーまで歩こうと思ってベッドから降りようとした。しかし、そこで異変に気づいた。
足が小さい…ついでに手を見てみると、やっぱり手も小さい。ついでに視界に入っている髪の毛も確認してみる。髪の毛は黒い、いつもと同じ色。だけどいつもより長い。

今度こそドレッサーに近づき鏡を見てみる。
すると腰まで伸びたふわふわの長い黒髪、ぱっちりした赤みがかったピンク色の瞳を持つ8歳くらいの女の子がいた。
もちろん見覚えはない。しかし、誰が見ても可愛いと思えると思う。何だか癒される気がする容姿である。


うわぁ、可愛い女の子になってる~!!
夢だからかな?これが私!?


自分の夢の中の姿を満喫してから、お約束ではそろそろメイドが部屋にやってくる頃だと思うんだけど…メイドは来ない。
もちろん、外も明るくなっている。
えー、夢ならお約束を忠実に再現してほしいなぁ!せっかくの機会なのにー。


私はこの体の持ち主のことを何も知らない。
もちろん、この場所のことも何も知らない。

だから、夢の中ってこともあるけど、勝手に家を探検してみようと思う。





ということで、まずはドレッサー近くの扉を開けてみる。中は衣装部屋だった。ドレスやリボン、靴に帽子などいろんなものが部屋いっぱいに置かれている。
今の格好は白いワンピースと、ベッド横に並べてあったスリッパだけである。着替えたくても複雑そうな服しか見えないのでこのままのワンピースのまま、白いレースのついた靴下と黒いベルト付きの靴を見つけたので履き替える。そして、部屋着だと恥ずかしいのでストールのようなものを羽織る。


というか、夢の中にしてはとてもリアルだ。


気になるけど考えても答えも出ないことなので、一旦、さっき入った扉からベッドルームに戻る。
やはり、誰も入った様子はないのでもう一つの扉を開けてみる。

この扉はトイレとお風呂に通じる扉だった。この世界にはトイレットペーパーがあり水洗トイレらしい。もちろんお風呂も蛇口をひねるタイプである。
やはり夢らしく現代日本同じく住みやすい仕様になっている。


次の部屋は勉強部屋だった。多分勉強机の上にはインク壺と羽ペンが置いてある。あと本棚、テーブルとソファーが置いてあった。もちろん人はいない。勉強机にあった机の引き出しを開けてみると本が2冊出てきた。扉を開ける前に机の上にあった本を開いてみる。これは日本語じゃないけど字は読める。一冊は日記帳でもう一冊は魔法の本だった。

人の気配もないので、とりあえず日記帳を読んでみる。

王国暦298年9月21日、8歳になる誕生日ということで明日魔法の適正診断のため初めて神殿に行くことになりました。お父様とお母様、お兄様も一緒に王都に行くのでとても楽しみです。


日記はこの日で終わっている。
魔法の適正診断をした日に何かあったのかもしれない…
あと、メイドが来ないし、いじめられてるのかと思ったけど家族の仲は良いのかも?


続いて魔法の本も開いてみる。

使われている魔法陣はなんと日本語だった。意味が具現化するようである。

なんと、夢らしいご都合主義が出ましたー!
とても優しい世界です!


本によると頭の中で魔法陣をイメージするか、書き込んだものに魔力を流すことで発動するようである。
詠唱の必要はない!ここ大事!夢の中でも恥ずかしい詠唱をせずに魔法が使えるなんて最高!

魔力の流し方を練習する方法は書いていないが小説ではよく血液に例えているから試してみる。


心臓から出て全身を回ってまた心臓に戻る…また心臓から出て全身を回って心臓に戻る…


暖かい何かが血液と一緒に流れてる気がする!
これが魔力のはずだから、このまま初級魔術の「明」と書かれた魔法陣に手を置いて流し込んでみる。
すると目の前に5センチくらいの光の球が現れ、周囲を照らした。


おおー!これが魔法!私が夢の中であっても魔法使える日が来るなんて!!
この幸せ、続いてほしい…

というか、この子供の体、飲み込みが早すぎない!?こんなに簡単に魔力見つけたり、動かせたり、魔法を発動できるものなの??
これも夢だからしょうがない?


本を読んでも人が来来る気配もない夢の世界に、少し不満も覚えるがとりあえず勉強部屋から廊下に続くであろう扉を開けてみる。
しかし、やはり誰もいないかった。

夢なのに、私の思ったように進まないらしい。
それとも、人を想像できないくらい想像力がないのか!?魔法はできたのにな!


まだこの夢の世界第二弾では自分以外の人を見ていない。
こんなに時間がたっても人の気配がしないなんて本当に自分以外いない可能性もある。
でも、魔法が使えるようになったし、もしかしたら違う場所に人がいるかもしれない。

人に会えることを願って廊下を進もう…


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