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第七章
解呪の儀式
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「せっかく魔物を退けたのですから、すぐにでも目的を果たして帰るとしましょう」
「そうね。特にあの女は精霊か何かの類だろうし、復活する可能性があるわ」
「突然出たり消えたりだもんなあ」
「……それなら……急ごう……」
「じゃあアロイスさん、お願いするです」
アロイスは仲間に従うように頷いて、今度こそ瓶に天賦の恵水を汲み入れた。
水は澄み渡っていて、太陽の光を受けるとキラキラと輝いて美しい。まるで光の玉が水に溶け込んでいるかのようで、知識のない人間が見ても、まさに聖水という言葉を思い浮かべるだろう。
「それで……呪いは……」
「この水があれば解けると思うです。水に祈りを捧げて捻じ曲げられた力の流れを元に戻すですよ」
「カイネちゃんができると言うなら心配ないわね。早いとこ帰りましょう」
「賛成だ。軽装備だとどうも落ち着かねえんだよな」
帰りも当然川を渡って帰らなければならず、やはり時間はかかってしまうが、同じ手順で安全に渡り切ることができる。
そこからの湿地の道もマデリエネの完成した地図のおかげで迷うことなく帰ることができた。
来たときと同じように、一旦カルムの街へと帰ってから、豪傑の虎亭経由でジェルグの村へとそのまま進む。
早めに起きてハーメルム湿地の探索を始めたおかげで、ギリギリだが夕暮れ時には村に着いた。
そろそろ呪いの効果が発動してしまう時間ということもあって、冒険者たちは急ぎ足で村長の家に向かう。
村長自ら、責任持って彼女の様子を見守るという提言を残していた。つまり彼女は今村長の家にいるはずなのだ。
家に入って見てみれば、村長はちょうど、ネックレスをつけてあげて、眠りの魔法がきちんと機能しているかを確認しているところだった。
床に就いている女性の方は苦しむ様子もなく安らか。安心したアロイスは輝く水の瓶を取り出して、カイネにそれを手渡した。
アロイスでも解呪はできるが、カイネは闇を祓う聖句を唱えることのできる神官だ。しかも操原魔法の実力に限ってはアロイスよりも上。ここはカイネに譲った。
神殿に聖句のことは話していないが、神官としての力があることは証明してくれるとのことで、カイネは胸に聖印を提げている。
その彼女は解呪についても多くの知識を持っていて、手早く魔法円を床に描くと、冒険者の店に保管しておいた道具を小さな祭壇に並べていく。
火の象徴として魔法の棒を。風の象徴には短剣、地の象徴には六芒星が描かれた円盤、ペンタクルだ。そして最後には水の象徴、杯が祭壇の上に静かに置かれる。
その中には、苦労して入手してきた天賦の恵水が注がれていた。
準備ができたら彼女はお香を焚いて蝋燭に火を灯す。こうして、あらゆる準備の末に儀式が始まった。
さっそくカイネは聖水に祈りを捧げて、女性にかけられた悪しき力に意識を集中させる。それぞれの象徴物とカイネの祈りが、歪んだ力の流れをほぐして自然な形へと導いていく。
癒しの象徴でもある杯の水は、儀式の佳境で一段と強く輝き、邪悪な意志を打ち祓った。
呪いの力となる怨恨は、これで完全に消し去られる。カイネが蝋燭の火を消すのを合図に、解呪の儀式が終わりを告げた。
別室で待っていた他の冒険者と村長を呼んで、いよいよ女性の眠りのペンダントを取るときがやってくる。
「大丈夫だと思ってても何か不安になるな」
「呪いが食人なんていうとんでもない行為に走らせるものだものね。でも大丈夫よ。万が一にでも呪いが消し切れていなかったら、そのときにはまた別の案を考えましょう」
一番機敏なマデリエネがネックレスをそっと取って女性を起こす。そうして警戒しながら観察していると……女性はただ体を起こして何ともないですと即座に状況を把握したようだった。
解呪は大成功。この点は問題なかったが、まだ懸念するべきことがある。それは彼女に呪いをかけた魔法使いの存在だ。
カイネにさえ解呪できない呪いともなると、その強大過ぎる力だけで尻尾を掴むのも難しくないかもしれないと思えるほどだ。
とはいえ具体的にどうやって手がかりを掴もうかと相談しているとき、村長の家の戸がそっと開けられて、一人の村人が入ってくる。
彼は村長に加えて冒険者たちがいるのを見て少し安心したようで、落ち着いたようにヒソヒソと話した。どうやら暗くなってきた村の中心部に怪しげな男が立っているのが見えたらしい。
他の村人の誰かと見間違えた可能性もあるが、伝えに来た村人の話ではただ立っているだけで何かしている様子もなかったそうだ。
全員が何か良くないもの感じる。冒険者たちはとにかく、魔法とランタンの灯りを用意して村の中心部に赴いた。
「そうね。特にあの女は精霊か何かの類だろうし、復活する可能性があるわ」
「突然出たり消えたりだもんなあ」
「……それなら……急ごう……」
「じゃあアロイスさん、お願いするです」
アロイスは仲間に従うように頷いて、今度こそ瓶に天賦の恵水を汲み入れた。
水は澄み渡っていて、太陽の光を受けるとキラキラと輝いて美しい。まるで光の玉が水に溶け込んでいるかのようで、知識のない人間が見ても、まさに聖水という言葉を思い浮かべるだろう。
「それで……呪いは……」
「この水があれば解けると思うです。水に祈りを捧げて捻じ曲げられた力の流れを元に戻すですよ」
「カイネちゃんができると言うなら心配ないわね。早いとこ帰りましょう」
「賛成だ。軽装備だとどうも落ち着かねえんだよな」
帰りも当然川を渡って帰らなければならず、やはり時間はかかってしまうが、同じ手順で安全に渡り切ることができる。
そこからの湿地の道もマデリエネの完成した地図のおかげで迷うことなく帰ることができた。
来たときと同じように、一旦カルムの街へと帰ってから、豪傑の虎亭経由でジェルグの村へとそのまま進む。
早めに起きてハーメルム湿地の探索を始めたおかげで、ギリギリだが夕暮れ時には村に着いた。
そろそろ呪いの効果が発動してしまう時間ということもあって、冒険者たちは急ぎ足で村長の家に向かう。
村長自ら、責任持って彼女の様子を見守るという提言を残していた。つまり彼女は今村長の家にいるはずなのだ。
家に入って見てみれば、村長はちょうど、ネックレスをつけてあげて、眠りの魔法がきちんと機能しているかを確認しているところだった。
床に就いている女性の方は苦しむ様子もなく安らか。安心したアロイスは輝く水の瓶を取り出して、カイネにそれを手渡した。
アロイスでも解呪はできるが、カイネは闇を祓う聖句を唱えることのできる神官だ。しかも操原魔法の実力に限ってはアロイスよりも上。ここはカイネに譲った。
神殿に聖句のことは話していないが、神官としての力があることは証明してくれるとのことで、カイネは胸に聖印を提げている。
その彼女は解呪についても多くの知識を持っていて、手早く魔法円を床に描くと、冒険者の店に保管しておいた道具を小さな祭壇に並べていく。
火の象徴として魔法の棒を。風の象徴には短剣、地の象徴には六芒星が描かれた円盤、ペンタクルだ。そして最後には水の象徴、杯が祭壇の上に静かに置かれる。
その中には、苦労して入手してきた天賦の恵水が注がれていた。
準備ができたら彼女はお香を焚いて蝋燭に火を灯す。こうして、あらゆる準備の末に儀式が始まった。
さっそくカイネは聖水に祈りを捧げて、女性にかけられた悪しき力に意識を集中させる。それぞれの象徴物とカイネの祈りが、歪んだ力の流れをほぐして自然な形へと導いていく。
癒しの象徴でもある杯の水は、儀式の佳境で一段と強く輝き、邪悪な意志を打ち祓った。
呪いの力となる怨恨は、これで完全に消し去られる。カイネが蝋燭の火を消すのを合図に、解呪の儀式が終わりを告げた。
別室で待っていた他の冒険者と村長を呼んで、いよいよ女性の眠りのペンダントを取るときがやってくる。
「大丈夫だと思ってても何か不安になるな」
「呪いが食人なんていうとんでもない行為に走らせるものだものね。でも大丈夫よ。万が一にでも呪いが消し切れていなかったら、そのときにはまた別の案を考えましょう」
一番機敏なマデリエネがネックレスをそっと取って女性を起こす。そうして警戒しながら観察していると……女性はただ体を起こして何ともないですと即座に状況を把握したようだった。
解呪は大成功。この点は問題なかったが、まだ懸念するべきことがある。それは彼女に呪いをかけた魔法使いの存在だ。
カイネにさえ解呪できない呪いともなると、その強大過ぎる力だけで尻尾を掴むのも難しくないかもしれないと思えるほどだ。
とはいえ具体的にどうやって手がかりを掴もうかと相談しているとき、村長の家の戸がそっと開けられて、一人の村人が入ってくる。
彼は村長に加えて冒険者たちがいるのを見て少し安心したようで、落ち着いたようにヒソヒソと話した。どうやら暗くなってきた村の中心部に怪しげな男が立っているのが見えたらしい。
他の村人の誰かと見間違えた可能性もあるが、伝えに来た村人の話ではただ立っているだけで何かしている様子もなかったそうだ。
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