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第七章
呪われの村
しおりを挟むそれから数か月後の某日、ストレンジが技能検定試験に出かけているときにミアは定期的に来るいつもの自分宛の手紙を待ちきれずに読んでいた。
いつもその手紙を読めばぼんやりとしてしまうし、それを嬉しく思っていた。
ところが今日はそういうわけにはいかないらしい。彼女宛以外に届いていた手紙の中に、至急応援求むの文字が見える。
普通はこんな形で手紙が来ることなど滅多にない。依頼の話ならギルドを通すのが一般的なのだ。
これは何かよからぬことがあったのだとミアでもわかる。ファムにいち早くその手紙を渡すと、彼は目つきを変えて当然のごとく封を開けて手紙を読んだ。
これは良くないねと彼がボソリと言うのが聞こえてしまったミアだが、この店には非凡な能力を持つ冒険者がいることを彼女は知っている。
きっと大丈夫とミアはそう自らに言い聞かせて、愛しい人からの手紙を溢れんばかりの木の箱へと大切にしまうのだった。
試験を終えて帰ってくる冒険者たちに、早速手紙の内容を伝えるファム。その内容に特に衝撃を受けるのは三人だ。
「また事件か。つくづくあの村は大変だな」
「ええ。またアンデッド絡みでしょうか」
「もしかしてジェルグの村って呪われてたりする?」
こらこらとファムがマデリエネに目線を送ると、だってといいたげな表情が返ってくる。
カイネは前にも事件があったですかと大げさに聞いて、そのやりとりをとにかくごまかした。彼女は平和主義なのだ。
「そういえばカイネさんがパーティの一員になる前の話でしたね。私たちは以前、ジェルグの村で起きた悲しい事件を解決したことがあるんです」
「母親と一緒に飢えて死んじまったライナスって子がアンデッドになって村に現れたんだよな」
「その年は不作だったから村全体で食料が枯渇していたの。それで彼ら親子には誰も食べ物を分けてあげられなかったのよね」
「それは痛ましい事件だったですね……。せっかく悲しい事件を終わらせたのに、また新しい事件が起きたですか……」
「また……解決するしか……ない……。それしか……できない……」
「ゲルセルさんの言うとおり、被害が少なくなるように解決することが、冒険者の私たちにできるせめてものことですね」
「そうなればすぐにでも話を聞きに行こうぜ。悲しい事件は早く決着を着けてやろう」
そうして久々にやってきたジェルグの村だが、初めて訪れたときと同じく、村全体が閑散としている。
今回は事件が起きたということを知っているため驚きはしないが。
迷うことなく村長の家に行くと、会議がちょうど終わったらしく、村人たちがはけていくところだった。特徴的な女村長は三人を見て懐かしみ、新たに加わった仲間にもよくぞ参ったなと声をかけてくれる。
それから手紙だけでは説明し足りない部分も含めて、事件の概要を香ばしい香りのお茶と共に説明してくれた。
その内容はもちろん悲惨や悲惨、またしても夜、人が殺されたのだ。
被害者は背の低い男で妻子はいないが真面目で、コツコツと作業を進めるような勤勉さのある人だったらしい。
事件が公になった理由の血痕は、あのナンシーとライナス親子の家に続いていて、そこに殆ど骨だけになっていた男の遺体があったそうだ。その夜に悲鳴や物音を聞いたものはおらず、悲劇が繰り返されたと思う村人も少なくないとの話だった。
「心残りがまだ残っていたですかね?」
カイネが問うのに、事件を解決した三人は首を傾げる。
「そうじゃねえと思いたいがな……」
「今度はお母さんの方が出てきたとか? もしそうだったら、あのときの対応が良くなかったのでしょうね」
「一度この世を離れた魂が舞い戻ってくるという例は聞いたことがありませんね。私は前の事件を盾にした人間の仕業の線が濃いと思います」
「もっと情報を……集めて……からだ……」
「それがよかろう。前回と同じく、空いている部屋を使ってくれ構わんからな。報酬は……そうじゃな……」
村長が派手な髪飾りを挿し直すのに、アロイスは優しげに制止の声をかけた。
「財政が厳しいのはよくわかっていますから、控えめで構いませんよ」
「すまぬな。できるだけ出すことは約束しよう。それでは、よろしく頼むぞ諸君」
こうして、再び起きた不穏な事件の捜査が始まった。
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