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水の祭典
不快な再会
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それなりの距離を歩いたら頭を休めるために岩陰に隠れて【邪悪なる守り】の方を解除して頭を休める。一つだけならそんなに集中は必要ないので、片方解除すれば十分だ。
それを繰り返して進むと、どんどん見える景色は高くなってきて、坂も急になってくる。上に行けばいくほど段々と高い木から低木へ、さらには黄色い小さな花が咲くような広い原っぱの丘になっていく。依然として水の流れる音は聞こえ、傍には小川がチョロチョロと流れている。
吹き付ける風も冷たくなってきて、かなり標高が高くなってきたのを肌で感じた。そんな景色を楽しみながら登っていると、遠くの方に数人の人影が見えた。【闇の感知】にもバッチリと反応しているので、三人だということが分かる。
彼らは山の別の側面から登り始めたようで、ワイワイ話しながら頂上を目指しているようだ。特に話しかける必要も感じなかったのでそのまま進んでいたが、やがて向こうの人たちが俺たちの存在に気付いたらしくこっちに近付いてきた。
それぞれ鎧を着こんだ男たちで、槍、大鎌、大剣とそれぞれの武器を帯びている。槍の男は紫の髪をバサリと後ろに流した長身の男で、冷淡な印象だが、話の内容が面白いのか口の端だけで笑っている。
大鎌の男は少々小柄だが自分の身長よりも大きな鎌を持っており、黒いローブを鎧の上に羽織っている。雰囲気から察するに死神を模しているようだ。そして恐らくリーダー格であろう大剣を持った男。金髪の短い髪に、銀色に輝く鎧を全身に纏っている。
山に来るような恰好ではないが、背中に背負っている長方形に近い形の大剣同様、この男の標準装備なのだろう。奴らは何の用があるんだか知らないが、俺たちのところまでやってきて薄気味悪く笑った。
「おいおい、ここはお前のような神官様が来るようなところじゃねえぜ? 大人しく神殿で這いつくばってな!」
言いだしたのは大剣の男。どうやら相当な小物のようで、あろうことか俺たちに喧嘩を売ってきた。取り巻きの二人もそれに続く。
「そうだぞ。俺みたいな死神でもない限りお前のようなヤツは野垂れ死ぬのがオチだ」
「ふむ。お前、どこかで見たことがあると思ったらウナンベセスの村で独り言をブツブツ言っていたヤツだろう。神のお告げでも聞いてここまでわざわざやって来たか?」
紫髪に言われて気付いた。そう言えばこいつら、ノエラのいた村の宿屋で酒盛りしてたグループだわ。最悪、こんなところで会うなんてツイてなさすぎだろう。でもノエラは特段こいつらを知っている素振りを見せていないから面識はないようだ。そこは助かったな。
そうして一人グルグルと考えているとノエラが心配そうに聞いてくる。
「知り合い……ですか?」
「いや、俺が一人でいた時にたまたま宿で見かけただけの連中だよ。知りもしない赤の他人だ」
「連中だの赤の他人だの、俺たちに喧嘩を売っているような態度だな。神官のくせに立派に女を連れていい御身分だ。俺の鎌の餌食にしてやろうか?」
「やれるものならやってみな。後悔しても知らないけどな」
「なんだと!」
ヤバっ。ちょっと腹立ってついつい挑発しちゃった。ノエラもいるしここは適当にあしらっとくべきだったな。俺は完全にしくじったが、意外にも相手方の紫髪の男が場を収めてくれた。
「その辺にしとけジム。こいつに時間を割く価値はない」
「は? お前は何とも思わ――チッ。わかったよ」
「今日はウォルトに免じて見逃してやるが、依頼が終わったらてめえをぶっ潰すからな! 覚悟しとけ変人の神官」
小物の大剣使いはそんなセリフを吐いて二人を伴い行ってしまった。それにしても思ったよりすぐに引いてくれたな。大剣の男が言っていた依頼と関係があるのかもしれない。
それを繰り返して進むと、どんどん見える景色は高くなってきて、坂も急になってくる。上に行けばいくほど段々と高い木から低木へ、さらには黄色い小さな花が咲くような広い原っぱの丘になっていく。依然として水の流れる音は聞こえ、傍には小川がチョロチョロと流れている。
吹き付ける風も冷たくなってきて、かなり標高が高くなってきたのを肌で感じた。そんな景色を楽しみながら登っていると、遠くの方に数人の人影が見えた。【闇の感知】にもバッチリと反応しているので、三人だということが分かる。
彼らは山の別の側面から登り始めたようで、ワイワイ話しながら頂上を目指しているようだ。特に話しかける必要も感じなかったのでそのまま進んでいたが、やがて向こうの人たちが俺たちの存在に気付いたらしくこっちに近付いてきた。
それぞれ鎧を着こんだ男たちで、槍、大鎌、大剣とそれぞれの武器を帯びている。槍の男は紫の髪をバサリと後ろに流した長身の男で、冷淡な印象だが、話の内容が面白いのか口の端だけで笑っている。
大鎌の男は少々小柄だが自分の身長よりも大きな鎌を持っており、黒いローブを鎧の上に羽織っている。雰囲気から察するに死神を模しているようだ。そして恐らくリーダー格であろう大剣を持った男。金髪の短い髪に、銀色に輝く鎧を全身に纏っている。
山に来るような恰好ではないが、背中に背負っている長方形に近い形の大剣同様、この男の標準装備なのだろう。奴らは何の用があるんだか知らないが、俺たちのところまでやってきて薄気味悪く笑った。
「おいおい、ここはお前のような神官様が来るようなところじゃねえぜ? 大人しく神殿で這いつくばってな!」
言いだしたのは大剣の男。どうやら相当な小物のようで、あろうことか俺たちに喧嘩を売ってきた。取り巻きの二人もそれに続く。
「そうだぞ。俺みたいな死神でもない限りお前のようなヤツは野垂れ死ぬのがオチだ」
「ふむ。お前、どこかで見たことがあると思ったらウナンベセスの村で独り言をブツブツ言っていたヤツだろう。神のお告げでも聞いてここまでわざわざやって来たか?」
紫髪に言われて気付いた。そう言えばこいつら、ノエラのいた村の宿屋で酒盛りしてたグループだわ。最悪、こんなところで会うなんてツイてなさすぎだろう。でもノエラは特段こいつらを知っている素振りを見せていないから面識はないようだ。そこは助かったな。
そうして一人グルグルと考えているとノエラが心配そうに聞いてくる。
「知り合い……ですか?」
「いや、俺が一人でいた時にたまたま宿で見かけただけの連中だよ。知りもしない赤の他人だ」
「連中だの赤の他人だの、俺たちに喧嘩を売っているような態度だな。神官のくせに立派に女を連れていい御身分だ。俺の鎌の餌食にしてやろうか?」
「やれるものならやってみな。後悔しても知らないけどな」
「なんだと!」
ヤバっ。ちょっと腹立ってついつい挑発しちゃった。ノエラもいるしここは適当にあしらっとくべきだったな。俺は完全にしくじったが、意外にも相手方の紫髪の男が場を収めてくれた。
「その辺にしとけジム。こいつに時間を割く価値はない」
「は? お前は何とも思わ――チッ。わかったよ」
「今日はウォルトに免じて見逃してやるが、依頼が終わったらてめえをぶっ潰すからな! 覚悟しとけ変人の神官」
小物の大剣使いはそんなセリフを吐いて二人を伴い行ってしまった。それにしても思ったよりすぐに引いてくれたな。大剣の男が言っていた依頼と関係があるのかもしれない。
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