56 / 117
貢献の橋
評価
しおりを挟む
呼び出しされたのだから当然ではあるが。しばらく待たされて前回と同じように魔法陣から副長のベゼスさんが現れる。
「宿の方に伝言を頼んでまでお越しいただいて申し訳ない。昨日のことでのご報告と感謝を申し上げたいので、付いて来ていただけますかな」
「はいよ」
「わかりました」
「ではこちらへ」
俺たちはまたあのシックな内装の部屋に通される。だが前回来た時よりも書類が法外に増えており、デスクの上は山になった紙の束で一杯になっていた。忙しい中時間を割いてもらっているようだな。正直ダルいと思っていたのを改めないと……。
俺たちは座り心地の良い長椅子に座って話を始めた。ちなみに温かくて香りの良いお茶も用意してもらっている。
「改めまして、こうして来ていただいてありがとうございます。昨日の大雨の一件は魔術師のアメリアから報告を受けました。お二人が協力して川の増水に対処してくださっていたとか。街を救っていただいて感謝致します。王国からも感謝状が届いております」
ベゼスさんが差し出してきたのは、上質な厚めの紙に“感謝状”と書かれたもの。俺とノエラの名前が並行して書かれ、細かい文字でつらつらと功績の内容が書かれているようだ。何やら目立つ印章が押されているので、国家が認めてくれたのだという実感も湧いてくる。
ノエラも感激しているようで、俺の顔を見ながら嬉しそうにしている。
「なかなか豪華だな。ありがたくいただいておくよ」
「ありがとうございます!」
「喜んでいただけたようで何よりでございます。それから功績のきちんとした対価として、お一人様あたりパタス金貨十枚が贈られています。統治塔でもあなた方にはそれぞれ貢献度を二十五進呈致します」
「お、それは嬉しいな。頑張った甲斐があるよ」
「そうですね。対価のためにやったことではなくても、こうして認めてもらえるのはやっぱり嬉しいです」
「それだけのことをなさってくださったのですから当然ですよ。私からも再度感謝申し上げます」
「いやいや、できることをやっただけだからさ」
「志もお高いとは恐れ入ります。それでお話は変わりますが、サム様。あなたが邪神の神官であるということは念のため国には伏せております。今後もそれでよろしいでしょうか?」
「えっ。むしろ伏せておいてくれてるのか? もちろん話してほしいわけじゃないが、てっきりもう報告してるのかと思ったよ。そっちの立場としては黙っておくのはマズいんじゃないのか?」
「あまり良くはないのですが、サム様には月の暴走を止めるという目的がおありだとか。我々としましても、その邪魔をする訳にはいかないという判断でございます」
「そうか」
これは何となくだが建前のような気がしないでもない。俺に力があるとわかった以上、何かあったときのために関係を崩したくないのと、怒らせると何をするかわからないなんてことを思っているのかもしれないな。
邪神が力を取り戻すなんてのはきっと脅威だと考えるだろうし、俺の話の真偽を時間をかけて確かめるつもりに違いない。
まあ俺としては国に黙っていてくれるならありがたいからどうでもいいけど。それはそうとセレーヌからそのあたりも聞いているようだな。心置きなく名声を高めることができそうだ。
「それではこれにてご報告等は終わりとさせていただきます。サム様、ノエラ様からは用件等はございますか?」
「いや。ないぞ。ノエラはあるか?」
「私も特にはありません」
「そうですか。ではお気をつけてお帰りください。ありがとうございました」
この人は忙しそうなので、俺たちは挨拶もそこそこに魔法陣を使って部屋を出た。
「宿の方に伝言を頼んでまでお越しいただいて申し訳ない。昨日のことでのご報告と感謝を申し上げたいので、付いて来ていただけますかな」
「はいよ」
「わかりました」
「ではこちらへ」
俺たちはまたあのシックな内装の部屋に通される。だが前回来た時よりも書類が法外に増えており、デスクの上は山になった紙の束で一杯になっていた。忙しい中時間を割いてもらっているようだな。正直ダルいと思っていたのを改めないと……。
俺たちは座り心地の良い長椅子に座って話を始めた。ちなみに温かくて香りの良いお茶も用意してもらっている。
「改めまして、こうして来ていただいてありがとうございます。昨日の大雨の一件は魔術師のアメリアから報告を受けました。お二人が協力して川の増水に対処してくださっていたとか。街を救っていただいて感謝致します。王国からも感謝状が届いております」
ベゼスさんが差し出してきたのは、上質な厚めの紙に“感謝状”と書かれたもの。俺とノエラの名前が並行して書かれ、細かい文字でつらつらと功績の内容が書かれているようだ。何やら目立つ印章が押されているので、国家が認めてくれたのだという実感も湧いてくる。
ノエラも感激しているようで、俺の顔を見ながら嬉しそうにしている。
「なかなか豪華だな。ありがたくいただいておくよ」
「ありがとうございます!」
「喜んでいただけたようで何よりでございます。それから功績のきちんとした対価として、お一人様あたりパタス金貨十枚が贈られています。統治塔でもあなた方にはそれぞれ貢献度を二十五進呈致します」
「お、それは嬉しいな。頑張った甲斐があるよ」
「そうですね。対価のためにやったことではなくても、こうして認めてもらえるのはやっぱり嬉しいです」
「それだけのことをなさってくださったのですから当然ですよ。私からも再度感謝申し上げます」
「いやいや、できることをやっただけだからさ」
「志もお高いとは恐れ入ります。それでお話は変わりますが、サム様。あなたが邪神の神官であるということは念のため国には伏せております。今後もそれでよろしいでしょうか?」
「えっ。むしろ伏せておいてくれてるのか? もちろん話してほしいわけじゃないが、てっきりもう報告してるのかと思ったよ。そっちの立場としては黙っておくのはマズいんじゃないのか?」
「あまり良くはないのですが、サム様には月の暴走を止めるという目的がおありだとか。我々としましても、その邪魔をする訳にはいかないという判断でございます」
「そうか」
これは何となくだが建前のような気がしないでもない。俺に力があるとわかった以上、何かあったときのために関係を崩したくないのと、怒らせると何をするかわからないなんてことを思っているのかもしれないな。
邪神が力を取り戻すなんてのはきっと脅威だと考えるだろうし、俺の話の真偽を時間をかけて確かめるつもりに違いない。
まあ俺としては国に黙っていてくれるならありがたいからどうでもいいけど。それはそうとセレーヌからそのあたりも聞いているようだな。心置きなく名声を高めることができそうだ。
「それではこれにてご報告等は終わりとさせていただきます。サム様、ノエラ様からは用件等はございますか?」
「いや。ないぞ。ノエラはあるか?」
「私も特にはありません」
「そうですか。ではお気をつけてお帰りください。ありがとうございました」
この人は忙しそうなので、俺たちは挨拶もそこそこに魔法陣を使って部屋を出た。
0
お気に入りに追加
178
あなたにおすすめの小説
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
全校転移!異能で異世界を巡る!?
小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。
目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。
周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。
取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。
「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」
取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。
そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる