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テストと脅迫
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分からない。
問題の意味が分からない。
問題文を何度も読み、キーワードを拾う。
頭をかかえ、脳内にある引き出しを漁る。何度開いたってそこにあるのは空白なのに、閉めては閉じ、何度も確認してしまう。
そんな作業に疲れ、持っていたシャープペンシルを放り投げた。
周りからはひたすらシャープペンシルの芯が削られていく音が聞こえる。
顔を上げ、時計を見るとテストが終わるまであと一時間もある。
頬杖をつき、涼介が座る方向を見ると、俺と同じように手を止めて壁をひたすらじっと見ていた。
真っ白に染められた髪の毛に、白い肌、華奢な体つき。時々、涼介は天使なんじゃないかと疑ってしまう。
背中からにょきりと翼が生えて、今、この場で窓を割ってどこかへ飛んで行ってもおかしくない。むしろ、そんな姿を見てみたい。きっといつものようににやりと笑ってくれるのだろう。
涼介の天使姿を想像していると、いつの間にかチャイムが鳴っていた。
音の騒めきの中で、耳にテストの答えを言い合う言葉が飛び込んでくる。
なんだか心臓の下からもぞもぞと虫が沸き上がってくるようで、一刻も早くこの場から立ち去りたかった。
未来へ目標をもって日々を過ごす中で明らかに俺はこの場にいてはいけない存在だった。
涼介も俺と同じ思いなのか、何も言わず二人は速足で教室を飛び出た。
「テスト、やばかったよな」俺は言った。
「ん」
涼介はポケットの中からチュッパチャップスを取り出し、舐め始めた。こちらまでいちごの甘い匂いがただよってくる。
「きっと、今期半分くらい落としてる」涼介はさほど深刻な様子もなくさらりと言った。
「仲よく二人そろって留年だな」
涼介は、いきなりぴょんっと塀の上に登り、両手をピンとひらいて歩き始めた。
「なんかさ、メール来てたよ」涼介が言った。
「メール?」
「うん」
「昨日の夜中に」
「どんな」
「なんだか物騒な」涼介はひょいと次の塀へ飛び乗った。
「殺すぞてきな?」
「まぁそんな感じ」
「涼介が昔ヤった男か女が恨んで送ったんじゃないの」
「多分違う」涼介はポケットから画面がバキバキに割れたスマホを俺に差し出した。
画面に映し出されるメールを読んでいく。
「明日の夜八時に二人でホテルの一室にこい。さもなくば、お前らがやっている悪事を全世界にばらすぞ」と書かれていた。
「いたずらじゃないの」俺は言った。
「どーだろ」
「ほっとけよ」
「でもさ、メールが連投されていて俺たちの個人情報の全てを見せつけてきたんだよ」
俺は他のメールも見る。二人の名前、生年月日、大学名、住所から始まり、性格や特技が書かれている。
涼介が遊んだ人の名前、顔写真、そして涼介がホテルに入るところの写真。
変態に向けて写真を売っていること。しまいには、この前二人でベランダで楽しそうにじゃれている写真も添付されていた。
「なんだよ、これ」ドッドッドッドっと鼓動がはやまる。
「な」
涼介はぴょんと塀から飛び降り。俺がもっている携帯をぽっけの中にいれた。
「まぁ、とりあえず明日の夜まで待と?」
涼介はまるでこんなことなんでもないと言った風に言った。
いつだって自分でいられる涼介は正直羨ましかった。それに、俺がテストでいらぬ心配をさせぬようテスト後にこのことを話す涼介の優しさが心臓に痛かった。
「お前の好きなアイスおごってやるよ」
「まじで?やった
全てをみぬいているかのようなひやりとした瞳をしているのに、涼介は顔全体でくしゃりと無邪気に笑った。
いや、実際涼介は何もかも知っているのだろう。
だから、おれは涼介をやめられないのだ。
問題の意味が分からない。
問題文を何度も読み、キーワードを拾う。
頭をかかえ、脳内にある引き出しを漁る。何度開いたってそこにあるのは空白なのに、閉めては閉じ、何度も確認してしまう。
そんな作業に疲れ、持っていたシャープペンシルを放り投げた。
周りからはひたすらシャープペンシルの芯が削られていく音が聞こえる。
顔を上げ、時計を見るとテストが終わるまであと一時間もある。
頬杖をつき、涼介が座る方向を見ると、俺と同じように手を止めて壁をひたすらじっと見ていた。
真っ白に染められた髪の毛に、白い肌、華奢な体つき。時々、涼介は天使なんじゃないかと疑ってしまう。
背中からにょきりと翼が生えて、今、この場で窓を割ってどこかへ飛んで行ってもおかしくない。むしろ、そんな姿を見てみたい。きっといつものようににやりと笑ってくれるのだろう。
涼介の天使姿を想像していると、いつの間にかチャイムが鳴っていた。
音の騒めきの中で、耳にテストの答えを言い合う言葉が飛び込んでくる。
なんだか心臓の下からもぞもぞと虫が沸き上がってくるようで、一刻も早くこの場から立ち去りたかった。
未来へ目標をもって日々を過ごす中で明らかに俺はこの場にいてはいけない存在だった。
涼介も俺と同じ思いなのか、何も言わず二人は速足で教室を飛び出た。
「テスト、やばかったよな」俺は言った。
「ん」
涼介はポケットの中からチュッパチャップスを取り出し、舐め始めた。こちらまでいちごの甘い匂いがただよってくる。
「きっと、今期半分くらい落としてる」涼介はさほど深刻な様子もなくさらりと言った。
「仲よく二人そろって留年だな」
涼介は、いきなりぴょんっと塀の上に登り、両手をピンとひらいて歩き始めた。
「なんかさ、メール来てたよ」涼介が言った。
「メール?」
「うん」
「昨日の夜中に」
「どんな」
「なんだか物騒な」涼介はひょいと次の塀へ飛び乗った。
「殺すぞてきな?」
「まぁそんな感じ」
「涼介が昔ヤった男か女が恨んで送ったんじゃないの」
「多分違う」涼介はポケットから画面がバキバキに割れたスマホを俺に差し出した。
画面に映し出されるメールを読んでいく。
「明日の夜八時に二人でホテルの一室にこい。さもなくば、お前らがやっている悪事を全世界にばらすぞ」と書かれていた。
「いたずらじゃないの」俺は言った。
「どーだろ」
「ほっとけよ」
「でもさ、メールが連投されていて俺たちの個人情報の全てを見せつけてきたんだよ」
俺は他のメールも見る。二人の名前、生年月日、大学名、住所から始まり、性格や特技が書かれている。
涼介が遊んだ人の名前、顔写真、そして涼介がホテルに入るところの写真。
変態に向けて写真を売っていること。しまいには、この前二人でベランダで楽しそうにじゃれている写真も添付されていた。
「なんだよ、これ」ドッドッドッドっと鼓動がはやまる。
「な」
涼介はぴょんと塀から飛び降り。俺がもっている携帯をぽっけの中にいれた。
「まぁ、とりあえず明日の夜まで待と?」
涼介はまるでこんなことなんでもないと言った風に言った。
いつだって自分でいられる涼介は正直羨ましかった。それに、俺がテストでいらぬ心配をさせぬようテスト後にこのことを話す涼介の優しさが心臓に痛かった。
「お前の好きなアイスおごってやるよ」
「まじで?やった
全てをみぬいているかのようなひやりとした瞳をしているのに、涼介は顔全体でくしゃりと無邪気に笑った。
いや、実際涼介は何もかも知っているのだろう。
だから、おれは涼介をやめられないのだ。
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