青、渋滞。白、崩れさる。

茶茶

文字の大きさ
上 下
4 / 7

テストと脅迫

しおりを挟む
分からない。

問題の意味が分からない。

問題文を何度も読み、キーワードを拾う。

頭をかかえ、脳内にある引き出しを漁る。何度開いたってそこにあるのは空白なのに、閉めては閉じ、何度も確認してしまう。

そんな作業に疲れ、持っていたシャープペンシルを放り投げた。

周りからはひたすらシャープペンシルの芯が削られていく音が聞こえる。

顔を上げ、時計を見るとテストが終わるまであと一時間もある。

頬杖をつき、涼介が座る方向を見ると、俺と同じように手を止めて壁をひたすらじっと見ていた。

真っ白に染められた髪の毛に、白い肌、華奢な体つき。時々、涼介は天使なんじゃないかと疑ってしまう。

背中からにょきりと翼が生えて、今、この場で窓を割ってどこかへ飛んで行ってもおかしくない。むしろ、そんな姿を見てみたい。きっといつものようににやりと笑ってくれるのだろう。

涼介の天使姿を想像していると、いつの間にかチャイムが鳴っていた。

音の騒めきの中で、耳にテストの答えを言い合う言葉が飛び込んでくる。

なんだか心臓の下からもぞもぞと虫が沸き上がってくるようで、一刻も早くこの場から立ち去りたかった。

未来へ目標をもって日々を過ごす中で明らかに俺はこの場にいてはいけない存在だった。

涼介も俺と同じ思いなのか、何も言わず二人は速足で教室を飛び出た。

「テスト、やばかったよな」俺は言った。

「ん」

涼介はポケットの中からチュッパチャップスを取り出し、舐め始めた。こちらまでいちごの甘い匂いがただよってくる。

「きっと、今期半分くらい落としてる」涼介はさほど深刻な様子もなくさらりと言った。

「仲よく二人そろって留年だな」

涼介は、いきなりぴょんっと塀の上に登り、両手をピンとひらいて歩き始めた。

「なんかさ、メール来てたよ」涼介が言った。

「メール?」

「うん」

「昨日の夜中に」

「どんな」

「なんだか物騒な」涼介はひょいと次の塀へ飛び乗った。

「殺すぞてきな?」

「まぁそんな感じ」

「涼介が昔ヤった男か女が恨んで送ったんじゃないの」

「多分違う」涼介はポケットから画面がバキバキに割れたスマホを俺に差し出した。

画面に映し出されるメールを読んでいく。

「明日の夜八時に二人でホテルの一室にこい。さもなくば、お前らがやっている悪事を全世界にばらすぞ」と書かれていた。

「いたずらじゃないの」俺は言った。

「どーだろ」

「ほっとけよ」

「でもさ、メールが連投されていて俺たちの個人情報の全てを見せつけてきたんだよ」

俺は他のメールも見る。二人の名前、生年月日、大学名、住所から始まり、性格や特技が書かれている。

涼介が遊んだ人の名前、顔写真、そして涼介がホテルに入るところの写真。

変態に向けて写真を売っていること。しまいには、この前二人でベランダで楽しそうにじゃれている写真も添付されていた。

「なんだよ、これ」ドッドッドッドっと鼓動がはやまる。

「な」

涼介はぴょんと塀から飛び降り。俺がもっている携帯をぽっけの中にいれた。

「まぁ、とりあえず明日の夜まで待と?」

涼介はまるでこんなことなんでもないと言った風に言った。

いつだって自分でいられる涼介は正直羨ましかった。それに、俺がテストでいらぬ心配をさせぬようテスト後にこのことを話す涼介の優しさが心臓に痛かった。

「お前の好きなアイスおごってやるよ」

「まじで?やった

全てをみぬいているかのようなひやりとした瞳をしているのに、涼介は顔全体でくしゃりと無邪気に笑った。

いや、実際涼介は何もかも知っているのだろう。

だから、おれは涼介をやめられないのだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

【完結】運命さんこんにちは、さようなら

ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。 とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。 ========== 完結しました。ありがとうございました。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

処理中です...