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セックス依存症とアルコール
しおりを挟む街が緋色に染まっている。
コンビニ袋片手に、涼介のアパートの扉を開けた。
すると、線の細い綺麗な男と目が合い、互いに一瞬動きが止まった。こんにちはと声をかけると、男は目を伏せ、逃げるように速足で去っていった。
部屋は熱気と男が発するフェロモンの匂いで満ちてた。
「涼介、お前あの男とやったのか」
「やった」涼介は裸で煙草を吸っている。
涼介は男も女も関係なく顔が好みだったらすぐに抱く。
「ほんとに節操ないな」
「俺、セックス依存症なのかもしれない」涼介は煙を吐きながらふはっと笑った。
「なー、せめてパンツ履けよ」俺がそういうと、パンツパンツと呟きながらベッドをひっかきまわした。
「何買ってきた?」
「酒とつまみ」
俺は床に散らばったコンドームの袋をごみ箱に投げ入れた。いったい何回やったんだよこいつら。
それから、灰皿にある涼介の吸いかけを手に取った。ニコチンが肺を駆け巡る。
パンツを履いた涼介は酒を片手に棒アイスをおいしそうに食べ始めた。
机の上にある涼介のパソコンを起動させた。その瞬間、パソコンが喘ぎ始め、裸の人間が懸命に腰を振る姿が視界を埋めた。
俺は聞こえないふりしてバツ印を押し、メールを開いた。
「今日何人?」
「十三人」俺はパソコンの画面から目を離さず答えた。
「そこそこだな」
送られてきたメールをひとつひとつ確認する。
肛門からちょうど排泄物が出てくる写真だったり、アナルに大きいディルドの二輪挿しをしている写真やメイドの服を着てローションガーゼで潮吹きをしている動画が添付されている。
出会い系サイトや掲示板に女を名乗って煽るような文章を載せる。
「あみです。二十四歳で看護師をしています。いけないことして、叱られたいメスブタどもはお姉さんに動画や写真を送りなさい。Ami2331@sinck.jp」
そうすると、さっきのような写真や動画が添付されたメールが一日に十通から二十通届く。多い時には一日に百通ほど来たこともある。
これらの写真や動画を顧客に売り、お金を頂戴している。
大体写真一枚五千円。動画は三分くらいで一万円。
涼介はいろんな掲示板や出会い系サイトに適当に女のコの名前を使って文章を送り、俺は送られてきた写真や動画を、求める顧客に売る役割。
そうして稼いだ金は俺と涼介の二人で山分け。
学生の身分にもかかわらず、サラリーマンの平均年収は優に超えている。だけど、俺も涼介もお金はさして使わずにいる。
親が出してくれるアパートに住み、学校に行き、親が送る生活費で日々を暮らしている。
稼いだ金はたばこ代と酒代くらいで、銀行にお金は着々と増え続けている。
周りがゼミやらインターンやら考え、行動を起こす中、俺たちだけは何もしていない。
ぽつりと取り残され、そいつらの動きをぼーっと眺めているだけだ。もちろん、一生こうやってお金を稼いで生きていけるとは思ってもいない。でも将来、とか就活、とかやりたいことなんてわからない。
作業もひと段落し、買ってきたお酒を飲もうとコンビニ袋の中を見るとすでに中身は空っぽだった。
「涼介、酒全部飲んだの?」
「飲んだ」
最近の涼介は酒を水のように飲む。すぐにアルコールを欲しがり、ないとイライラする。完全にアルコール中毒だ。
「お前、そんな調子だと肝臓やられて死ぬぞ」
「そんときは、そんときでいいよ」
俺は立ち上がり、冷蔵庫に入っていた飲みかけのペットボトルの水を飲んだ。
「何、湊は俺が死んじゃったら寂しい?」涼介はにやにやしながら俺の顔をみている。「じゃあ俺と一緒に海に入って死ぬ?」
冗談で言っているはずなのに、俺の胸はドキリと波打つ。涼介の瞳は真っ黒で目線は俺を向いているのに、本当は俺の前にある透明の壁を見詰めているみたいだ。涼介の闇に飲み込まれてしまいそうで、圧倒されて怖くなる。
「何どっかの文豪のような馬鹿のこと言ってんだ」やっとのことで俺は反論した。
「えーそんなこと言わないでよ」涼介はいつもの何も考えていないノーてんきな顔で言った。
「風呂借りるな」俺は涼介から逃げるようにそう言った。
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