降る、ふる、かれる。

茶茶

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第五章 エピローグ

あゆ

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優紀ゆあはベッドのなかで泣いている。

 無夢が死んだ日から、優紀ゆあは事実を受けいられずにいた。起き上がることも、トイレに行くこともままならず、仕事なんて完全に忘れ、ただただ無夢の死を泣き叫んでいた。

 泣いて、叫んで、泣き疲れると、寝て、起きると再び泣いて、をずっと繰り返していた。いったいどこからそんなに体液がでてくるのかと思うほど泣き叫んだ。

気を紛らわせようとユーチューブを開くのだがホームにも急上昇にも関連動画にも「無夢」「死」の言葉が必ず表示される「無夢」という音が、声がすぐに体を絡めとり、再び絶望の底に追いやるのだった。



無夢 ライブ 自殺
 1tundoki・五百万回再生・三日前


無夢の自殺シーンの動画は各SNSにばらまかれ、誰でも見ることができた。ユーチューブにもいくつも無夢のライブ画面を録画した動画がアップされている。

彼女は見なくていいのに、無夢の生きている瞬間を見たくて動画を再生している。動画を開くたびに、今度こそは死なずにいてくれるのではないかと期待するけど、決まって最後、無夢は死んでしまうのであった。

 彼女は泣いて、眠ってを繰り返して、三週間が過ぎた。

 優紀ゆあの顔はひどいものだった。

何日もお風呂に入っていないから、肌は垢と脂まみれだし、髪の毛は芸術作品かのごとく奇妙な寝ぐせのまま固まっていた。瞼は腫れぼったく、ご飯を十分に食べられていなかったため頬はこそげていた。別人かと思われるほどだった。ひどすぎて、彼女は鏡に映る自分を見て、思わず笑ってしまっていた。久しぶりの笑みだった。

 彼女は無夢が死んだという事実を0,1ミリだけ受け入れた。

 優紀ゆあは久しぶりにお風呂に入った。彼女は丁寧に全身を洗った。

 さっぱりとした彼女は、久しぶりに髪にドライヤーをかけながら、無夢の追悼式を行おうと思い立った。彼女は無夢の死をたくさん悼んだ後、自分も死のうと思った。

 ドライヤーを終えると、スマホでユーチューブを開き、無夢の再生リストを流した。

 無夢がつくった「歌ってみた」の動画を全て流した。優紀ゆあは、無夢がつくりだした景色を体内に少しでも留めておこうと、音にしがみついた。

曲を流し終えると、最後にライブで無夢が作ったというオリジナル曲を歌った。

 その歌声を彼女は記念にとスマホで録音し、何の編集もしないままユーチューブにアップロードした。
彼女は明日死のうと心に決めて、眠りについた。



(歌ってみた)無夢の最後の曲
 十万回視聴・一日前・あゆ



(完)
                  
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