降る、ふる、かれる。

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第四章 ライブ

本音

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「皆の目から僕のことどう見えていますか。

皆はこの世界をどのように見ていますか。

皆はこの世界で生きること好きですか。

僕のこと愛していますか

愛してくれていますか」

「僕はいつも考えている。皆のことと、僕のこと。そしてこの世界のこと。


僕が歌を歌えば、皆にいろんな言葉をかけてもらえる。

天才。かっこいい。才能ある。そして、救われたって。

そういってもらえて本当にうれしかった。ここにいてもいいよって言われているみたいで。僕の存在を肯定してくれるみたいで。僕のこと、好きになってくれて本当にありがとう。皆に僕は今日まで生かされたよ。


 同時にね、嫌なことも言われるんだ。

キモイ。音痴。ニートのくせに。

 そんなアンチのこと気にしなくていいよって皆、言ってくれるのかもしれない。うん。皆、優しいからさ。

アンチには僕がすごく目障りに映っているんだと思う。そして、誰かを攻撃することで自分を保っているのかな、なんて考える。

道徳的に見たらさ、それでも暴言なんてしちゃいけないと思うし、それこそ犯罪行為すれすれの迷惑行為なんて駄目だよね。でも、何かに縋る生き方には僕にも分かる部分があるんだよな。


 僕はねずっと怖いんだ。この人気がものをいう歌い手をやっているから当たり前なんだけど、皆さいつかは僕の前を離れていくでしょ?

今はたくさんのファンと少しのアンチに囲まれて生きている。本当にうれしいことだ。死ぬまでファンだよって思ってくれる人もいるけどさ、いつかは僕のこと忘れ去ってすべては過去になるでしょ?

それが怖い。永遠に僕が愛され続けることなんてないなんて、わかっているけどそれでも嫌なんだ。

 ふふっ。メンヘラでしょ?

そうやって皆に僕のことをずっと愛してほしいって言うのは傲慢だし、僕のことを今応援してくれるファンにいつかは離れていくでしょ?なんて絶対に言ったらいけない言葉だってわかっているけど、これが僕の本心。

分かってくれだなんて思っていないけど、ただ皆に知って欲しかった。

 次に、自分のこと。

僕は、きっとものすごく幸せなんだと思います。自分の声が、歌が評価され、褒められて、お金をもらって生きることが出来ている。

そんなことが出来る人間なんて結構少ないと思うんだよね。無夢になるまではずっと形をもたないどろどろとした液体みたいな気分だった。

でもね、歌い手になって、無夢になることができてやっと本当の人生が始まったみたいだった。これで、大丈夫だって思ったよ。

僕は、今が、この一瞬が最高に幸せだよ。それは、間違いない。

皆がいて、たくさんの人が僕の声を聞いてくれる。本当に幸せだ。

でも、同時に苦しい。辛い。助けてほしい。

きっと僕、人間向いていないんです。

息しているだけでどうしようもなく苦しくなる。

評価され、賛美され、お金をもらって、こんな素晴らしいステージに立っても、生きていることをうれしく思えないんです。

ずっと汚い沼の中でもがいているみたいだった。もがけばもがくほど底に沈んでいくような。そんな感じ。

音楽は僕の人生を救ってくれたけど、僕自身は、魂は救ってくれなかった。

これは、誰かが悪いわけじゃない。僕自身も悪くないし、もちろん皆も悪くない。

でも、僕はため息をついてばかりだ。

空を流れる雲を見て心奪われるけど
平和な木陰で音楽つくるのは楽しいけど

洗濯ものを干している時とか、ただ道を歩いている時とか、ほんとうに何でもないときに黒い化物が僕の背中に襲い掛かって首を絞める。

僕は抵抗できずに涙を流している。

つくづく、人間下手くそなんだなって思い知らされる。

世界はうつくしいけど、同時に残酷で汚い。

うん。

黒い化物は一生いなくならない。黒い化物はきっと僕で、僕の一部だから。僕という存在がいなくならない限り、そいつは消えない。

僕は、黒い化物を殺さないといけない。しなくちゃいけないんだ。

皆、こんな僕を見つけてくれてありがとう。
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