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第四章 ライブ
綺羅のよい宵
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「綺羅のよい宵」
作詞作曲・靉p作。
数日後には世界が滅亡してしまうというある夜、スーツを着た男はビルの外階段でネオン街をながめ、たそがれていた。眼がとろりと溶けている。
男は、もうすぐ世界が終わってしまうというのに相変わらず会社に出社し、働き、残業までして退勤したのだった。
男の吐く息は白く、けむりのように立ち上っている。
コツリ、コツリと誰かが階段を降りる音がする。男が顔を上げると、クリーム色のチノパンに、緩いニットとバイオレット色のコートを着た女性がいた。
女性は男の顔を見ると、優しく微笑んだ。それから、手元のビニール袋からお酒を取り出し、男に差し出した。
二人は並ぶようにして夜に光輝く都会を見ながら夜明けまで、何かを語っていた。
無夢は観客席に向かって何かを請うかのように手を伸ばし、その手を引き寄せた。
目を閉じ、一フレーズを優しく歌った後、眼を見開き、この瞬間を見逃すなとでもいうように笑った。
冥くて美しい笑みだった。
赤、黄色、青、緑と変わってゆくライトの色を吸い込み、光を羽織り、音を吐いた。
「春、凋落」
作詞作曲・来栖誤p作。
いつかの時代のどこかの国で少女は踊り子として舞台上で舞っていた。
その時、生理が始まり、少女の衣装は赤く染まってしまった。
少女を見ていた観客も、少女の監督も、舞台上のスタッフも、男は全員「あいつは、悪魔だ」と少女を罵った。
この国では、生理は女だけの秘密にされていた。男は生理のことを全く知らなかったのだ。女性は生理になると、股に布を挟み、できるだけ家から出ないで過ごしていた。
女性の間でも、生理はよくないものとされ、生理が来ない人のことを天使とよんでいた。だから、女の人は生理が来なくなるようにご飯を控えるため、皆ギスギスに骨ばっていた。
無夢はどこを見ているのだろう。いままで見ることが出来ず、ずっとかくれていた歌うときの表情はすごく何かを欲してるかのように見えた。
欲しくて、欲しくて、たまらなくてまだ見ぬ潤いを求めて歌っていた。
涙、という歌詞のところで、無夢は人差し指でほほをなぞり、架空の涙を垂らした。
無夢の衣装は背中がぱっくりと割れ、細くて白くてしなやかな背中がみえている。骨を感じることができる。その背中から花や草がニョキニョキと生えている。無夢は自然を作り地球を奏でた。
作詞作曲・靉p作。
数日後には世界が滅亡してしまうというある夜、スーツを着た男はビルの外階段でネオン街をながめ、たそがれていた。眼がとろりと溶けている。
男は、もうすぐ世界が終わってしまうというのに相変わらず会社に出社し、働き、残業までして退勤したのだった。
男の吐く息は白く、けむりのように立ち上っている。
コツリ、コツリと誰かが階段を降りる音がする。男が顔を上げると、クリーム色のチノパンに、緩いニットとバイオレット色のコートを着た女性がいた。
女性は男の顔を見ると、優しく微笑んだ。それから、手元のビニール袋からお酒を取り出し、男に差し出した。
二人は並ぶようにして夜に光輝く都会を見ながら夜明けまで、何かを語っていた。
無夢は観客席に向かって何かを請うかのように手を伸ばし、その手を引き寄せた。
目を閉じ、一フレーズを優しく歌った後、眼を見開き、この瞬間を見逃すなとでもいうように笑った。
冥くて美しい笑みだった。
赤、黄色、青、緑と変わってゆくライトの色を吸い込み、光を羽織り、音を吐いた。
「春、凋落」
作詞作曲・来栖誤p作。
いつかの時代のどこかの国で少女は踊り子として舞台上で舞っていた。
その時、生理が始まり、少女の衣装は赤く染まってしまった。
少女を見ていた観客も、少女の監督も、舞台上のスタッフも、男は全員「あいつは、悪魔だ」と少女を罵った。
この国では、生理は女だけの秘密にされていた。男は生理のことを全く知らなかったのだ。女性は生理になると、股に布を挟み、できるだけ家から出ないで過ごしていた。
女性の間でも、生理はよくないものとされ、生理が来ない人のことを天使とよんでいた。だから、女の人は生理が来なくなるようにご飯を控えるため、皆ギスギスに骨ばっていた。
無夢はどこを見ているのだろう。いままで見ることが出来ず、ずっとかくれていた歌うときの表情はすごく何かを欲してるかのように見えた。
欲しくて、欲しくて、たまらなくてまだ見ぬ潤いを求めて歌っていた。
涙、という歌詞のところで、無夢は人差し指でほほをなぞり、架空の涙を垂らした。
無夢の衣装は背中がぱっくりと割れ、細くて白くてしなやかな背中がみえている。骨を感じることができる。その背中から花や草がニョキニョキと生えている。無夢は自然を作り地球を奏でた。
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