降る、ふる、かれる。

第二章 歌い手

登録者数 百万人

ここでは夕方の六時にゆうやけこやけの音楽が鳴る。

小学生がランドセルを鳴らしながら「ばいばい」という声が時々聞こえてくる。

たてつけの悪い窓を開ければ、美しい夕日が見える。夜に誘われて沈んでゆく太陽と様々な波長によって柔らかい色が混ざり合う。

うすら寒い外気温にさらされながら、真っ白になった連絡帳と増えてゆく登録者数をみて、僕はすっかり無夢になったんだなと実感させられる。母は今のところここまで来ていない。

大学を辞め、住所も変えたことを知ると、そのうち興信所でも雇って調べさせるかもしれない。母ならやりかねない。人間として損なわれた僕に、もう人としての母の言う普通の人生なんて送れるわけがない。

　音楽をつくる。それ以上でもそれ以下でもない。ひたすらに、ただまっすぐに。消えてゆくアカサカイオリに爽快感を覚え、増えてゆく無夢に正しさを感じる。

半年がたち、無夢の登録者数は百万人を超えた。


さりとて、（歌ってみた）＼無夢
無夢・百六十万回再生・一か月前