降る、ふる、かれる。

第二章 歌い手

絵

異常気象のせいか、夏は過ぎ去ったというのに相変わらず汗をかいている。夜がだんだん長くなり、息がしやすくなる時間が増えた。

大学では後期がすでに始まっている。後期はしっかりと単位を取らなければならないと、夏休みの時にしっかりと履修登録を行った。

しかし、昨日も、おとといも、その前も、先週も、ずっと大学に行っていない。大学へと家の扉に手をかけると、ひどい胃痛と頭痛、吐き気に襲われる。夏休み前の症状が再び僕を苦しめている。

家にいて、ユーチューブを繋げば、僕を求めてくれる皆がいるのだ。わざわざ家から出る必要はない。

すぐに扉に背を向け、再びパソコンの前に座っている。

　無夢のチャンネル登録者数は二十万人を超えた。

ここに来て、声だけでなくて僕の絵が評価されていた。僕はうれしかった。美術の時間に描いた僕の絵は、先生には理解不能と言われ、クラスメイトには気味が悪いと言われた。こっそりネットに上げた時もきもい、才能ないからやめろ、幼稚園児の絵みたい、と酷評されてばかりいた。その絵が今、皆を喜ばすものになっていた。


プロ絵画評論家／蓋神せいこう@ seikou hutagami 3421 　
　無夢の絵は人に触ってほしくない嫌のところを、ナイフで突き刺すような絵だ。一目では大概の人は不快感を覚える。しかし、その一瞬ですべてを絡めとる力をもつ。ふとした瞬間に、その絵が鮮明に思い出される。見たくないけど、見てしまい、いつのまにか無夢の沼にいる。無夢は天才だ。


虞犯少年（歌ってみた）/無夢
　　無夢・五十一万回視聴・三週間前