降る、ふる、かれる。

第一章 リスナー

無夢になれない

キャバ嬢「有夢」は売れてもなお、売り上げを伸ばし続けキャバクラの世界の歴史をどんどんと塗り替えていった。

政治家、俳優、モデル、社長、色んな人を相手してきた。

愛人になって欲しいという人や、一夜で三百万渡すから共にしてほしいと懇願する人、タレントにならないかと言う番組のプロヂューサー、コラボ商品を出したいという化粧品会社、共同で会社を経営しないかと誘う人。いろいろ人が私を通り過ぎていった。

私にとって、今以上のお金も地位も必要なかった。

今では、毎回限度額までお金を無夢に投げることができている。私は間違いなく無夢の一部になりえていると思っていた。

しかし、おかしい。

私と無夢との距離はゼロにはなりえていない。

　お金を無夢に投げることで、私は気づいたことがある。

お金は無夢に近づくための一つの手段にしかなりえないということだ。

お金を落とせば落とすほどある程度の距離まで近づくことが出来るが、ある金額を超えると、お金はほとんど使い物にならなくなる。

極限のように限りなく近づくが、お金だけの力じゃ絶対に接することも交わることもない。

ではどうすればいいのか。

私は無夢で、無夢は私であって欲しい。

それ以外は認めない。

お金があれば全てが解決すると思ってキャバ嬢になり、多くのお金を稼いできたがそれは、結局は意味がなかった。私は無夢になれなかった。

　どうしたらいいのだろう。何をすればいいのだろう。

お金を稼ぐ、という目標を失った私はぽっかりと心に穴が開いてしまった。