降る、ふる、かれる。

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第一章 リスナー

リスナー、お母さん

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火傷のような痛みが脈打つたびに体中に広がる。



 りりかに嫌われたのも、りりかにされたこともすべては夢の中の出来事で、嘘だったのかもしれないと思う。



 しかし、この痛みが現実であることを忘れさせてはくれない。





 部屋の光も、布団の匂いもいつも通りなのに、私だけが違う。



 どうやって家まで帰ってきたのか分からない。体操服を来た私はベッドの上で寝ころんでいた。布団を頭の上からかぶり、ダンゴムシのように丸くうずまった。



 私はどうなってしまうのだろうか。



 見たくもない写真がはらりはらりと目の前に落ちてくる。



 りりかの笑った顔、私が裸で泣いている姿、晴美とかりんの知らんふりをする態度。目を閉じ、耳を塞いで、声を上げる。



 もういいよ。



 もうういから。



 分かったから。



 それでもどこまでもついてくる。



 自分の名前を呼ぶ声がする。

 布団から顔を出すと、仕事終わりの母がいた。



「ゆあ、帰ってたの?早かったのね」疲れ顔のメイクはよれ、だぶついた体が目に染みる。



 母が私の将来だなんて思いたくない。



 第二の母にならないようにと勉強を頑張っていたのに。再び鼻の奥が痛くなった。



「寝てばっかりしてないで、ちゃんとしなさいよ。受験、もうすぐなんでしょう?」



 うるさいっ、の言葉が喉まででかかる。



「もうっ、お母さん夜ご飯作るから、あなたお風呂掃除してお風呂入りなさい」お母さんは階段を降りていった。



 お母さんが助けてくれるんじゃないかと心のどこかで思っていた。



 娘の様子がいつもと違うと気づき、もう大丈夫だよと力強く抱きしめてくれるんじゃないかと思っていた。



 だけど、そんな希望も散り散りに砕け散った。母は私の顔を見ていなかった。



 お金を得るために社会にもまれ、疲れきった自分しか母の中にはいない。



 母が、私のためにお金を頑張って稼いでいるのは知っている。



 だけど、それ以前に私を見てほしかった。



 母にそんなことを言ったら「誰のために稼いでの」と言われるに違いない。



 娘として私を十分に見ることが出来ないんだったら、簡単に子供なんてつくんなよ、とわけの分からない怒りが押し寄せてくる。



 窓の外をみると、日が傾きつつある。隣の色の屋根上のしゃちほこが金色の輝いていた。



 だれでもいいから私のことを抱きしめて欲しかった。

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