16 / 66
第一章 リスナー
リスナー、トイレのタイルの上
しおりを挟む
私はいったい何をされるのだろうか。
「ねぇ、ゆあさ制服、ちょっと脱いでみてくれない?」
「えっ…何で」
何とか出た声はまるで情けなく、一突きすればたちまち壊れてしまいそうであった。
「えー親友のおねがいじゃーん。ねぇお、ね、が、い」
どの口が親友などと宣っているのだろうか。
「いっ、いや。こんなこと許されると思ってんの。いじめの証拠、あるんだから」思わず口から反抗の言葉が出る。
意地を張っていないとやってられない。切り刻まれた体操服に、ノート、教科書。全て取ってある。
「はっ?何その反抗的な目。あんたに選択権なんてあると思ってんの?とっとと脱ぎなよ」
さっきまでのあまったるいお菓子のような声とはうって変わって、ナイフのように鋭い声で私に言った。
「ね、あんたらあいつの服を全部はがして」
そこで、りりかの後ろに立つ那賀さんと宮崎さんがいることに気づいた。
晴美とかりんは私から顔を背け、出口方面を見つめている。
「えっ。でも」と動揺する那賀さんと宮崎さん。
晴美とかりんは完全に知らんぷりを決め込んでいる。自分で手を汚したくないのだろう。
「なんで。私がしてっていってるじゃん」りりかが言う。
「ねぇ、助けてよ」私は叫ぶ。
誰でもいいから、私に罪悪感を持って。
「いいの?ゆあは二人のこと散々馬鹿にしてたんだよ?それに人を裏切って、カンニングしたどうしようもない女なの。別に罪悪感なんて覚える必要ない。だって、裁かれるべき悪人なんだから」りりかはいったい二人に何を吹き込んだろう。
馬鹿にしたのは、皆も同じじゃないか。
りりかの言葉を聞くと、瞳に炎を灯した二人が迫ってくる。
抵抗をするが、どこにそんな力があるのだろうというくらい強い力ではがされる。
はがれてゆく。痛い。
トイレのタイルの上に一人の少女。それが私。
視線がぐさりぐさりと内臓を抉ってゆく。
恥ずかしさで死んでしまいそうだった。
身をよじり、胸と股を手で覆った。すると、りりかの「隠すな」の一言が飛んできた。
「ゆあの手、しばってよ。じゃまじゃん」
宮崎さんがつけていたネクタイで私の手は後ろで縛られた。
私の身体は、光の元に丸見えとなった。
「じゃあ写真撮影たいかーい。綺麗に取ってあげるからね。ゆあ、笑いなよ」変にテンションを上げてりりかは言った。
りりかは校則違反のスマホを懐から取り出し、レンズを私に向けた。
ぱしゃり、ぱしゃりと乾いた音がひたすら響く。
「ねぇ、二人もとりなよ。つまんないじゃん」というと、宮崎さんと那賀さんはそろりとスマホを出した。
恥かしい、をなくせ。心を無にせよ。私は心にそう命令する。
私は私じゃない。私はきっと誰かなんだ。
そう思えば大丈夫。きっと、大丈夫だから。
数時間後には楽になっているから。
三人がかりで私は隅から隅まで余すことなく写真を撮られた。
「ねぇ、ゆあさ制服、ちょっと脱いでみてくれない?」
「えっ…何で」
何とか出た声はまるで情けなく、一突きすればたちまち壊れてしまいそうであった。
「えー親友のおねがいじゃーん。ねぇお、ね、が、い」
どの口が親友などと宣っているのだろうか。
「いっ、いや。こんなこと許されると思ってんの。いじめの証拠、あるんだから」思わず口から反抗の言葉が出る。
意地を張っていないとやってられない。切り刻まれた体操服に、ノート、教科書。全て取ってある。
「はっ?何その反抗的な目。あんたに選択権なんてあると思ってんの?とっとと脱ぎなよ」
さっきまでのあまったるいお菓子のような声とはうって変わって、ナイフのように鋭い声で私に言った。
「ね、あんたらあいつの服を全部はがして」
そこで、りりかの後ろに立つ那賀さんと宮崎さんがいることに気づいた。
晴美とかりんは私から顔を背け、出口方面を見つめている。
「えっ。でも」と動揺する那賀さんと宮崎さん。
晴美とかりんは完全に知らんぷりを決め込んでいる。自分で手を汚したくないのだろう。
「なんで。私がしてっていってるじゃん」りりかが言う。
「ねぇ、助けてよ」私は叫ぶ。
誰でもいいから、私に罪悪感を持って。
「いいの?ゆあは二人のこと散々馬鹿にしてたんだよ?それに人を裏切って、カンニングしたどうしようもない女なの。別に罪悪感なんて覚える必要ない。だって、裁かれるべき悪人なんだから」りりかはいったい二人に何を吹き込んだろう。
馬鹿にしたのは、皆も同じじゃないか。
りりかの言葉を聞くと、瞳に炎を灯した二人が迫ってくる。
抵抗をするが、どこにそんな力があるのだろうというくらい強い力ではがされる。
はがれてゆく。痛い。
トイレのタイルの上に一人の少女。それが私。
視線がぐさりぐさりと内臓を抉ってゆく。
恥ずかしさで死んでしまいそうだった。
身をよじり、胸と股を手で覆った。すると、りりかの「隠すな」の一言が飛んできた。
「ゆあの手、しばってよ。じゃまじゃん」
宮崎さんがつけていたネクタイで私の手は後ろで縛られた。
私の身体は、光の元に丸見えとなった。
「じゃあ写真撮影たいかーい。綺麗に取ってあげるからね。ゆあ、笑いなよ」変にテンションを上げてりりかは言った。
りりかは校則違反のスマホを懐から取り出し、レンズを私に向けた。
ぱしゃり、ぱしゃりと乾いた音がひたすら響く。
「ねぇ、二人もとりなよ。つまんないじゃん」というと、宮崎さんと那賀さんはそろりとスマホを出した。
恥かしい、をなくせ。心を無にせよ。私は心にそう命令する。
私は私じゃない。私はきっと誰かなんだ。
そう思えば大丈夫。きっと、大丈夫だから。
数時間後には楽になっているから。
三人がかりで私は隅から隅まで余すことなく写真を撮られた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。





鬼上官と、深夜のオフィス
99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」
間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。
けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……?
「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」
鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。
※性的な事柄をモチーフとしていますが
その描写は薄いです。
ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?
春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。
しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。
美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……?
2021.08.13
アダルト漫画家とランジェリー娘
茜色
恋愛
21歳の音原珠里(おとはら・じゅり)は14歳年上のいとこでアダルト漫画家の音原誠也(おとはら・せいや)と二人暮らし。誠也は10年以上前、まだ子供だった珠里を引き取り養い続けてくれた「保護者」だ。
今や社会人となった珠里は、誠也への秘めた想いを胸に、いつまでこの平和な暮らしが許されるのか少し心配な日々を送っていて……。
☆全22話です。職業等の設定・描写は非常に大雑把で緩いです。ご了承くださいませ。
☆エピソードによって、ヒロイン視点とヒーロー視点が不定期に入れ替わります。
☆「ムーンライトノベルズ」様にも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる