降る、ふる、かれる。

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第一章 リスナー

リスナー、暗い

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一分後の未来も信じられない。望めない。誰でもいいから助けて欲しい。

私をここから引っ張り出して欲しい。

 ふいに冷たさを感じた。

 大量の水がぶっしつけに私に侵入している。前も後ろも右も左もなく、その冷たさは私以外にはなりえなかった。

その後、楽しそうな笑い声が聞こえた。
その声だけで心臓がぎゅっとつかみ取られ、息ができなくなってしまった。

「ゆあちゃーん、そこにいるんでしょ?」

私は物音をださないように、じっと体を硬直させた。

りりかたちが追ってきた。きっと、友達が心配だからとか何とか言って、授業を抜け出してきたのだろう。正義のふりをして。その姿が簡単に目の裏にうかぶ。

「あけろよ」りりかのいらだった声がする。

「ねぇ、水量増やして」
きゅるり、きゅるりと水の栓がどんどんと開いてゆく音がする。ホースから流れ出る水は滝のようであった。

「ねぇ、ゆあちゃーん」

ここで開けてしまったら、どうなることか分からない。
私は、そのままりりかたちが立ち去ってくれることを願った。

 ずっと水を浴びていると、本当は自分は魚なんじゃないかという気さえしてくる。自分に綺麗な鱗とえらがあればいいのにと思う。

 誰かがドアを壊すような勢いでドアを蹴り始めた。

「あけろよ。お前、立場わかってんのか。おいっ。あけろよって」

 どすの利いた低い声でりりかが言った。誰かを服従させる時に隣で何度も聞いてきた声だ。その声の矢印は、今私に向いている。

こんな未来が存在するだなんて思いもしなかった。
私とりりかが数週間前までは友達で、笑いあっていたなんて嘘みたいだ。

 足で扉を蹴る振動は段々と大きくなっている。もうすぐ蝶番が外れてしまいそうであった。

怖い。
怖い。
怖い。
怖い。


助けて。


誰でもいいから助けて。


お願い。


何でもするから。


お願い。


怖いよ。








助けて。

 静かになった、と思ったら扉上の柱に手をかけるのが目に入った。

上から入ってくるつもりだ。

 ここにいては逃げられない。

私は、仕方なくトイレの扉をあけた。

扉を開けたすきに、トイレから全力で逃げようと思った。

 そう思って力強く扉を開けた先には、楽しそうな笑みを浮かべたりりかがいた。たちまち私は動けなくなってしまった。

動け、
動け、
動かなきゃ。

自分に命令をするけど、体は動いてくれない。

目の隅にはトイレの出口が映り、心臓が這いずり回る。
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