降る、ふる、かれる。

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第一章 リスナー

リスナー、ご機嫌取り

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ビーと試合を終える音が鳴った。

十対十二

私たちのチームが負けた。

運動神経が良いりりかと私、それなりにできるかりんと晴美はコート内を駆け巡って、良い具合にボールを回していた。

しかし、相手が全員運動部で相手が悪かった上に、宮崎さんがとことんへまをした。
私たちがパスしたボールを取りこぼしたり、ボールを相手チームにパスしたり、自分のコートがよくわかっていないのか、せっかく私たちが上げたボールを反対方向に投げたりしていた。

一、二回なら「どんまい」で済むが、何回もやられるとたまらない。

「まじでないわ。あいつ」当然のごとくりりかは怒っている。

「まぁ、ちょっとやらかしすぎだよね」私は言った。

「こっちは宮崎さんが取りやすいように優しく投げてんのに、取りこぼしてばっかだしね」
りりかの髪の毛をまねた晴美の髪は汗でペタンコになっていた。まるで、今さっきシャワーを浴びてきたみたいだ。

「相手方向にボール投げるとか、どんな脳みそしてんの。頭悪すぎでしょ」
りりかは怒りを抑えられないのか、そう吐き捨てた。りりかの髪の毛は運動する前と変わらずふんわりと美しかった。

「それに、なんか暗いし」晴美が乗っかる。

「顔面やばいし」私も続いて言った。
宮崎さんの幽霊を連想させる青白い顔は、顔立ちは悪くないのに、どうしてか、何も話さなくても人に不快感を与える。

「宮崎さんってさちょっと馬に似てない?」ひそひそとかりんが言った。

皆で遠くで審判をしている宮崎さんの方を見、「ウケル」「ヤバー」と四人でぎゃははと笑った。

「那賀さんとか宮崎さんって人生楽しいのかな?」りりかが言う。

「うわっ、私二人と入れ替わるのとかぜったい無理」かりんはさも、恐ろしいかというように肩を大げさに震わせた。

「いや、それは皆思ってるでしょ」りりかは意地の悪そうに唇の端っこを持ち上げる。

「どっちかに生まれ変わったら、私死ぬわ」
かりんはトレードマークの天然パーマを気にするかのように手で何度も髪の毛を梳いている。色素の薄いかりんの髪の毛が光に当たって金色に見えた。

「いや、それなー」晴美は、床の剥げた白いラインをクリームパンのような肉付きの良い手で弄んでいた。

「まー、カワイソウな人じゃん?」私はそう言いながら巨漢を重そうにひきずり、ボールを追い回している那賀さんを見た。汚い。少しでも痩せて、化粧を覚えればいいのにと思う。

「次はさ、うちらメインでボール回そうよ」りりかは名案かのように言った。「わたしとゆあが攻めで、かりんと晴美が守りって感じで」

「そーだね。その方がいいかもね」
「おっけー」
「りょうかーい」

私を含む三人のイエスが飛ぶ。りりか様に逆らおうなんて人はいない。

第二回戦のブザーが鳴り、私たちは次の試合のために立ちあがった。
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