恋の魔眼で見つめたら

立花鏡河

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5 罰が当たりました

第12話

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     ◆


 わたしはもう一度電車に乗って、市内中心部にある長閑中央駅で降りた。
 大きな商業施設になっている駅ビルがあり、近くの商店街にもいろんなお店があるから、学校帰りに立ち寄る学生が多い。
 聖ネクサス学園の生徒も、ちらほら見かける。

「えーと、こっちだよね……」

 アーケードになっている商店街の奥まで進み、わき道に入ると。
 賢ちゃんに教えてもらった場所に、ぽつんとお店があったのだけれど……。

「ああ……閉まってる……」

 シャッターが降りていて、一枚の紙がはってある。
 イヤな予感とともに紙を見つめる。

 ――『魔法雑貨店ウィッチ堂 閉店のお知らせ 誠に勝手ながら、2023年10月5日をもって閉店させていただくこととなりました。長きにわたり、ご愛顧いただき誠にありがとうございました 店主・明日見あすみクレア』

「閉店!?」

 よりにもよって今日閉店!?
 ぼうぜんとして貼り紙を見つめていたら、となりの婦人服のお店のおばさんが、見かねて声をかけてきた。

「急に閉店しちゃったのよ。もっとも、店をあけてる日のほうが珍しかったけどねえ」

 わたしは我に返ってたずねた。

「おばさん! どこかに移店したとかってことは……?」
「さあ、それはわからないけど……」
「オーナーさんの連絡先って、ご存知ないですか?」

 おばさんの眉が下がる。

「ごめんねえ。ほとんど話したこともなかったし……。お店の建物を貸してた不動産屋さんも連絡とれなくて困ってるみたいだったわ」
「そうですか……。ありがとうございました……」

 絶望的だぁ。
 わたしはがっくりと肩を落として歩きだした。
 自分がまだ制服姿なのに気づく。
 とりあえず今日は家に帰って、それから対策をねろう。

「ちょっとアンタ」

 ふいに、うしろからよび止められた。

「……?」

 ふり返ると、同じ制服姿の女の子がふたり、わたしをにらみつけている。

「アンタ、二年の吉丸って子じゃないの?」
「そ、そうですけど……」

 見覚えはないけど、三年生らしい。

「岸くんとイチャイチャしてた子って、アンタでしょ?」
「学園中のウワサになってるよ」
「はあ……」

 次に何を言われるか、予想がついてしまう。

「でもウワサなんて、大げさに尾ひれ羽ひれがついちゃうからねー。ねえ?」
「ホーント。こんな地味な子に、ダンス王子が本気になるワケないもん。アンタ、からかわれてんのよ」

 ふたりは顔を見あわせ、ケラケラ笑っている。
 胸がちくりと痛んだけれど、その痛みも一瞬だ。

「センパイ、わたしは地味でしょうか?」

 ぐっと顔を近づけて、順番に目を合わせる。
 すぐに効果はあらわれた。

「ヤダ、そんなの冗談にきまってるじゃない! 吉丸さん、とってもステキよ!」
「そう! あたしも思った! 岸くんとお似合いよね!」

 ふたりのイヤミったらしい笑みが、どこかこびるような笑みに変わったのを見て、胸がスーッとした。

「そうですか。ありがとうございます。それでは、さようなら」

 背を向けたわたしを、ふたりがよび止める。

「吉丸さん! カフェでお茶しない?」
「そう、おごるから! お話ししましょうよ」
「結構です」
「あっ、待ってよ!」

 ふたりが必死に追いすがる。

「ついてこないで!」

 商店街の買い物客にじろじろ見られながら、わたしは必死に逃げた。
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