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第5章 ドキドキ☆交流戦
第29話
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「――そんなわけで、白野先輩に誘われて、二中との交流戦の応援に行くことになりました。報告は以上です」
ぺこりと一礼して、わたしは座った。
部室内に拍手が鳴り響く。……といっても、拍手しているのはふたりだけ。
文芸部の部活動そっちのけで、昨日の白野先輩との会話について結果報告したの。門倉部長と黒江くんが盛り上がっちゃってるから仕方ない。
「うん、これは俺の予想以上の進展だね。接触の機会を向こうから持ちかけてくれたのは大きい」
顎に手を当て、いつものクールな表情の黒江くん。なにも知らない人がきいたら、まさか男子と女子のやりとりについて話しているとは思わないはず。
「いやんっ! 白野くんてば、運命の女の子を追い求めていたのね!? キュンキュンしちゃうっ! 尊い……。白野くんと運命の赤い糸で結ばれているのは誰なのっ!?」
門倉部長は門倉部長で、わたしのことはすっかり頭になく、いまにも妄想世界に旅立ちそうだ。
「門倉部長、それよりいまは交流戦のことを……」
すかさず黒江くんが釘をさした。
さすが黒江くん! すっかり猛牛・門倉部長に慣れているし、リンちゃん並みの闘牛士に成長する予感。
「はっ。そうだったわ」
黒江くんの一言で現実に引き戻された門倉部長は、頭をふり、立ち上がった。
「交流戦よね。これはチャンスよ、ヒナちゃん! ライバルキャラが多いんだから、一気に差をつけてヒロインポジションを勝ちとるチャンス!」
「はあ……」
うっかり気のない返事をしてしまった刹那、門倉ダッシュ!
「きゃっ!」
「気合いを入れなさいよ!」
逃げる間もなく肩をつかまれ、身体ゆらし地獄!
「あなたは文芸部の代表選手なのよ! わかってる!?」
「はわわ……」
「白野くんの運命の女の子になるのよ! 栄光のヒロインポジションを勝ちとって、ハッピーエンドを迎えなさい!」
「は、はい……」
返事したら、ようやく身体ゆらし地獄から解放された。酔いそうになったので、「うぅ……」と机に突っ伏すわたし。
「ヒナちゃん……」
――ん? いまの声は……。
声がきこえたほうを向くと、門倉部長ではなく、黒江くんだった。
目が合うと、少しあせったように口をおさえる黒江くん。
「あっ、ごめん。門倉部長がそう呼んでるから、うつったみたいだ」
胸がキュンとした。いまの黒江くん、かわいかった!
「ううん。ヒナちゃん……でいいよ。黒江くんも……」
言ってしまってから、急に恥ずかしくなって、目をそらした。
「そう……。じゃあ、俺もヒナちゃんで……。君もアキトでいいよ」
「ええっ!」
――アキトくん。
「アキ……あっ、やっぱりダメ! わたしは黒江くんのままで……」
「そりゃないよ。バランス悪くない?」
眉を下げる黒江くん。
ごめんなさい! もちろん恥ずかしいというのもあるけれど、なんだかしっくりこないの。
「黒江くんのほうが言いやすいもん! だからこれからも黒江くんで!」
「そう……?」
なんと説明していいかわからないので、適当な理由をでっち上げたら、黒江くんは渋々といった様子ではあったけれど了承してくれた。
「やーっぱり、カップル感を出してくるわね、あなたたち!」
鼻息荒く言い放つと、ジトーッと見てくる門倉部長。
「だから違いますってば! わたしたちは友だちです! ねっ、黒江くん?」
「え? ああ、うん」
なんだろう? いまちょっと黒江くん、困ったような表情になったけど……。
「あっ、そういえば……さっき黒江くん、わたしになにか言いかけなかった?」
「ああ。えっと、これからはヒナちゃんとスマホでメッセージのやりとりする必要あるかなと思って……。作戦の打ち合わせもあるし……。連絡先おしえてくれる?」
「いいよ」
なんでもないような顔で返事したけど、本当はドキドキしていた。男の子とスマホでやりとりするなんてはじめてだし! しかもイケメンの黒江くんと!
ジト目の門倉部長に見つめられながら、わたしたちは連絡先を交換した。
◆ ◆ ◆
その日の晩――。
大好きなバンドの音楽をBGMに、図書室で借りてきた本を読んでいたら、スマホにメッセージが入った。
きた! 黒江くんからだ!
まったりモードは消し飛び、心臓の鼓動が一気にはやくなる。
今夜のうちに黒江くんのほうから送ってくれるってきいていたから心の準備はできていたけれど、やっぱりドキドキする。
――黒江です。今晩は。
絵文字もスタンプもなく、いたってシンプルなメッセージに思わずクスッとした。黒江くんらしい。
――今晩は。ちゃんと届いたよ。
こちらはかわいらしい絵文字を添えてみた。
――よかった。これからはいつでも連絡とれるね。
ドキッ。胸が高鳴る。
そうだ。授業中にノートで伝言を回しているようなことを、いつだって、どんなに離れていたって、誰の目も気にすることなくできちゃうんだ。
お父さんとお母さんは「若いころ、スマホなんてなかった。それでも楽しかったよ」とよく言うけれど、わたしはやっぱりスマホがある時代に生まれてよかったと思う。
――そうだね。便利だよね。
語尾にハートマークの絵文字をつけて送信しようとして、ハッとしてやめた。
ハートマークを、無難にキラキラマークにかえて送信。
あっぶない! リンちゃんにメッセージ送るとき、なんの気なしにハートマーク送ったりするから、クセになってたんだ。
ぺこりと一礼して、わたしは座った。
部室内に拍手が鳴り響く。……といっても、拍手しているのはふたりだけ。
文芸部の部活動そっちのけで、昨日の白野先輩との会話について結果報告したの。門倉部長と黒江くんが盛り上がっちゃってるから仕方ない。
「うん、これは俺の予想以上の進展だね。接触の機会を向こうから持ちかけてくれたのは大きい」
顎に手を当て、いつものクールな表情の黒江くん。なにも知らない人がきいたら、まさか男子と女子のやりとりについて話しているとは思わないはず。
「いやんっ! 白野くんてば、運命の女の子を追い求めていたのね!? キュンキュンしちゃうっ! 尊い……。白野くんと運命の赤い糸で結ばれているのは誰なのっ!?」
門倉部長は門倉部長で、わたしのことはすっかり頭になく、いまにも妄想世界に旅立ちそうだ。
「門倉部長、それよりいまは交流戦のことを……」
すかさず黒江くんが釘をさした。
さすが黒江くん! すっかり猛牛・門倉部長に慣れているし、リンちゃん並みの闘牛士に成長する予感。
「はっ。そうだったわ」
黒江くんの一言で現実に引き戻された門倉部長は、頭をふり、立ち上がった。
「交流戦よね。これはチャンスよ、ヒナちゃん! ライバルキャラが多いんだから、一気に差をつけてヒロインポジションを勝ちとるチャンス!」
「はあ……」
うっかり気のない返事をしてしまった刹那、門倉ダッシュ!
「きゃっ!」
「気合いを入れなさいよ!」
逃げる間もなく肩をつかまれ、身体ゆらし地獄!
「あなたは文芸部の代表選手なのよ! わかってる!?」
「はわわ……」
「白野くんの運命の女の子になるのよ! 栄光のヒロインポジションを勝ちとって、ハッピーエンドを迎えなさい!」
「は、はい……」
返事したら、ようやく身体ゆらし地獄から解放された。酔いそうになったので、「うぅ……」と机に突っ伏すわたし。
「ヒナちゃん……」
――ん? いまの声は……。
声がきこえたほうを向くと、門倉部長ではなく、黒江くんだった。
目が合うと、少しあせったように口をおさえる黒江くん。
「あっ、ごめん。門倉部長がそう呼んでるから、うつったみたいだ」
胸がキュンとした。いまの黒江くん、かわいかった!
「ううん。ヒナちゃん……でいいよ。黒江くんも……」
言ってしまってから、急に恥ずかしくなって、目をそらした。
「そう……。じゃあ、俺もヒナちゃんで……。君もアキトでいいよ」
「ええっ!」
――アキトくん。
「アキ……あっ、やっぱりダメ! わたしは黒江くんのままで……」
「そりゃないよ。バランス悪くない?」
眉を下げる黒江くん。
ごめんなさい! もちろん恥ずかしいというのもあるけれど、なんだかしっくりこないの。
「黒江くんのほうが言いやすいもん! だからこれからも黒江くんで!」
「そう……?」
なんと説明していいかわからないので、適当な理由をでっち上げたら、黒江くんは渋々といった様子ではあったけれど了承してくれた。
「やーっぱり、カップル感を出してくるわね、あなたたち!」
鼻息荒く言い放つと、ジトーッと見てくる門倉部長。
「だから違いますってば! わたしたちは友だちです! ねっ、黒江くん?」
「え? ああ、うん」
なんだろう? いまちょっと黒江くん、困ったような表情になったけど……。
「あっ、そういえば……さっき黒江くん、わたしになにか言いかけなかった?」
「ああ。えっと、これからはヒナちゃんとスマホでメッセージのやりとりする必要あるかなと思って……。作戦の打ち合わせもあるし……。連絡先おしえてくれる?」
「いいよ」
なんでもないような顔で返事したけど、本当はドキドキしていた。男の子とスマホでやりとりするなんてはじめてだし! しかもイケメンの黒江くんと!
ジト目の門倉部長に見つめられながら、わたしたちは連絡先を交換した。
◆ ◆ ◆
その日の晩――。
大好きなバンドの音楽をBGMに、図書室で借りてきた本を読んでいたら、スマホにメッセージが入った。
きた! 黒江くんからだ!
まったりモードは消し飛び、心臓の鼓動が一気にはやくなる。
今夜のうちに黒江くんのほうから送ってくれるってきいていたから心の準備はできていたけれど、やっぱりドキドキする。
――黒江です。今晩は。
絵文字もスタンプもなく、いたってシンプルなメッセージに思わずクスッとした。黒江くんらしい。
――今晩は。ちゃんと届いたよ。
こちらはかわいらしい絵文字を添えてみた。
――よかった。これからはいつでも連絡とれるね。
ドキッ。胸が高鳴る。
そうだ。授業中にノートで伝言を回しているようなことを、いつだって、どんなに離れていたって、誰の目も気にすることなくできちゃうんだ。
お父さんとお母さんは「若いころ、スマホなんてなかった。それでも楽しかったよ」とよく言うけれど、わたしはやっぱりスマホがある時代に生まれてよかったと思う。
――そうだね。便利だよね。
語尾にハートマークの絵文字をつけて送信しようとして、ハッとしてやめた。
ハートマークを、無難にキラキラマークにかえて送信。
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