44 / 51
14 デートのあとは
第44話
しおりを挟む
いっしょに登下校するようになって、「ふたりは本格的につきあいはじめた」と、校内にうわさが広まっていった。
女の子が年上のカップルが、うちの学校にはいなかったこともあって、余計にさわがれてしまった。
「美女と野獣の逆バージョン」とか陰口をたたかれたりして。
でも、里桜が守ってくれたし、園芸部の活動も楽しくなってきたから、いちいち気にすることもなかった。
なにより――咲也くんがそばにいてくれるもん。
咲也くんのことが好きだから、前よりもわたし、自分のことが好きだし、自信をもてるようになったよ。
五月も半ばの水曜日。快晴。
園芸部員が、運動場わきの畑に集合していた。
今日、スイカとミニトマトの苗を植えるんだよ。
「御堂が来てないな? どうしたんだ?」
植草先生が、みんなを見まわして言った。
「空手の大会が近いって、スッ飛んで帰っちゃいました。いわゆるサボりですっ!」
小百合センパイがプンプンしながら報告した。
一年の御堂ファンの女の子たちから「えー」と、残念そうな声があがる。
そういえば……フラワーロードの作業以来、蓮くんに会ってないや。
植草先生は苦笑いして、
「しょうがないやつだな。となると……男手は乙黒だけか」
と、咲也くんを見やった。
「乙黒くんには愛のパートナーがいますから! すばらしい働きをしてくれるでしょう」
怒りから一転、楽しげなテンションになる小百合センパイ。
「愛の共同作業です! ねっ、愛葉さん?」
なんじゃ、それはっ!!
反応に困って、顔を引きつらせていると。
「そうか、乙黒と愛葉には特にがんばってもらおうか」
植草先生までにんまりしてノリノリだ。
「まかせてください! 愛葉センパイ、いっしょにがんばりましょう」
咲也くんがクールな表情のまま言うと、みんながどっと沸いた。
わたしの顔は、ミニトマトみたいに真っ赤になってると思う。
咲也くんは園芸部になじんでるどころか、ムードメーカーになってる!?
知れば知るほど、不思議な魅力のある男の子だなぁ。
愛の共同作業のおかげ(?)で、苗の植えつけはスムーズに進んだ。
「愛葉さん」
一段落したところで、小百合センパイに声をかけられた。
「なんですか、小百合センパイ」
またからかってくるつもりかも……と思ったら。
「門倉部長とお呼びなさい。……それよりね、あなた最近、イイ顔になったわね」
「え……?」
「ここに入部してきたときは、どこか自信なさげで、道に迷ってる子どもみたいだったもの」
「あはは」
それは、自覚あります。
バスケ部のことで悩んでたから。
「だけど……恋というのは、女の子を強くするのよね。次の部長は、あなたにまかせるわ」
「はい………………ええっ!?」
小百合センパイが告げた言葉の意味を、頭で理解するのに数秒かかった。
だって、あっけらかんと言うんだもん!
あわてふためくわたし。
「えっと、青柳さんたちは!?」
「専属でやってくれてる愛葉さんが適任だわ。だいじょうぶよ。がんばってね」
「……はい」
さわやかな笑顔でポンと肩に手を置かれ、覚悟を決めるしかなかった。
小百合センパイは、わたしを信頼してくれているんだ。
それは、とってもうれしいことで。
「あがり症もね、ちょっとずつでいいから、克服していくのよ」
「が、がんばります……」
力なく笑うと、小百合センパイは、わたしのそばにいる咲也くんを見やった。
「乙黒くん。愛葉さんのサポート、たのむわよ」
「もちろんです。安心してくださいね、愛葉センパイ」
咲也くんはうなずいて、わたしにほほ笑みかけた。
「うん……」
胸がときめいた。
すなおな後輩モードの咲也くんもイイなあ。
ふたりで見つめあっていると。
「あーあ、あたしもイケメンと燃えるような恋をしたいわ! 白馬の王子さまがやってきてさ、『きみの魅力を開花させてあげよう』なんて言われたりしてっ!」
体をくねらせ、ハイテンションになる小百合センパイ。
「ああっ! 妄想スイッチ入っちゃった! 小百合センパイ、戻ってきてくださーい!」
園芸部は、今日も平和です。
女の子が年上のカップルが、うちの学校にはいなかったこともあって、余計にさわがれてしまった。
「美女と野獣の逆バージョン」とか陰口をたたかれたりして。
でも、里桜が守ってくれたし、園芸部の活動も楽しくなってきたから、いちいち気にすることもなかった。
なにより――咲也くんがそばにいてくれるもん。
咲也くんのことが好きだから、前よりもわたし、自分のことが好きだし、自信をもてるようになったよ。
五月も半ばの水曜日。快晴。
園芸部員が、運動場わきの畑に集合していた。
今日、スイカとミニトマトの苗を植えるんだよ。
「御堂が来てないな? どうしたんだ?」
植草先生が、みんなを見まわして言った。
「空手の大会が近いって、スッ飛んで帰っちゃいました。いわゆるサボりですっ!」
小百合センパイがプンプンしながら報告した。
一年の御堂ファンの女の子たちから「えー」と、残念そうな声があがる。
そういえば……フラワーロードの作業以来、蓮くんに会ってないや。
植草先生は苦笑いして、
「しょうがないやつだな。となると……男手は乙黒だけか」
と、咲也くんを見やった。
「乙黒くんには愛のパートナーがいますから! すばらしい働きをしてくれるでしょう」
怒りから一転、楽しげなテンションになる小百合センパイ。
「愛の共同作業です! ねっ、愛葉さん?」
なんじゃ、それはっ!!
反応に困って、顔を引きつらせていると。
「そうか、乙黒と愛葉には特にがんばってもらおうか」
植草先生までにんまりしてノリノリだ。
「まかせてください! 愛葉センパイ、いっしょにがんばりましょう」
咲也くんがクールな表情のまま言うと、みんながどっと沸いた。
わたしの顔は、ミニトマトみたいに真っ赤になってると思う。
咲也くんは園芸部になじんでるどころか、ムードメーカーになってる!?
知れば知るほど、不思議な魅力のある男の子だなぁ。
愛の共同作業のおかげ(?)で、苗の植えつけはスムーズに進んだ。
「愛葉さん」
一段落したところで、小百合センパイに声をかけられた。
「なんですか、小百合センパイ」
またからかってくるつもりかも……と思ったら。
「門倉部長とお呼びなさい。……それよりね、あなた最近、イイ顔になったわね」
「え……?」
「ここに入部してきたときは、どこか自信なさげで、道に迷ってる子どもみたいだったもの」
「あはは」
それは、自覚あります。
バスケ部のことで悩んでたから。
「だけど……恋というのは、女の子を強くするのよね。次の部長は、あなたにまかせるわ」
「はい………………ええっ!?」
小百合センパイが告げた言葉の意味を、頭で理解するのに数秒かかった。
だって、あっけらかんと言うんだもん!
あわてふためくわたし。
「えっと、青柳さんたちは!?」
「専属でやってくれてる愛葉さんが適任だわ。だいじょうぶよ。がんばってね」
「……はい」
さわやかな笑顔でポンと肩に手を置かれ、覚悟を決めるしかなかった。
小百合センパイは、わたしを信頼してくれているんだ。
それは、とってもうれしいことで。
「あがり症もね、ちょっとずつでいいから、克服していくのよ」
「が、がんばります……」
力なく笑うと、小百合センパイは、わたしのそばにいる咲也くんを見やった。
「乙黒くん。愛葉さんのサポート、たのむわよ」
「もちろんです。安心してくださいね、愛葉センパイ」
咲也くんはうなずいて、わたしにほほ笑みかけた。
「うん……」
胸がときめいた。
すなおな後輩モードの咲也くんもイイなあ。
ふたりで見つめあっていると。
「あーあ、あたしもイケメンと燃えるような恋をしたいわ! 白馬の王子さまがやってきてさ、『きみの魅力を開花させてあげよう』なんて言われたりしてっ!」
体をくねらせ、ハイテンションになる小百合センパイ。
「ああっ! 妄想スイッチ入っちゃった! 小百合センパイ、戻ってきてくださーい!」
園芸部は、今日も平和です。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~
友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。
全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。
月神山の不気味な洋館
ひろみ透夏
児童書・童話
初めての夜は不気味な洋館で?!
満月の夜、級友サトミの家の裏庭上空でおこる怪現象を見せられたケンヂは、正体を確かめようと登った木の上で奇妙な物体と遭遇。足を踏み外し落下してしまう……。
話は昼間にさかのぼる。
両親が泊まりがけの旅行へ出かけた日、ケンヂは友人から『旅行中の両親が深夜に帰ってきて、あの世に連れて行く』という怪談を聞かされる。
その日の放課後、ふだん男子と会話などしない、おとなしい性格の級友サトミから、とつぜん話があると呼び出されたケンヂ。その話とは『今夜、私のうちに泊りにきて』という、とんでもない要求だった。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。
霊能者、はじめます!
島崎 紗都子
児童書・童話
小学六年生の神埜菜月(こうのなつき)は、ひょんなことから同じクラスで学校一のイケメン鴻巣翔流(こうのすかける)が、霊が視えて祓えて成仏させることができる霊能者だと知る。
最初は冷たい性格の翔流を嫌う菜月であったが、少しずつ翔流の優しさを知り次第に親しくなっていく。だが、翔流と親しくなった途端、菜月の周りで不可思議なことが起こるように。さらに翔流の能力の影響を受け菜月も視える体質に…!
魔眼少女 ~太陽と月のヒロインズ~
立花鏡河
児童書・童話
あたしの魔眼は、すべてお見通しっ!
桃瀬日向(=ヒナタ)は、元気で明るく、ダンスが大好きな小学五年生。
ある日、美少女の青柳美月が転校してきた。
可憐で、やさしくて、ちょっぴりミステリアス――。
そんな美月と仲よくなれる予感に胸を弾ませるヒナタ。
帰り道、不思議な小屋に吸い寄せられたヒナタの前に、美月が現れた。
魔法を使えるという美月は、ヒナタもまた「魔女に選ばれた人間」だと告げた。
美月は左目に、ヒナタは右目に「魔女の力」を有しているらしい。
そして、町に危機が迫っている……!?
魔女狩りの時代から続く、『光の魔女』と『闇の魔女』の因縁に巻きこまれていくヒナタと美月。
今こそ、魔眼をひらいて、闇と戦うとき!
「太陽」のヒナタと、「月」の美月は最強コンビ!
ドキドキの怪奇幻想バトル開始!
◆◆◆第1回きずな児童書大賞エントリー作品です◆◆◆
表紙絵は「イラストAC」様からお借りしました。
ホントのキモチ!
望月くらげ
児童書・童話
中学二年生の凜の学校には人気者の双子、樹と蒼がいる。
樹は女子に、蒼は男子に大人気。凜も樹に片思いをしていた。
けれど、大人しい凜は樹に挨拶すら自分からはできずにいた。
放課後の教室で一人きりでいる樹と出会った凜は勢いから告白してしまう。
樹からの返事は「俺も好きだった」というものだった。
けれど、凜が樹だと思って告白したのは、蒼だった……!
今さら間違いだったと言えず蒼と付き合うことになるが――。
ホントのキモチを伝えることができないふたり(さんにん?)の
ドキドキもだもだ学園ラブストーリー。
少年騎士
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる