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14 デートのあとは

第44話

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 いっしょに登下校するようになって、「ふたりは本格的につきあいはじめた」と、校内にうわさが広まっていった。
 女の子が年上のカップルが、うちの学校にはいなかったこともあって、余計にさわがれてしまった。
「美女と野獣の逆バージョン」とか陰口をたたかれたりして。

 でも、里桜が守ってくれたし、園芸部の活動も楽しくなってきたから、いちいち気にすることもなかった。
 なにより――咲也くんがそばにいてくれるもん。
 咲也くんのことが好きだから、前よりもわたし、自分のことが好きだし、自信をもてるようになったよ。


 五月も半ばの水曜日。快晴。
 園芸部員が、運動場わきの畑に集合していた。
 今日、スイカとミニトマトの苗を植えるんだよ。

「御堂が来てないな? どうしたんだ?」

 植草先生が、みんなを見まわして言った。

「空手の大会が近いって、スッ飛んで帰っちゃいました。いわゆるサボりですっ!」

 小百合センパイがプンプンしながら報告した。
 一年の御堂ファンの女の子たちから「えー」と、残念そうな声があがる。
 そういえば……フラワーロードの作業以来、蓮くんに会ってないや。

 植草先生は苦笑いして、
「しょうがないやつだな。となると……男手は乙黒だけか」
 と、咲也くんを見やった。

「乙黒くんには愛のパートナーがいますから! すばらしい働きをしてくれるでしょう」

 怒りから一転、楽しげなテンションになる小百合センパイ。

「愛の共同作業です! ねっ、愛葉さん?」

 なんじゃ、それはっ!!
 反応に困って、顔を引きつらせていると。

「そうか、乙黒と愛葉には特にがんばってもらおうか」

 植草先生までにんまりしてノリノリだ。

「まかせてください! 愛葉センパイ、いっしょにがんばりましょう」

 咲也くんがクールな表情のまま言うと、みんながどっと沸いた。
 わたしの顔は、ミニトマトみたいに真っ赤になってると思う。
 咲也くんは園芸部になじんでるどころか、ムードメーカーになってる!?
 知れば知るほど、不思議な魅力のある男の子だなぁ。


 愛の共同作業のおかげ(?)で、苗の植えつけはスムーズに進んだ。

「愛葉さん」

 一段落したところで、小百合センパイに声をかけられた。

「なんですか、小百合センパイ」

 またからかってくるつもりかも……と思ったら。

「門倉部長とお呼びなさい。……それよりね、あなた最近、イイ顔になったわね」
「え……?」
「ここに入部してきたときは、どこか自信なさげで、道に迷ってる子どもみたいだったもの」
「あはは」

 それは、自覚あります。
 バスケ部のことで悩んでたから。

「だけど……恋というのは、女の子を強くするのよね。次の部長は、あなたにまかせるわ」
「はい………………ええっ!?」

 小百合センパイが告げた言葉の意味を、頭で理解するのに数秒かかった。
 だって、あっけらかんと言うんだもん!
 あわてふためくわたし。

「えっと、青柳さんたちは!?」
「専属でやってくれてる愛葉さんが適任だわ。だいじょうぶよ。がんばってね」
「……はい」

 さわやかな笑顔でポンと肩に手を置かれ、覚悟を決めるしかなかった。
 小百合センパイは、わたしを信頼してくれているんだ。
 それは、とってもうれしいことで。

「あがり症もね、ちょっとずつでいいから、克服していくのよ」
「が、がんばります……」

 力なく笑うと、小百合センパイは、わたしのそばにいる咲也くんを見やった。

「乙黒くん。愛葉さんのサポート、たのむわよ」
「もちろんです。安心してくださいね、愛葉センパイ」

 咲也くんはうなずいて、わたしにほほ笑みかけた。

「うん……」

 胸がときめいた。
 すなおな後輩モードの咲也くんもイイなあ。

 ふたりで見つめあっていると。

「あーあ、あたしもイケメンと燃えるような恋をしたいわ! 白馬の王子さまがやってきてさ、『きみの魅力を開花させてあげよう』なんて言われたりしてっ!」

 体をくねらせ、ハイテンションになる小百合センパイ。

「ああっ! 妄想スイッチ入っちゃった! 小百合センパイ、戻ってきてくださーい!」

 園芸部は、今日も平和です。
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