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7 花の妖精、怒る!

第26話

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「ふーん、壁ドンねぇ。一千花、そんなこと教えてくれなかったけど、お熱い関係になってたのね」

 じとーっとした目つきでわたしを見てくるブルームス。

「わわっ! ちがうってば! わたしは恋してないから! 言い伝えにそむくようなことはしないからっ!」

 あわてて、手をぶんぶんふると、咲也くんは首をかしげた。

「言い伝え……?」
「あっ、なんでもないよ! なんでもないの!」

 必死にごまかすわたし。
 すると、咲也くんは、きりっと真剣な表情になった。

「それにしても……ブルームスがまだ人間界にいるということは、一千花センパイが魔力ゼロになって、ブルームガーデンへのゲートがひらけなくなったせいだよね?」
「それは……」

 どう答えればいいかわからなくて、口ごもってしまう。

「ごめん!」

 深々と頭を下げる咲也くん。

「おれのせいだよな? ブルームスの生命力がずいぶんと落ちてるけど、ブルームガーデンとのつながりが切れたからだろ?」
「えっ……?」

 生命力が落ちてる……?
 そんなことは寝耳に水……どころか、頭をハンマーで殴られたような衝撃で。
 わたしがぽかーんと立ちつくしていると、ブルームスは咲也くんにたずねた。

「それも、魔眼でわかったわけ?」
「ああ。今、ここにいるのもつらそうじゃないか?」

 ブルームスの耳が、元気なく折れまがる。

「はずかしながら、咲也くんの言うとおりだよ。一千花の部屋でゆっくりしていると平気なんだけど、外に出るのは体力をつかってしんどいのよ」

 わたし、てっきり、故郷に帰れなくなったさびしさから、無気力になっていたのだとばかり……。
 ブルームスは、生命力そのものが落ちてたんだ!

「ブルームス、ごめん。わたし、なんにも気づかなくて……」

 うつむいて泣きそうになっていると、ブルームスが頭をぽんぽんしてくれた。

「いいのよ、アタイがだまっていたんだから……。一千花は一年間、戦ってくれたから、あとは楽しく、フツーの女の子として生活してほしかったの」

 ブルームスのやさしさがうれしいけれど、ちょっぴりうらめしい。
 わたしには打ちあけてほしかったなって……。
 いっしょに悩みたかったから……。

 ブルームスは、咲也くんに向きなおった。

「正直、花の女神さまの加護も、日に日に弱まっている気がするの。だから、咲也くんが一千花を守ってくれるなら、アタイも安心できるわ」

 咲也くんはアゴに手をやると、にやりとして、
「なるほど。話が読めてきたよ。きみは最初からそのつもりで……?」
 と問いかけた。

 うなずくブルームス。

「一千花を守るナイトになれるのかどうか、見きわめるつもりで会いにきたのよ。魔眼をもっていようと、アンタはもう魔神リュウトじゃない。確信できたわ」
「とりあえず合格ってわけか……」
「まあね。あらためて、おねがいするわ。学校にいるあいだ、一千花のことを守ってほしい」
「もちろんだ。この魔眼は、クソ親父がおれにのこした厄介なものだけどさ、一千花センパイを守るためにトコトンつかってやるさ」

 なんだか、わたしぬきで、ブルームスと咲也くんのあいだで話が進んでいるけれど……。

「ちょっと、ちょっと、どういうこと!?」

 たまらず割って入ると、咲也くんはウインクした。

「一千花センパイのナイトに任命されたのさ」
「ええっ!?」

 心臓がいきおいよく跳ねあがる。
 魔力ゼロのわたしだけど、恋の魔力がチャージされてしまったみたい。
 見つめあう、わたしたち。
 咲也くんの瞳はとってもきれい。
 左目が魔眼だなんて、まだちょっと信じられない。

 こほん、と軽くせきばらいするブルームス。

「恋愛は禁止だからね」

 くぎをさされて、咲也くんは肩をすくめた。

「ありゃりゃ……」

 ブルームス、ごめん!
 恋愛禁止を守れる自信がないよ!
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