わたしたちの恋、NGですっ! ~魔力ゼロの魔法少女~

立花鏡河

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7 花の妖精、怒る!

第23話

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 裏門は、登下校の時間をのぞけば、ひっそりとしている。
 学校に残っている生徒たちがみんな部活動している今、裏門には、静かな時間が流れていて……。

「これが、マリーゴールドの苗だよね?」

 しゃがみこんで、たずねてくる咲也くん。
 わたしはうなずいて、整然とならべられた黒い苗ポットを見つめた。

「そうだよ。春休み中に、種をまいたの」

 すぐに芽が出て、今は葉っぱも四枚になり、順調に育っている。

「あともうちょっとで、花壇に植えかえできるかな。来月には花を咲かせるわ」
「楽しみだね」

 愛おしそうに見つめて、にっこりする咲也くん。
 ホントに花が好きになったんだなぁ。
 なんだかうれしい。

 苗に水やりしたあと、花壇のほうへと移動する。
 スペースの半分は、あざやかなピンク色の花を咲かせているツツジ。あとは、カモミールが控えめに咲いている。

「ツツジはあんまり水やり必要ないけど、最近、雨がふってないからね」

 そう言って、まずはツツジに水やり。
 それから、カモミールのスペースに移動する。
 中央のボリュームのある黄色い花をぐるっと取りかこんでいる、白い花びら。
 カモミールの見た目は、マーガレットに似ている。

 ――と、四月のあたたかい風が吹きぬけて、わたしの髪と、カモミールの花をゆらした。

「あ……いい香りだね……」

 動きを止めた咲也くんが、鼻をくんくんさせる。
 たしかに、甘いリンゴのような匂いがただよっている。

「カモミールの香りだね。香水やシャンプーにも使われたりするんだよ」

 わたしの説明に、咲也くんはうなずいて、
「たしか、リラックス効果のあるハーブの一種だったね」
 と、わたしに向きなおる。

「一千花センパイは、逆に、元気の出る香りがする。ローズマリーのような……」
「ええっ!? 当たり! ローズマリーのシャンプー使ってるから……」

 びっくりだよ! 言い当てられちゃった!

「匂い、キツイかな?」

 心配になって、髪をさわるわたし。
 咲也くんは、首を横にふった。

「いや、だいじょうぶだよ。よほどそばに行かなきゃ、気づかないよ。おれは何度も一千花センパイに近づいてるから……」
「あっ――」

 理科室で助けられたり、壁ドンされたときの記憶がよみがえる。
 とたんに、かーっと頬が熱くなってきた。

「きれいな髪だね」

 いつの間にか、咲也くんと向かいあわせになってる。
 心臓がバクバクしてきた。

「さわってもいい?」

 咲也くんは、やわらかくほほ笑んで、小首をかしげてくる。
 そんなのズルいよ。「うん」って、うなずくしかないもん。
 返事を聞くやいなや、咲也くんは、そっと、わたしの髪にふれた。
 細くてきれいな指が、髪にからまり、はなれる。
 それが数回、くりかえされた。
 こんなところ、だれかに見られたらどうしよう!?

「やっぱり、いいシャンプーなんだね。サラサラだよ」
「そ、そう……? ありがと」

 緊張しているのを見すかされそうで、目をそらす。

「おれ……もっと一千花センパイのこと、知りたいんだ」

 どきっとして、ふたたび咲也くんの顔を見あげた。
 視線がまじわる。
 咲也くん、真剣な表情だ。
 どう返したらいいんだろう?
 わたしも、今の咲也くんのこと、もっと知りたいと思ってる。
 それは、たしかなんだけれど……。

 ふと、甘いアーモンドのような香りが鼻をくすぐる。
 これは、咲也くんの香りだ。
 鼻をくんくんしたのが、バレちゃったみたい。

「……ん?」
「あっ、咲也くんは、アーモンドみたいな、甘い香りがするの……」
「えっ……」

 咲也くんは目を見ひらくと、髪をくしゃっとした。

「なんでわかったの?」

 ええっ!? まさかの正解!?

「母さんが買ってきたボディシャンプーが、南フランスの植物エキスつかってるらしくて……。それが、アーモンドの匂いするんだよね」
「ああ、それで!」
「はずかしいじゃん。そんなの当てないでくれよ」

 うらめしげな表情になる咲也くん。

「咲也くんも、わたしのシャンプー当てたじゃん。おかえし!」

 べえっと、舌を出してみせる。
 クスッと、咲也くんが表情をゆるめたから、わたしたちは笑いあった。
 とっても不思議な、この感じ――。
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